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​責任を逃れて実権を失う

 私のせいじゃない、現場が悪い、想定外だった。だが、責任が無い、ということは、能力が無い、必要が無い、存在意義が無い、いてもいなくても同じ、ということだ。こんなやつが、自分の責任で善後策を、などと言っても、もはやどこにも求心力は無い。逆に、私の責任だ、私があそこで間違った、と言い切る人物は、すべての鍵だ。失敗は成功の元、と言うが、失敗があってこそ、失敗の原因が明るみになる。そして、その原因を正せば、次にはきっと成功する。だから、もう一度、彼に任せてみよう、ということになる。こんなことは、世界共通のリーダーシップの要諦だ。日本も、フランスも無い。  たとえば、徳川家康。『家康しかみ像』と呼ばれる絵がある。一五八三年、武田信玄の浜松通過に、家康(二九歳)は、重臣たちが勧める籠城策を振り切って三方ヶ原に撃って出て、待ち伏せに遭い、完膚無きまでの大敗。諫めてくれた多くの重臣たちをも失い、命からがら浜松城に逃げ帰った。今日の最悪の自分の責任を忘れまい、と、苦虫をかみつぶす自分の最低の惨めな姿をその場で絵に描かせ、生涯、これを座右に掲げ続け、軽挙妄動を慎み、賢臣識者に諮り、将兵友軍を重んじた。だからこそ、彼は、関ヶ原に勝った。

 小賢しい弁護士の助言など、当てにならない。連中は、目先の訴訟の勝敗程度のことしか考えていない。だから、しょせんやつらは永遠に、ちまい訴訟に明け暮れる弁護士止まりの人生なのだ。ほんものの経営者、指導者であるなら、いま一回の勝ち負けなどというようなちっぽけなことにこだわるようでは話にならない。心の底から頭を下げ切ってこそ、人生に勝つ、運命に勝つ、真剣勝負の時というものがある。いや、自分が滅びても、自分の首を差し出しても、城を残し、国を残さなければならない戦いというものもある。そういう決戦の時に、おのれ自身のプライドにも打ち勝つ図抜けた度量があってこそ、あの人に任せてみよう、あの人に着いていこう、と、部下も、世間も、多くが付き従う。

 とはいえ、私のせいじゃない、なんて言うような、どうしようもないやつが上に乗るような組織だから、現場でトラブルが続発する。そのうえ、こういう腰砕けのトップは、もとより求心力がないから、なにをどうやってもトラブルの後始末などできない。そして、どうせ世間の厳しい目に耐えきれず、しばらく間を置いて、責任を取る、などと言い出し、法外な正規の退職金だけを持ち逃げしようとする。後始末など、ババ抜きのようなもので、運の悪いやつが次に祭り上げられるだけ。どうせ、これまた求心力があるわけではないから、時間稼ぎの先送り。いよいよダメになって、人の救済を頼ることになるが、結局、バカを見る、ツケを払うのは、最後まで上に付き従った下の者たち。

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