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弁護士会意思決定に見え隠れする「迎合主義」

 分からなくても、当然といえば当然ですか、弁護士会という存在と、一般の弁護士会員の現実的な距離感のようなものを、多くの一般市民は分かっていない、ということをしばしば感じます。弁護士会と、自分の接している弁護士が、非常に密接につながっている、「弁護士」と名のつく方々が、すべて「弁護士会」と深くかかわっているようなイメージを持ちがちであるということです。

 もちろん、弁護士会は強制加入団体ですから、形式的に登録と会費納入、公益活動といった形で、否応なく全弁護士がかかわっています。ただ、問題はそこから先です。現実的には、会の活動、さらにはその意思表示まで含め、そのかかわり方には、はっきりとした濃淡、バラツキがある現実です。

 これまでにも書いてきたことですが、弁護士会は重層的な意思決定の仕組みを持ち、強制加入であるだけに、建て前上も「会内民主主義」ということが強調されてきた組織ですが、一方で、前記バラツキも反映して、その意思決定では、いわゆるサイレント・マジョリティを抱えてきた、逆に言えば、消極的会員の意思を、なんとか形式的に束ねてきた団体といえます。しかし、その結果、弁護士会は一つにまとまっているかのような決議を出し、意思表明をするわけですから、そこが一枚岩であると社会が認識しても当然です。

 一枚岩と社会にとられがちであることを、多くの弁護士は、依頼者など接する市民の反応で、よく理解していますが、さらに、それを強い違和感を持って受けとめている人も少なくありません。多数決で決したとはいえ、思想・信条的にも、法律家としての考えとしても、異なる弁護士会の意思表明に際して、「確かに弁護士会会員ではあるけれど、私の考えとは違う」といった弁明を、依頼者・市民にしたという話は、この世界でよく聞かれます。さらに、近年、高額の会費や公益活動義務化といった「負担」から、旧来からこうした意思の束ね方、さらには強制加入そのものへの会内の不満が高まり出しています。

 ただ、そうした弁護士個人の意識や信条のバラツキの存在、さらに、それによって、弁護士会の意思表示から逆算して、弁護士全体のイメージを形成するとなど、とてもできないことは、分かっていても、なお、弁護士会員の意思決定過程でみせる行動には、時に不可思議ともいえる、ヨミ切れないものをみることになります。

 以前、「司法ウオッチ」に吉田孝夫弁護士から、こんな投稿がありました。「某弁護士会」(とは表記されているものの、同弁護士がかかわっているという記述からネタバレですが、ここは原文通り、会名は伏せます)では今年6月25日の総会で、法曹養成問題に関連する早急な施策として、「司法試験合格者数を直ちに年間1500人以下」とすることと、「可及的速やかに1000人以下に減員」することを求める決議を採択。事前の執行部配布の原案には、「1500人以下」への検討と「さらなる減員」検討だったものが、当日、修正案が配布され、前記の形で可決されたそうです。

 ところが、同弁護士によれば、2011年に行われた会内アンケート(回収率100%)では、妥当な年間合格者数として、会員の71%が「1000人以下」、16%が「800人以下」、8%が「500人以下」だった、と。吉田弁護士は、言います。

  「このアンケート結果からすれば、『1500人』などという決議案には反対意見が続出するはずですが、実際には、私以外に反対意見はありませんでした。事前配布の原案でも反対意見はなかったであろうと、これまでの経験から、強く思います」
  「内心では反対でも、執行部案には反対しない(できない)という多数会員の迎合によって弁護士会の決議は成立していきます。上記は、その一事例です。私は、今、必要とされる弁護士は、自分の意見を表明できる弁護士だと思います」

  「可及的速やかに1000人以下」がとにもかくにも入ったことで、よしととてしまった、というとらえ方もあるかもしれません。ただ、一方で、あるいは少なからぬ弁護士は、「こんなことは弁護士会では当たり前」と受けとめるのではないか、とも思います。

 不可思議な感じを持ってしまうのは、やはり、なぜ、本当の意見が表明できないのか、というところにあります。弁護士会選挙での、弁護士の投票行動にもみられるような、政治的な「しがらみ」や、吉田弁護士がいうような本流とされるものへの「迎合主義」があるということでしょうか。それとも、表明されることとは裏腹に、実はご本人にとってのプライオリティが低い、要は「どちらでもいい」といえるような意識が根底にあるということでしょうか。

 吉田弁護士の指摘を見てくると、前記したような、サイレント・マジョリティの存在や、強制加入団体としての、ある種の「無理」な意思の束ね方の問題とは別にも、会の意思表明に、個人会員の意思が直接反映しない要素が、そこにあるようにも思えてきます。そして、やはり、それは理論的職能集団であり、かつ「会内民主主義」を強調する強制加入団体である弁護士会のイメージからも、さらに、「公明正大」性が被せられる弁護士のイメージからも遠い、多くの市民にとって「知られざる一面」であるように見えるのです。

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