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警察庁:「水着の女子高生と抱き合って踊れる」営業をされる可能性があるのでダンス教室を規制

毎度の風営法テーマのエントリですが、本日はネタ的にちょっと軽いタッチで。以下、ことの発端となった朝日新聞による風営法関連の特集からの引用です。

タンゴもダメなのか 警察庁「享楽的雰囲気が過度」
http://www.asahi.com/national/update/1016/TKY201310160244.html

風営法によるダンス営業規制の余波は、クラブとは無関係のペアダンスの世界にも及んでいる。この数年で、サルサバーの摘発や、公共施設がお年寄りの社交ダンスサークルを締め出そうとするような事例が表面化した。

 タンゴなどの男女ペアで踊るダンスは、「享楽的雰囲気が過度にわたる可能性がある」というのが警察庁の見解だ。8月、タンゴ関係者との会合で警察庁の担当者はこんな説明をした。「規制を法律から外すと、ダンス教室と称して『水着の女子高生と抱き合って踊れる』といった営業をされる可能性がある」 [...]

上記記事は、この一週間続くとされている朝日新聞による風営法特集の第二段で、私自身も非常に面白く拝読しているもの。今回は、アルゼンチンタンゴ教室に対する風営法規制の顛末に関して追っているわけですが、その中に警察庁担当者のコメントとして、「規制を法律から外すと、ダンス教室と称して『水着の女子高生と抱き合って踊れる』といった営業をされる可能性がある」というものが紹介されています。

この記事をtwitter上でご紹介したところ、石田伊織さんという方から以下のようなご意見を頂きました。

上記では文字数の制限上ちょっと説明をハショってしまっていますが、法令上、風営法は「善良の風俗と清浄な風俗環境を保持し、及び少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止」する事が目的であると定められていて、ダンスに関する営業規制に関しては「享楽的雰囲気が過度にわたり、善良の風俗と清浄な風俗環境を害し、又は少年の健全な育成に障害を及ぼすおそれがある」ことを根拠として各種規制を行っています。すなわち、風営法論にとっては「過度かどうか」という事よりも、むしろ「善良な風俗を害する『おそれ』がある」かどかが問題となっている。実は、これが風営法論の最も難しいところです。

例えば、騒音規正法のように近隣住民に迷惑をかける「過度な騒音」そのものを規制しましょうという論旨の法律であれば、「どこまでが過度であって、どこまでが過度でないのか」という客観的基準に基づいて法の運用がなされます。しかし、警察による風営法の運用は「善良な風俗を害する『おそれ』」、すなわちその「可能性」のあるものはすべからく規制の対象となり得りますという運用となっていて、そこに客観基準を設けることが凡そ不可能なものとなっているのです。

この「可能性」を規制するという論法は、法運用をする側にとっては非常に便利なものであって、規制の範囲を限りなく広げることが可能なのですね。その象徴といえるのが上記の記事内で紹介されている警察庁による「ダンス教室と称して『水着の女子高生と抱き合って踊れる』といった営業をされる可能性」が有るが故に規制が必要という論法です。

この論法にダンス営業者側が反論するためには、「その可能性がない」ことを証明する必要があるのですが、このような「特定の存在が『ない』ことの証明」は論理学でいうところの「悪魔の証明(未知論証」)にあたり、非常に困難であるとされているもの。本来はディスカッション上のタブーとされている論法なのですが、実際の風営法論議のあらゆる場面において、警察庁は「~のおそれがあるので規制が必要」という論法で反論側に対してこの「悪魔の証明」を求めているというのが実態であります。

最近の警察庁の風俗行政の中でこの「~のおそれ」が多用された結果、果てしない解釈行政が繰り広げられた分野のひとつが、ダンス営業規制に関して昨年12月に警察庁から発表された「ダンスをさせる営業に係る質疑応答について」であり、もうひとつが昨年7月に通達が行なわれた風俗営業7号業種(パチンコ店)に対する「善良の風俗又は清浄な風俗環境を害するおそれのある広告規制」といえるでしょうか。

ただ、この種の解釈行政は度が過ぎれば当然政治側から「待った」がかかるワケで、それが現実のものとして論議に挙がってきているのが政府・規制改革会議における風営法改正論です。規制改革会議では「法律又は政令の明確な委任がなく、省令等下位規範を根拠としている」規制を、規制改革の対象として明確に取り上げており、その中の重点テーマのひとつとしてすでに風営法が槍玉として挙げられているのが実情。風営法というのは下位法令まで含めると、ある面で解釈行政の塊のような法令であって、ダンスはもとより恐らく今後様々な部分に政治の立場からメスが入れられるものと想像しています。

その辺の詳細に関しては、以前エントリしたことがあるので下記リンク先をご参照。

【参照】いよいよ最終コーナーに至った風営法改正
http://blog.livedoor.jp/takashikiso_casino/archives/8089995.html
…などという風に、根が生真面目な私としては非常に小難しく解説をしてしまうワケですが、神戸大の法学者・島並良教授が、以下のようなツイートをした事によって全く違う展開に(笑
いや、確かに私のように小難しく解説をするよりも、このようなアプローチの方がよほど風営法という規制の「奇特さ」を世に知らしめるわな…と思った次第です。さすがで御座います。ということで、以下はその後現在まで続いている「風営法大喜利」の中で私が秀逸だと思ったものをご紹介。皆様も是非、コメント欄等でひとネタどうぞ。

(ちなみに以下はあくまでネタであって、実際に風営法の規制対象になるかどうかという論議ではないので悪しからず。)

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