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「松阪市長、議会答弁で『アホな総理』発言」に見る、首長と議会の関係考

松阪市の山中光茂市長は27日の一般質問に対する答弁の中で、「アホな総理」という言葉を用いた。

かりに、議員がこのような発言を行った場合は、地方自治法132条に定める「言論の品位」を損ねることに該当するとして、懲罰の対象となりかねない。

しかし、首長の発言については特段の規定はないようだ。
なぜなら、首長は、議会の構成員ではないから。

一般に、首長は議会に出席するのが当たり前のような誤解があるが、
地方自治法上は「議会の審議に必要な説明のため議長から出席を求められたときは、議場に出席しなければならない」(第121条)と定められた存在にすぎない。

そのため、議会の構成員である議員に対しては、最高で「除名」(議員の身分を失う)という厳しい処分を含む懲罰メニューが用意されているが、首長についてはいかなるペナルティも定められていない。

しかし、議長には、法(130条)で傍聴者を退場させるなど「議場の秩序維持」の権限を与えているにもかかわらず、首長の不穏当な発言ないしは品位のない発言について規定がないというのもオカシなものではある。

それは、議会から首長の不穏当発言は「想定外」ということかもしれないし、そもそも議会の必要があって出席を求めたにすぎない首長には議長が議会からの退席を求めれば済む話だからかもしれない。

もしかすると、より根本的には、議会と長とは、それぞれ住民の負託によって選出された対等で独立した機関である(二元代表)ことから、それぞれ他機関に関することは規定しない考え方に立ってのことかもしれない。

ただ、議会による長の不信任議決や、長による議会の解散といった議院内閣制特有の制度も兼ね備えていることから、日本の地方自治制度はアメリカの二元代表とイギリスの議院内閣制を融合させた制度設計となっているとことがややこしく、“ものはとりよう”という解釈を生む遠因となっている気がする。
このあたりのことは、昨年の鹿児島県阿久根市や名古屋市の市長と議会の関係において有名となり、長と議会の関係が広く関心をもたれる原因ともなった。

しかし、議会であろうとどこであろうと公衆の面前で使うことのできる言葉には自ずと限度がある。わざわざ、言葉遣いにまで規定を設ける必要性などないということを大前提としたい。


関連法規
地方自治法121条 長その他役員等の出席義務
普通地方公共団体の長、教育委員会の委員長、選挙管理委員会の委員長、人事委員会の委員長又は公平委員会の委員長、公安委員会の委員長、労働委員会の委員、農業委員会の会長及び監査委員その他法律に基づく委員会の代表者又は委員並びにその委任又は嘱託を受けた者は、議会の審議に必要な説明のため議長から出席を求められたときは、議場に出席しなければならない。

地方自治法129条 議場の秩序維持
普通地方公共団体の議会の会議中この法律又は会議規則に違反しその他議場の秩序を乱す議員があるときは、議長は、これを制止し、又は発言を取り消させ、その命令に従わないときは、その日の会議が終るまで発言を禁止し、又は議場の外に退去させることができる。
(2) 議長は、議場が騒然として整理することが困難であると認めるときは、その日の会議を閉じ、又は中止することができる。

地方自治法130条  会議の傍聴
傍聴人が公然と可否を表明し、又は騒ぎ立てる等会議を妨害するときは、普通地方公共団体の議会の議長は、これを制止し、その命令に従わないときは、これを退場させ、必要がある場合においては、これを当該警察官に引き渡すことができる。
(2)  傍聴席が騒がしいときは、議長は、すべての傍聴人を退場させることができる。
(3)  前二項に定めるものを除くほか、議長は、会議の傍聴に関し必要な規則を設けなければならない。

地方自治法131条 議長の注意の喚起
議場の秩序を乱し又は会議を妨害するものがあるときは、議員は、議長の注意を喚起することができる。

地方自治法132条 言論の品位
普通地方公共団体の議会の会議又は委員会においては、議員は、無礼の言葉を使用し、又は他人の私生活にわたる言論をしてはならない。

地方自治法134条 懲罰理由等
普通地方公共団体の議会は、この法律並びに会議規則及び委員会に関する条例に違反した議員に対し、議決により懲罰を科することができる。

地方自治法178条 長の不信任議決と長の処置
普通地方公共団体の議会において、当該普通地方公共団体の長の不信任の議決をしたときは、直ちに議長からその旨を当該普通地方公共団体の長に通知しなければならない。この場合においては、普通地方公共団体の長は、その通知を受けた日から十日以内に議会を解散することができる。
(2) 議会において当該普通地方公共団体の長の不信任の議決をした場合において、前項の期間内に議会を解散しないとき、又はその解散後初めて招集された議会において再び不信任の議決があり、議長から当該普通地方公共団体の長に対しその旨の通知があつたときは、普通地方公共団体の長は、同項の期間が経過した日又は議長から通知があつた日においてその職を失う。
(3) 前二項の規定による不信任の議決については、議員数の三分の二以上の者が出席し、第一項の場合においてはその四分の三以上の者の、前項の場合においてはその過半数の者の同意がなければならない。

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