記事

芸人・松本ハウスが語る統合失調症からの社会復帰

2/6

かつては精神分裂症と呼ばれていた

須田:思春期精神科に行った時は、統合失調症と言われたんですか?

加賀谷:言われてないです。

伊藤:2002年に統合失調症という病名に変わったんですけど、その前は、精神分裂病という名前でした。日本の精神科医の悪いところなんですけど、精神分裂病というのは、とても深刻な病気という神話が当時あって、その病名を患者さんに伝えちゃうと、とってもガッカリするから、伝えないほうが幸せなんじゃないか…というような考えもあったんで、そういう考えのお医者さんが多かったかもしれないんですよ。場合によっては、ご家族には「実はお子さんが分裂病かもしれない」と伝えているかもしれない。あともう1つの可能性としては、まだお若かったわけでしょ?

加賀谷:10代後半でした。

伊藤:統合失調症という確定診断って、3年とか5年とか同じような状態が続いていると、さすがにこれは統合失調症(※当時は分裂病)と言ったんだけど。それまでは、自己臭症とか、思春期妄想症とか違うことを考えていたのかもしれないですね。でも、多くの人が当時自分の病名を知らなかった。それ故に、自分が本当に精神科の病だということに気づかず、どう対処したらいいのかわからなかったと言うのは、確かにあったかもしれない。

須田:ただ、病名を言うかどうかは別にしても、投薬をすることは難しいんですか?

伊藤:色々な言われ方があるわけです。例えば、僕も昔は「神経疲れているかもしれないから、薬飲んだほうがいいと思うんですよね。」とか「寝れない人が多いから、ちゃんと眠れるようになることが神経のためにもいいから」と言って、オススメすることはありました。

加賀谷:そういう感じだったですね。

須田:じゃあ、適切な投薬ができていなかったということですか?

伊藤:わかりません。というのも、お薬を飲んで、少しは楽になったり、声が小さくなったということだったら適切だったと思います。

加賀谷:ただそのグループホームに入ったことによって、僕は幻聴が止みました。人生で初めてゆっくりできたといいますか。

伊藤:それはすごいですね。

統合失調症の"オープン"と"クローズ"

加賀谷:グループホームには、30歳ぐらいまでの方がいらして、みなさん段々焦ってくるんですよね。居心地はいいんですけど、出所したあとどうしようって。僕には何ができるんだろうって。僕は当時17歳だったんですけど、同じようにどうしようと思いまして。

僕、中学生の時から、ビートたけしさんの深夜ラジオのヘビーリスナーでして、カセットテープに録音して1人で聞いていたりしていたんです。そういうこともあって、ここまで、父さんや母さんの思い描いていた人生と違うようになったら、自分の好きなようにやってみてもいいんじゃないかと。それに当時からお笑い芸人に憧れがあって、漫才をやってみたいなと思ってたので、お笑い芸人になろうと。ちょうどダウンタウンさんが東京でブレイクし始めた頃で、お二人が大阪で出演されていた心斎橋2丁目劇場という場所がすごく有名だったんですね。

だから、僕もそこに行ってみようと思って、グループホームの近所にあるハンバーガーショップでアルバイトを始めたんです。怒られ続けて1ヶ月ぐらいしたら、そこそこのお金をいただけて、大阪の劇場を巡る旅費に充てられたんです。色々な劇場をまわったんですけど、最後にその心斎橋2丁目劇場に行って、「よし、やるぞ!」と決めました。その時、たまたま手にとったオーディション雑誌に漫才のことが書いてありまして、履歴書を書いたら合格をいただきました。そして、そこで出会ったのがキックさんなんですよ。

松本:日は違ったんですけど、同じ時期のオーディションを受けていて、同期として事務所に入ったんですよ。最初、加賀谷を見た印象というのは、「なんなんだ、コイツ!」と思いましたね(笑)明らかに挙動不審なんですよ。例えば、「コーヒー買ってきて」というと、絶対ミルクティーしか買ってこないんですよね(笑)

加賀谷:いやあれはですね、ベンダーがちょっとおかしいんですよ。

松本:いや、お前だよ(笑)

加賀谷:いやいやいや、コーヒーのボタンを押してるんですけど、ミルクティーが出てくるんですよ!

松本:(笑)本当にそわそわしていて落ち着きがなかったですね。あと、最初は病気だってことも言っていなかったので、アクの強い奴が入ってきたなという感じで。

加賀谷:"オープン"と"クローズ"という言葉があるんですけど、オープンというのは、自分が病気ということをカミングアウトしているんですけど、クローズというのは内緒にしていることなんです。当時、17歳の僕はクローズでいたんです。

なぜかというと、そういうことがバレてしまうと、お笑い芸人をやらせてもらえないんじゃないかと思ってしまっていたんです。ところが、ある日先輩芸人さんが、"かわいがり"で僕の荷物を漁りまして。そうしたら、色々なお薬の箱が出てきまして、「どういうこと?」ってなりまして。だから、幻聴が聞こえたり、幻覚が見えたりして、グループホームというところに入っていたと正直に話しました。

大谷:キックさんもその時に?

松本:そうですね。その時に初めて知りました。

須田:その時はどんなふうに思われました?

松本:別にそこで「わっ、大変だ!」という風にはならなかったですね。「あぁ、そうなのか」と。だから、今も昔もスタンスは全然変わっていないんです。それが加賀谷の個性ということで。ただ、全くわからなかったので「グループホームってどういうとこなの?」とか聞いて。答えられる範囲で答えてくれたんだと思うんですけど、その話がおもしろかったんです。別に茶化しているわけじゃなくて、「おもしろいよ、その話。舞台でも話していいんじゃないのかよ」って言って。

加賀谷:オープンにしてから肩の荷が降りました。グループホームの話なんかは、フリートークの時に言うことが多かったんですけど、お客さんが楽しんで笑ってくれるんですよね。

松本:ちょっと話して、笑いに昇華すると、お客さんも受け入れてくれるんですよね。

加賀谷:そうなんです。心の重しが降りたような感じでしたね。

あわせて読みたい

「精神疾患」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    緊急事態宣言できない理由を考察

    長谷川一

  2. 2

    朝日は布マスク記事を撤回せよ

    青山まさゆき

  3. 3

    マスク配布への攻撃はお門違い

    青山まさゆき

  4. 4

    BCG接種 コロナ予防の仮説に注目

    大隅典子

  5. 5

    パチンコ屋は警察が閉店指示せよ

    水島宏明

  6. 6

    朝日の布マスク報道に感じる悪意

    中村ゆきつぐ

  7. 7

    よしのり氏 なぜコロナを恐がる?

    小林よしのり

  8. 8

    志村さん 最後の収録と夜遊び姿

    NEWSポストセブン

  9. 9

    俺の子産んで 志村さんが依頼か

    NEWSポストセブン

  10. 10

    いま森友? 立民議員の質問に憤り

    鈴木宗男

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。