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ドクターカーが各地で始動

患者の救命率向上に威力を発揮する大阪・千里救命救急センターのドクターカー

医師らが救急現場に出動
重症患者の救命率向上へ
社会復帰へ後遺症軽減にも期待





患者の救命率向上に威力を発揮する大阪・千里救命救急センターのドクターカー

“攻めの医療”への転換を


治療までの時間短縮が鍵に

救急現場に一刻も早く医師が駆け付け、治療を行うドクターカーが全国各地で相次ぎ始動している。119番通報から治療に当たるまでの時間短縮によって、救命率の向上や後遺症の軽減に効果が期待される。

救急車のけたたましいサイレンとともに、重篤な急患が運び込まれる救命救急の現場は、常に激しい緊張感に満ちあふれている。心筋梗塞や脳卒中、頭部損傷などの重症患者の場合、命にかかわるからだ。

救命救急で大事なことは、何と言っても搬送時間の短縮である。

そこで、宮城県石巻市の石巻赤十字病院は、今月1日から医師や看護師、救急救命士らが救急現場に出動するドクターカーの本格運用を開始した。“待つ医療から攻めの医療”への転換をめざす取り組みだ。

119番通報から治療に当たるまでの大幅な時間短縮によって、救命率アップや後遺症の軽減、社会復帰率の向上が可能になる。

出動の基準は“キーワード”だ。119番の内容で「呼吸なし」や「胸の痛み」「交通事故」など、重症と疑われるキーワードがあった場合に出動する。

当面は、午前8時半から午後5時までの運行とし、365日24時間態勢で運用できる仕組みや人員・車両の拡充などを検討する方針だ。

また、今年9月1日からは、岐阜県の中津川市民病院が24時間体制でドクターカーを出動させる「病院前救急診療科」を新設した。「患者が病院に来る前に救急医療を始める」ことに特化した診療科の設置は全国でも初めてだ。

同病院は、医師が緊急車両で現場に駆け付け、診療や治療に当たる「乗用車型ドクターカー」を導入、早ければ年明けにも運用を開始する。

群馬県の国立病院機構「高崎総合医療センター」では、同月9日にドクターカーの運行を開始。患者を収容した救急車と医師が途中で合流する「ドッキング方式」で動き出した。

ドクターカーを積極的に活用した場合の効果は、導入した地域で実証されている。

大阪府済生会千里病院の千里救命救急センターでは、ドクターカーの運用を1993年1月から開始し、今では年間2000件程度の出動回数を誇っている。

ドクターカーの出動要請が入ると、医師や看護師、救急救命士らが1分程度で集結し、直ちに出動する。医師は患者の容態を走行中のドクターカーから消防本部の司令室に確認し、出動の有無を判断する。約7割は現場まで急行している。

心停止や心室細動症例の場合、1カ月生存率は全国平均の2倍以上の実績を誇るなど、国内でトップレベルの機動性を発揮し、24時間365日、地域医療に貢献し、救命率の向上につなげている。

消防庁の2012年版「救急・救助の現況」によると、119番通報から救急車の現場到着までの時間は全国平均で8.2分、病院収容までの所要時間は平均38.1分もかかっている。

実はこの10年間で、現場到着までの所要時間は2分も延び、病院収容までの所要時間が9.6分も増えている。

日本では、救急車で医療機関に搬送し、医師の診察を受ける救急医療体制が長い間続いてきた。しかし、救急車の業務は年々増加し続け、11年中の出動件数は570万件を突破。救急搬送の急増に、病院側の受け入れ態勢が追いつかず、搬送時間が延びる一因にもなっている。

カーラーの救命曲線呼吸停止の場合、約10分で半数が死に至るとされている。心臓停止や呼吸停止、多量出血の経過時間と死亡率の関係を示した「カーラーの救命曲線」が示したものだ【グラフ参照】。

このことは、緊急事態が重大であるほど、早く適切な処置をしなければ死亡率が増加することを意味している。一刻を争う救命救急の現場で、治療までの時間短縮が“救命”への鍵であることは間違いない。

ドクターカーは全国各地の救命救急センターに10年度時点で131台、また、57カ所の消防本部に配置されているが、そのほとんどが救急現場への出動は行われていない。

救急医療に回せる医師や看護師、運転手の不足をはじめ、病院の採算性などから、主に患者の病院間搬送に使われているのが実態だからだ。

しかし、大阪府済生会千里病院のように、ドクターカーを積極的に運用することで、“たらい回し”が相次ぐ都市部の救急医療の崩壊を立て直すことができるのではないか。

そのためには、ドクターカーを運用する救命救急センターへの医師や看護師の集約化、ドクターカー運用に関する法制化、保険診療費の見直しなどが必要だ。

公明党は救急医療の充実に取り組んで20年以上になる。国会で初めて救急救命士の実現を訴え、91年4月に救急救命士法が成立。これによって、救急救命士の応急処置範囲は大きく拡大した。また、公明主導で整備が進み、医師らが現場に急行するドクターヘリは全国で40機が配備され、その活躍は目覚ましい。

ドイツでは、緊急度の高い患者に対して、15分程度で医師による救急治療の着手が定められている。わが国でも、助かる命を救うための体制構築が不可欠だ。

ドクターカーの適正な配備が進めば日本の救急医療は大きく転換するはずだ。患者を受け入れるだけの救急医療でなく、救命率の向上へ“攻めの救急医療”をめざさなければならない。

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