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特定秘密保護法と公益通報者保護法は矛盾する

特定秘密の取扱いの業務に従事する職員が特定秘密文書を保管する過程で省庁の役人達の違法行為を発見した場合にそれをどのように公益通報できるかが全く明らかでなくなった。

特定秘密保護法と公益通報者保護法が矛盾するのである。

公益通報者保護法によれば公益の為に省庁内の法令違反行為を通報すれば通報者は不利益取扱を受けない。しかし特定秘密保持者が特定秘密を公益通報の為に第3者に公益通報した場合に懲役10年以下の刑罰に処せられ、同時に懲戒免職される危険性がある。ヤヤコシイので公益通報をしなければ、省庁の違法行為が隠蔽され続ける。

防衛省で実際に起こったヘリコプターの開発段階での官製談合事件で検証してみよう。

ヘリ開発官製談合、陸佐2人に罰金100万円 東京簡裁2013/01/19

防衛省発注の次期多用途ヘリコプター「UH-X」開発をめぐる官製談合事件で、事業を受注した川崎重工業(神戸市)に入札情報を不正に漏らし、公正な入札を害したとして、官製談合防止法違反罪で東京地検特捜部に略式起訴された同省2等陸佐2人について、東京簡裁は2013年1月18日、ともに罰金100万円の略式命令を出した。略式命令を受けたのは、同省技術研究本部に所属していた○○2佐(54)と、△△2佐(48)の2人。

 2等陸佐らが、開発を受注した川崎重工業側に、競合相手だった富士重工業の内部資料を渡しライバル社の開発計画を漏らし、川崎重工に落札させやすくする意図があったとみられる。

 UH-X開発は2011年9月に公示。メーカー側が提案した性能や価格を点数化して発注先を決める企画競争入札が採用され、川崎重工と富士重工の2社が名乗りを上げ、最終的に川崎重工が2012年3月、35億2800万円で受注した。

 2佐らは富士重工が同省に提出していたヘリの開発計画に関する資料を複数回に分けて川崎重工側に提供。資料には富士重工側の機体の性能や価格が書かれていた。

 2佐らはこれ以外にも川崎重工側に対し、ヘリに必要な性能を記した仕様書などの情報を公表以前に伝達していたほか、「富士重工が対応できないようなアイデアを出してほしい」などと要請していたとされる。
本件ヘリコプターの開発段階の『仕様書』は当時でも秘密扱いされていた。

特定秘密保護法が成立するとこれらの「仕様書」は特定秘密保護法の別表の『チ 武器、弾薬、航空機その他の防衛の用に供する物又はこれらの物の研究開発段階のものの仕様、性能又は使用方法 』に該当する

現実に戦闘に利用するものであるから、敵にこの本件ヘリコプターの仕様書が明らかになると「我が国の安全保障に著しい支障を与えるおそれがあるため、特に秘匿することが必要である」ことになるので、おそらく法3条1項により特定秘密指定はされるだろう。

前記のような防衛省と川崎重工の開発段階のやりとり=官製談合行為とりわけ富士重工で対応できないアイデイア(=川崎重工にあるアイデイア)などは秘密指定された『仕様書』に必ず表現されている。

談合事件に見られた、特定会社しか受注できない『特記仕様=特記図面』を発注者の仕様書に入れるのと同様である。

この仕様書を見て官製談合を発見した特定秘密保持者が、防衛省内部で官製談合行為を公益通報しようとする時に、その仕様書を示せば一目瞭然で判るがそれを示せば秘密の漏洩罪に該当する時に、どのようにして公益通報するのか、極めて困難な事態に遭遇する。

防衛省において法令違反(官製談合行為等)がある場合にそれを公益通報したからと言って不利益取扱をしないという制度がある。
1  「防衛省における公益通報の処理及び公益通報者の保護に関する訓令」(PDF:133KB)(以下「訓令」といいます。)の定めるところにより、防衛省では公益通報の受付、公益通報に関する相談を受け付けています。

2 公益通報をしたことを理由に事業者が行った解雇は無効となり、また、事業者が公益通報者に不利益な取扱いを行うことは禁止されています。

3 防衛省は、公益通報をしたという事実が他に漏れることがないよう、公益通報をした方の個人情報を厳重に管理します。
上記訓令によると次のように受付窓口を指定している
内部職員等からの公益通報は、各機関等に設置されている機関等窓口において受け付けています(各機関等の機関等窓口の住所、連絡先等は、機関等窓口一覧を参照してください。)。

また、上記の機関等窓口に加え、外部の弁護士による公益通報窓口(ヘルプライン)を設置しています。担当する弁護士は次の3名です。

・諏訪圭子弁護士(中野剛史法律事務所)
・金子憲康弁護士(あさひ法律事務所)
・遠藤輝好弁護士(東京虎ノ門法律事務所)
この秘密を保有する職員が、「機関等窓口の職員」や「外部の弁護士」に通報する時に秘密指定されている『仕様書』を示して官製談合行為を通報すると、これは法の秘密の漏洩に当たる可能性がある。

他方、その仕様書を示さず、官製談合行為を通報しようとしてもその証拠がない。

証拠がないと談合に関与していた職員達が否認すると、その職員達の官製談合の証明ができず「虚偽」の公益通報者にされ、逆に不利益取扱を受ける危険性がある。秘密を保有する職員が放置すれば防衛省の前記のような官製談合がまかり通る。

仮に仕様書を示して防衛省内部の窓口に通報したとしたとして、法21条により懲役10年以下の罪に問われるとすれば、公益通報で不利益取扱をしないと防衛省は職員に訓示していることと矛盾する。

刑事罰に処せられるが防衛省とその職員の身分関係において懲戒免職などの不利益取扱をしないという奇妙な法的関係が生じる。

防衛省のコンプライアンス担当者はこれをどう説明できるのか。

おそらく説明できないであろう。

内閣の特定秘密保護法担当の森大臣も同様に説明できない。それほど矛盾に満ちた特定秘密保護法なのである。

実際は公益通報受理寸前にその通報者は特定秘密保護法違反で逮捕、起訴され、官製談合行為などは闇に葬られるであろう。官製談合行為の唯一の証である「仕様書」は「特定秘密」だとして、公益通報者の刑事の裁判にも提出されないからである。

同じようなことがどこの省庁でも起こりえる。

違法な公益通報対象事実が特定秘密保護法の秘密の前に闇に葬られるのである。 この法律は正当な公益通報者を罰する法律になり、省庁の違法行為を隠ぺいする役割を担うことは明らかである。

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