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「学徒出陣70周年」に思う

今日は、学徒出陣70周年の記念日である。私は、この記念日に福井市で学徒出陣に関して講演をさせてもらった。戦争の主力となった大正生まれの男子1348万人のうち、実に「7人に1人」にあたる200万人が戦死した「あの大戦」から長い歳月が過ぎ去ったことを感じる。

若くして戦争で亡くなっていった先人のことを思うと、私自身も含めて今の日本人が彼らの犠牲に見合うものであるかどうかを、どうしても自問自答してしまう。今日の講演でも、当時の学徒、若者の思いを中心に話をさせてもらったが、聴いてくれた人もそのことを一緒に考えてくれたように思う。

途中から、涙を流しながら聴いてくれる方もいて、話に力が入った。昭和18年10月21日、すなわち70年前の今日、雨の中、神宮外苑競技場を行進した出陣学徒たちに、私はこれまでどのくらい話をお聞きしただろうか。

文科系学生の徴兵猶予がなくなったこの「学徒動員」は、日本にとって大きな節目であったことは間違いない。高等教育を受けていた学徒まで戦場に送り出さなければならない意味は、言うまでもなく、いかに国家が危急存亡の事態に追い込まれていたかを表わしている。

当時、20歳が来れば、男子は徴兵検査を受け、現役兵となって鍛えに鍛えられ、軍務につかなければならなかった。しかし、学徒にはそれが「猶予」されていた。しかし、昭和18年の「今日」から、それが許されなくなった(徴兵猶予の撤廃)のである。

国がそこまで追い詰められれば、大学生をはじめ、多くの学徒が戦場に向かわざるを得なかったのも頷ける。彼らが学問を諦め、どんな思いで戦場に向かったかは、あまりにエピソードが多過ぎて、簡単には書くことはできない。

当時22歳で神宮外苑競技場を行進した人は、今は92歳である。私にさまざまなことを教えてくれた方々も、ここ数年、鬼籍に入られた方が多い。

私は、戦争ノンフィクションをこれまで6冊書かせてもらっているが、今度、7冊目を書くつもりでいる。その取材で、つい先月、お会いして2日間にわたって貴重な証言を伺った方が、ちょうど学徒出陣70周年の本日、亡くなられた。

3日前にその方から「門田さんにまだまだ話したいことがある」という震えるような字でお手紙を頂戴したばかりだった。この方は、昭和19年8月、輸送船がバシー海峡で魚雷攻撃により沈没し、12日間も漂流した末、奇跡的な生還を遂げた方だった。2日間の取材でも、「まだ伝えきれなかったこと」とは、何だったのだろうか。

私は、今日の福井での講演でも、当時の青年たちは、現代の若者と「なんら変わらないこと」を話をさせてもらった。彼らには恋人もいたし、髪も伸ばし、学徒出陣で行進する前日まで、「俺は青春を謳歌していた」という人は少なくなかった。

では、今の若者と彼らはどこが違うのだろうか。私は、彼らがほんの少しだけ、現代の若者より「家族」を守り、「故郷」を守り、「祖国」を守る、という意識と使命感が強かったと思う。

そして、日本人の特性でもある「恥を知る」という意識も今の人より強かったと思う。アメリカの女性人類学者、ルース・ベネディクトが著書『菊と刀』で指摘した「恥の文化」を持つ人が、大正生まれの若者には、私たちの世代より多かったのではないか、と思う。

そんな出陣学徒たちのことを「70周年」を記念して、話をさせてもらった。毅然と生きた先人たちの姿を私たちは忘れてはならないし、軽んじてはならないと思う。大正生まれの人たちの生きざまを振り返ることこそ、まず私たちが最初におこなわなければならないことではないだろうか。講演をしながら、私はつくづくそう思った。

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