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文章を書くすべての人へ。谷崎潤一郎著『文章読本』から学ぶ書き方の本質とは。

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どうも鳥井(@hirofumi21)です。

前回の記事「『5年後、メディアは稼げるか』ブロガーが知っておくべき「紙とウェブ」の決定的な違い。」で著者の佐々木紀彦さんが紹介していた、谷崎潤一郎著『文章読本』を今日は取り上げてみようと思います。

佐々木さんは、「文章術を学ぶにはこの本が一番!これで普遍的なテクニックを学んだ上で、論理的で美しい文章をたくさん読み込むのが、わかりやすい文章を書くスキルを磨く王道だ」と書いていました。

実際に読んでみると、確かにその通りだと思わされる内容です。『春琴抄』や『陰翳禮讚』で知られる小説家・谷崎潤一郎が昭和9年に書いた本なのに、今も全く色褪せることなく、書き方の本質を学ぶことが出来る良書でした。

今回はこの本をもとに「文章とはなにか」、そして「良い文章を書くためにはどうすればいいのか」具体例も交えながら少し書いてみようと思います。

文章とは

まず大前提として、「言語は万能なものでないこと、その働きは不自由であり、時には有害なものであること」というのを、僕たちは肝に銘じなければいけません。

この大前提を僕らはいつも無視してしまうので、言語に過信しすぎ、時に言語に溺れ、その結果争いを起こしてしまうんです。

ここでいう言語とは、話すときも文章を書くときにも使うソレを指します。よって今僕は、日本語という言語を使って文章を書いていることになります。

口語と文章の違い

では、話す時に使ういわゆる口語と、書き残す文章の違いとは一体何なんでしょうか。

この点、著者は「口で話す方は、その場で感動させることを主眼としますが、文章の方はなるたけその感銘が長く記憶されるように書くべき」だと書いています。

これは非常に納得させられるところですよね!言われてみれば、なるほどその通りだと。

ただし、一方で、現代においてはこのへんの区別が曖昧になってきているのも事実です。TwitterやLINEで書く文章は、間違いなく口語に近い書き方をされており、実際にそのほうが他者に“感動”は伝わりやすいです。

また、ブログ(ウェブ原稿)においても、前回の記事で「ブログは論文よりもプレゼンに近い!」と書いたように、ウェブ上では口語を利用したほうが時と場合によっては有効な事もあります。

つまるところ、これは完全に個人のさじ加減で、どちらが正しいというよりも、その場にあった方法で書くことが求められる時代へと移り変わってきたと言えるのでしょう。

文章に実用的と芸術的の区別はない。

ただ勘違いしてはいけないのが、文章に実用的と芸術的の区別はないということです。

少し引用します。

私は、文章に実用的と芸術的との区別はないと思います。文章の要は何かと云えば、自分の心の中にあること、自分の云いたいと思うことを、出来るだけその通りに、かつ明瞭に伝えることにある。

中略

つまり、余計な飾り気を除いて実際に必要な言葉だけで書く、と言うことであります。そうしてみれば、最も実用的なものが最もすぐれた文章であります。

これは賛否両論分かれるところではあると思いますが、僕はこの考えを支持します。

この記事の後半部分で具体例を引用するところを見てもらえればわかるのですが、僕らは芸術的な文章を書いているんだと勘違いして、無駄な装飾を施してしまうことが非常に多いです。しかし、それが悪文へと変化させてしまっている要因でもあります。

とりあえずここでは、この「文章とはいかなるものか」ということを徹底して理解しておきましょう。

文章を書く能力を上達させるためには

さてそれでは、文章を書く能力を上達させるためにはどうすればいいのでしょうか。

まずそのためには、「どんな文章が名文で、どんな文章が悪文なのかを知らなければいけない、見分けられなければいけない」ということは、皆さん異論はないと思います。

しかし、御存知の通り、これを見分けるのは容易な事ではありません。

文章の好みは人それぞれ異なる。

現代ではSNSが盛んになり、シェア文化となって、それがより明確になっていると思いますが、“文章の好み”というのは人それぞれ異なります。そんな中で、名文・悪文を見極めるのは非常に困難です。

著者もこれについて以下のように書いています。

文章のよしあしは「曰く云い難し」でありまして、理窟を超越したものでありますから、読者自身が感覚を以って感じ分けるより外に、他から教えようはないのであります。仮に私が、名文とはいかなるものぞの質問に強いて答えるとしましたら、

  • 長く記憶に留まるような深い印象を与えるもの。
  • 何度も繰り返して読めば読むほど滋味のでるもの。

と、まずそう申すでありましょうが、この答案は実は答案になっておりません。「深い印象を与えるもの」「滋味のでるもの」と申しましても、その印象や滋味を感得する感覚を持っていない人には、さっぱり名文の招待が明らかにならないからであります。

まさにその感覚は人それぞれで、食や音楽、ファッションなど、そういった分野と同じといえます。

理屈を超越したモノの良し悪しを判断できるようになるためには

では、そういった理屈を超越したモノの良し悪しを判断できるようになるためにはどうすればいいのでしょうか。

著者は「感覚を磨くしかない」といいます。

確かに、論理的、科学的にそのよしあしを判断することが出来ないものである以上、あとは感覚を鍛えるしかありません。ここで言う感覚とは、直感や感性、センスとも言い換えてみてもいいかもしれません。

感覚を磨くための方法として、著者は以下のような方法を挙げています。

多くは心がけと修養次第で、生まれつき鈍い感覚をも鋭く研ぐことができる。しかも研げば研ぐほど、発達するのが常であります。

そこで、感覚を研ぐのにはどうすればよいかと云うと、「できるだけ多くのものを、繰り返して読むこと」が第一であります。

次に、「実際に自分で作ってみること」が第二であります。

右の第一の条件は、あえて文章に限ったことではありません。総べて感覚と云うものは、何度も繰り返して感じるうちに鋭敏になるのであります。

文章をシンプルにすること

「なんだ、結局はたくさん読んでたくさん書いて、努力しろってそうゆう話か!」と、ここまで読んで裏切られた感じがする方もきっといるはずです。

なので、ひとつだけ今すぐに実践できることを本書から紹介しておきますね!

それが、「文章をシンプルにする」ということ。

もちろん、昭和9年に書かれた本なので、「シンプルにしろ」なんて書かれていませんが、つまりはそうゆうことです。

悪文の具体例

ここはまず、具体例から見てもらいましょう。まずは悪文からです。

何事も忍び忍んで病苦と闘いながらよく耐えて来た母も、遂に実家へ帰らねばならぬ日が来た。

学校から帰って、家の中に母のいないことを知ると私は暗い暗い気持ちに沈んでいった。父は「実家へ行ったが直ぐ帰って来る」と云ったけれど、私には嫌な嫌な予感があった。

母のいない、海底のように暗い家の中に、私達兄弟の冷たい生活はそれから果てしなく続いた。

当時の女性雑誌に掲載されていた文章らしいのですが、著者はこれに対して「現代の青年たちは、こうゆう悪文を書きたがる。こうゆう風に曲がりくねった素直でない書き方を芸術的だと考える。」と批判しています。

昭和9年の青年たちが批判されているわけですが、これって現代も全く一緒ですよね。

僕らはどうしても、自分の気持ちをより多くの人にわかってもらおうと、気持ちだけが前のめりになってしまって、余計な修飾を増やしてしまいがちです。これは自戒を込めて、本当にそう思います。

良い文の具体例

さて、この文章を谷崎潤一郎が書き直すとこうなります。

病苦と闘い、何事をも忍んで来た母も、とうとう実家へ帰る日が来た。

私はある日学校から帰ると、母がいないことを知って、暗い気持ちがした。父は、「実家へ行ったのだ、直ぐ帰って来る」と云ったけれども、嫌な予感があった。

それからは母のいない家の中に、私達兄弟の冷たい生活が続いた。

どうでしょうか。すっきりして非常に読みやすくなったと思います。

文章をシンプルにすることが、直接文章の上達に繋がるということを理解してもらえたのではないでしょうか。

最後に

本書の中では「言霊」についても触れられていました。

「言葉は一つ一つがそれ自身生き物であり、人間が言葉を使うと同時に、言葉も人間を使うことがあるのだ」と。

初めは、この部分も今回の記事に入れようと思っていました。しかし、本当にこれの意味するところを自分は理解できたのか、そこに最後まで自信を持てなかったので今回は入れませんでした。

この部分が気になる方は、ぜひこの本を読んで欲しいと思います。僕が今まで読んできた中で、一番説得力のある“言霊の考察”でした。

いつかこれを自分の言葉で書けるように願いつつ、今後も精進していきたいと思います。

本書は、文章を書くことを生業にしている人に限らず、生活や仕事の中で文章を書く機会があるすべての人に、オススメの1冊です!多少文体が古く、読み慣れてない人にはとっつきにくいかもしれませんが、それでも一読の価値アリです。

ぜひ手にとってみてください!

谷崎潤一郎著『文章読本』 (中公文庫)

それでは今日はこのへんで!

ではではー!

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