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「理科は社会で役立つ」生徒に伝わらず? 増えない観察・実験‐斎藤剛史

子どもが科学を好きになるには、単に知識を覚えるだけでなく、実験や観察などを通して科学の勉強が実際の職業や日常生活と密接に関係していることを理解することが大切です。新しく始まった現在の学習指導要領でもそのことが強調されています。ところが、独立行政法人科学技術振興機構の調査によると、理科を勉強すれば好きな仕事に就くことに役立つなどと考えている子どもは9年前と比べて逆に減っていることがわかりました。

同機構は今年2~3月にかけて、全国の公立中学校500校を対象に2012(平成24)年度「中学校理科教育実態調査」を実施し、417校(理科教員1,229人、2年生1万3,430人)から回答を得ました。このうち生徒調査の結果を2003(平成15)年度調査と比較すると、「自然や理科についての読み物や図鑑、テレビ番組をよく見ていますか」という質問に対して、「そうしている」と回答した生徒は03(同15)年度が15.3%、12(同24)年度が8.8%でした。同様に、「理科を勉強すれば、私は、疑問を解決したり予想を確かめたりする力がつく」では「そう思う」が21.5%から14.0%へ、「理科を勉強すれば、私の好きな仕事につくことに役立つ」でも「そう思う」は18.0%から11.0%へと、それぞれ低下しています。中学校の現行指導要領は2012(平成24)年度から全面実施されましたが、理科と数学の内容は09(同21)年度から前倒しで段階的に始まっており、調査対象の中2は現行指導要領通りの理科の授業を実質的に2年間受けています。しかし理科の知識を職業や実生活に結びつけるという指導要領の趣旨は、中学校現場ではあまり具体化されていないようです。

では、理科教員はどうなのでしょうか。2008(平成20)年度調査と比べると、「科学が日常生活に密接に関わっていることをよく解説している」では、「思う」(「そう思う」と「やや思う」の合計、以下同じ)という理科教員は08(同20)年度が84.6%、12(同24)年度が87.6%と増加、「学習内容と職業との関連についてよく説明している」も34.5%から46.1%に増えています。

しかし、理科の授業の「生徒による観察や実験の頻度」は、「ほぼ毎時間」が9.4%から5.5%へ、「週1~2回程度」が53.6%から49.3%に減少する一方、「月に1~3回程度」は31.8%から39.2%へと増加しています。現行指導要領になって、理科教員は授業で理科の知識と職業や実生活の関わりを話す割合は増えたものの、逆に生徒が観察・実験する時間が減ったため、理科への興味・関心を喚起することができないのかもしれません。

教育内容と実験・観察の時間を増やすため、中学校理科の授業時間数は増えましたが、理科教員は観察・実験の障害として、「準備や片付けの時間が不足」(66.5%)、「設備備品の不足」(53.8%)、「実験室の不足」(34.4%)など補助要員、施設・整備、備品などの不足を「授業時間の不足」(33.9%)よりも多く挙げています。

観察・実験を通して理科を職業や実生活と関連づけるという現行学習指導要領の趣旨は、授業時間数を増やすだけでは実現が難しいのかもしれません。

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