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過渡期の小学校英語【前編】 必修化から見えること

2011(平成23)年度から必修化された、小学校での「外国語活動」。その意味や目的、そして現状とこれからについて、英語教育の専門家である、上智大学の吉田研作先生に伺いました。

「語学」ではなく「活動」

「外国語(英語)活動」が、全国の公立小学校の5、6年生において年間35単位時間の必修となりました。ところで、なぜ「英語の教育」ではなく「外国語活動」と呼ぶのでしょう? 
それは「語学の習得」が最大の目的ではないからです。
では、何を目指しているのか? 『新小学校学習指導要領』の「目標」には、こう書かれています。


外国語を通じて、言語や文化について体験的に理解を深め、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図り、外国語の音声や基本的な表現に慣れ親しませながら、コミュニケーション能力の素地を養う。


つまり、外国語は「コミュニケーション能力の素地を養う」ための手段であるという位置付けです。
国際理解のためには、異文化を理解し、コミュニケーション能力を高めることが大切です。そのため、小学校で体験する英語は、4技能(聞く・話す・読む・書く)のうち、コミュニケーションをとる際に重視される「聞く」と「話す」がほとんどです。たとえば<thank you>ですが、外国語活動ではこれを「サンキュー」と扱い、どういう場面で使うかまでを扱います。しかし、2語で構成されていることも、正しいスペルも、基本的には教えません。

小学校での英語は、あくまでも国際感覚を身に付けていく「素地」を養うために実施しているということを、まずはご理解ください。当然、文法も教えません。まずは伝わることが大切なのです。そして、もう一つ理解しておきたいのが、これは「活動」であり、「教科」ではないことです。正しくは、道徳のように「領域科目」と呼ばれています。必然的に、テストはありませんし、数字による評定もありません。

先生も生徒も活動に慣れてきた

2011(平成23)年に必修となった外国語活動ですが、多くの小学校がそれより前からこの活動に取り組んでいました。当初は、英語の教え方を学んだことがない小学校の先生がずいぶんと戸惑ったようですが、ここ数年で慣れてきたと思います。
中には、ALT(Assistant Language Teacher/外国語指導助手)が学校に1人常駐したり、小学1年生から外国語活動の時間を取り入れたりと、活動に熱心な学校や地区もあります。「外国語に慣れ親しむ」という点で、生徒たちは多くの機会を得るようになりました。
聞く・話すに特化し、成績を問われない英語の時間は、ほとんどの子どもにとって「楽しい体験」です。子どもたちにヒアリングすると、「英語はよくわからない(文法や単語などの知識はないという意味)けれど、授業は好きだし楽しい」といったようなことをよく言います。
「楽しく学ぶ」ことは、国際感覚を養うという本来の目的だけでなく、外国語の習得という観点からも、とても大切です。学校や先生方のがんばりがうかがわれます。

課題は中学校英語との連携

良いことづくしに思える小学校の英語ですが、課題もあります。その一つが、中学校で「教科」として学ぶ英語と、うまくつながっていないことです。中学校に上がった途端、楽しかった英語の「活動」が、文法やスペルなどの「正しさ」を要求される英語の「授業」になり、評定の対象になります。ここで「英語は苦手」という意識が芽生えると、国際感覚を養う手段としての英語とはなんなのか……と、本末転倒なことになってしまいます。
中学校側にとっても、出身小学校によって英語の習熟度がバラバラなうえに評定もないため、各生徒の英語の力がとらえにくいという悩みがあります。この小学校から中学校への接続がうまくいっていないことは、文部科学省を筆頭に、わたしのように英語教育に携わる者にとっては改善していきたい課題です。

その改善策として有効と考えられるのが、必修化からさらに一歩踏み込んだ、外国語活動の「教科化」です。

次回は英語の「教科化」について、吉田先生にさらに詳しく伺います。

【関連記事】
過渡期の小学校英語【後編】 教科化への流れ

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