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帰ってきた統合失調症 ―― 100人に1人のよくある話

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紫のパンツを履いた男が身体を大袈裟に動かしながら「か・が・や・でーす!」と叫ぶ――その強烈な姿を覚えている人も多いだろう。人気番組「ボキャブラ天国」シリーズや「電波少年」で一世を風靡したお笑いコンビ・松本ハウスは、ハウス加賀谷が持病の統合失調症を悪化させたことをきっかけに活動を長らく休止していた。その後、2009年に無事活動を再開し、自らの体験談を綴った『統合失調症がやってきた』(イースト・ブレス)を2013年8月出版する松本ハウス。どのような思いで彼らはこの本を綴ったのか。シノドス編集長・荻上チキがメインパーソナリティーを務めるTBSラジオ「荻上チキ・Session-22」からの抄録をお送りする(構成/金子昂)

『統合失調症がやってきた』

南部 本日のゲストは、統合失調症を乗り越えてお笑い芸人に復帰したハウス加賀谷さんとその相方の松本キックさんです。お二人は8月に、実体験を綴った『統合失調症がやってきた』(イースト・プレス)を出版されました。

厚生労働省によりますと、統合失調症はおよそ100人に1人弱が発症するといわれている身近な病気とのことです。2008年の患者調査では、ある一日に統合失調症あるいはそれに近い診断名で日本の医療機関を受診している患者数はおよそ25万人。そこから推計した受診中の患者数は79.5万人とされています。発症するのは10代後半から30代が多く、最近の報告では女性よりも男性の方が若干多いとされています。現在は新しい薬の開発と心理社会的ケアの進歩によって、はじめて発症した患者のほぼ半数は寛解かつ長期的な回復を期待できるようになっています。

ただ8月20日の朝日新聞によりますと、統合失調症で入院している患者の4割が、3種類以上の抗精神病薬を処方されていて、重い副作用や死亡のリスクを高める心配をされています。

荻上 「統合失調症」という言葉をご存知の方は多いと思いますが、今日の放送を前に、具体的にどういった病気なのかといった、基本的な質問メールも多くいただいております。統合失調症は十分な認知がされておらず、メディアでの議論を基礎から進めていく必要がある段階なのだと思います。そこで今回は、統合失調症を発症したハウス加賀谷さんと相方の松本キックさんの体験談をうかがいながら、統合失調症の理解を深めていきたいと思います。お二人とも今日はよろしくお願いいたします。

松本 よろしくお願いしますー! 松本キックですー。

加賀谷 はじめましてー! か・が・や・でーす! よろしくお願いします!

南部 そして今日はもう一方ゲストがいらっしゃいます。統合失調症がご専門の国立精神神経医療研究センター神経研究所疾病研究第3部部長でいらっしゃる功刀浩さんです。

功刀 よろしくお願いします。

「加賀谷くん、くさい!」

荻上 『統合失調症がやってきた』は、一人でも多くの方に読んでいただきたい本だと思います。そして同時に、ボキャブラ天国、電波少年の頃からお二人を見ていたいちファンとして、加賀谷さんが芸人として戻ってきてくださったことがとても嬉しいです。この本は、お二人でお書きになったのでしょうか?

松本 ぼくが加賀谷に取材をしてテープに録音したものを物語にまとめたものです。思い出したくないことも聞いているので、加賀谷は辛かったとも思うんですけど。

加賀谷 小学校、中学校と時期をわけてキックさんにお話をしていたんですけど、なにを話そうか軽くメモをしているうちに、それほどしんどいと思っていないかった時期でも「むむむ!」となって吐いちゃうこともありました。

荻上 出版されてからの反響はどうですか?

松本 ありがたいことにみなさんによくおっしゃっていただいて。当事者の皆さんからも共感を覚えていただいているみたいです。

加賀谷 ぼくもキックさんも悩んでいる方にとってなにかヒントになればという思いがあったので嬉しかったです。

松本 そうなんです。統合失調症の方に限らず、悩んでいる方に広く読んでほしいですね。

荻上 当事者本としても、お二人の漫談調のお話も面白かったのでぜひたくさんの人に読んでほしいです。加賀谷さんは中学生のときに統合失調症を発症されたとのことですが、当時は「統合失調症」という言葉はご存じなかったんですよね?

加賀谷 知らなかったですし、自分に起きていることが精神疾患だってこともわかっていませんでした。

発症したときのエピソードをお届けしますと、中学2年生の1学期、当時は教室に冷房なんてありませんからすごく暑かったんですね。授業が始まって先生が教室に入ってきたら、ぼくの後ろの席に座っていた女の子に「なにをそんなにふてくされているんだ」って注意したんです。くるっと後ろを振り向いたら、その女の子が下敷きであおいでいて。ぼくには女の子の仕草が、ぼくを臭いと思っているように見えたんです。それをきっかけに、授業中に「加賀谷くん、くさい!」って声が後ろから聞こえてくるようになったんです。

松本 しかもその声が友達の声で聞こえるんだよな。

荻上 でも実際には、誰もそんなこと言っていないんですよね。

加賀谷 ぼくはそのように認識できなかったんですね。「ぼくは臭いんだ! みんなに迷惑をかけているんだ!」ってどんどん内側に向かってしまって。次第に教室だけでなく体育館でも、電車に乗っていても、人ごみのなかでも聞こえるようになったんです。まさか幻聴だなんて思いもよらないので、「ぼくはこの世界にいちゃいけないんだ!」って思うようになりました。

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