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横浜市資源循環局・金沢工場を訪問

物質文明を生きる私たちが買った商品たちは最終的にどのように処理されるのだろうか?それを見届けるため、横浜市資源循環局・金沢工場を訪問してきた。

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金沢工場は、横浜市金沢区ののどかな海浜工業地帯にある。2001年に稼動開始した横浜市の最新鋭のゴミ焼却工場で、1日に約800トン、金沢区、磯子区、栄区、港南区の家庭から出る家庭系ごみと一部の事業系の一般廃棄物を焼却する。

面白いのは、焼却熱を利用して蒸気タービンを回す 3.5万キロワットの発電機を備えていること。原発が1基100万キロワットだから、その3.5% の発電量はごみ焼却工場としては立派な数字。この金沢工場の電気はすべてこの発電によりまかない、かつ隣接する汚泥資源化センターと温水プールに電気を供給し、余った分は東京電力に売却している。また、熱い蒸気を隣接の温水プールに送っている。

見学のクライマックスは、ごみピット・クレーンだろう。最も高い位置に設置された見学所から見下ろすと、それは果てしなく深く広いコンクリート製のプールのように見える。ここにはおなじみのゴミ収集車から投入されたゴミが蓄積される。そこはまさに巨大な UFO キャッチャー。クレーンの先に付いたバケットと呼ばれる巨大な手がゴミをつかんで、焼却炉へ通じる穴へ投入する。そこは神聖なる「ゴミの神殿」だった。家庭から排出される生ゴミが主体だが、切った植木や訳の分からない細長いビニールなど、燃やしうるありとあらゆるゴミがそこにあった。このゴミたちはかつては一定の価値をもって売られていた商品だったのだ。このゴミたちの背後にいる消費者の思いを想像すると、そこにかつて商品だったものの霊がさまよっているような気がした。

クレーンの操作室は見学室のすぐとなりにあった。若い男性が、下を覗き込みながらクレーンを操作している。UFO キャッチャーで遊んでいるのを想像すればいい。ただし、つかむのは縫いぐるみではなく、ゴミなわけだが。毎日毎日、この圧倒的な量のゴミを見つめながら一日を過ごす人が、この世にいることに不思議な感慨を覚えた。ごみピットの空間は陰圧になっていて、そこから空気は外に出てこないので、見学室もクレーン操作室もゴミの臭いは一切せず、清潔そのものである。クレーン操作は、力仕事は全く必要ないので、下を覗き込む姿勢ゆえに腰が痛くなることを除けば、それなりに快適な仕事のようだ。

火力発電所もゴミ焼却場も何かを燃やして発電する点は同じだが、違うのは、ゴミ焼却場では受け容れる物質を選択できないことだ。それが本当に「燃えるゴミ」かどうかはもっぱらゴミを出す市民の良識に委ねられている。だから実際ときどきとんでもないゴミが運ばれてくるらしい。大きな机とか金属類とか。実際そのため焼却炉を止めて点検することがあるらしい。できた灰はどんな物質で構成されているのかガイドさんに聞いたが「調べてみないと分からない」という答えだった。

横浜市では G30 というゴミ削減の取り組みを行っていた。2010年のゴミ排出量を2001年に比べて30% 削減するという目標だったが、実際にはこれより数年前倒しで目標は達成された。かつてゴミとして焼却されていたものの多くが、リサイクルされて再利用されるようになったのだ。この効果は絶大で、実際に横浜市はいくつかの焼却工場を停止し、最終処分場の寿命を伸ばすことができるようになった。横浜市に引っ越してくるとおそらくゴミ出し時のリサイクル品目の細かさに辟易するだろう。だがやるだけの価値はあるようだ。

ガイドさんは、横浜市の技術系職員だったが、定年退職後、嘱託として再雇用され、いまは見学者対応を担当している。好々爺という風貌の初老の男性であった。現役時代は下水道の専門家だったということで、私は、最近、神奈川県でも発見された下水の汚泥に含まれる放射能の処置について尋ねてみた。彼はやや表情を曇らせて「放射性物質は通常の物質と同様に処理できないことが法律に定められていますので、たぶんどこか別の場所に保管するようにするしかないでしょうね」と答えた。

この焼却工場を見た限りでは、横浜市はゴミ処理という資本主義社会の商品生産の最終局面をかなりうまく処理しているように思えた。ただその処理過程に、放射性物質が入ってくる余地はないのだ。国策として推進している核燃料廃棄物の最終処分も燃料サイクルも、うまく行くメドがまったく立っていない。私は、人類社会は放射能とは共存できないだろうと改めて感じた。

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