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言論の自由のない国で真実は見えない

日本国憲法には言論の自由に関する規定があり、政府はそれをよく守っている。戦後、言論活動を理由として投獄された日本人はいない。たいていの先進国には言論の自由がある。だが発展途上国(新興国)に目を向ければ言論の自由のない国は多い。

言論の自由のない国で、世界に最も影響力があるのは、まちがいなく中国である。中国の言論統制は世界でもっとも洗練されている。マスメディアは直接政府の統制下にある。インターネット上の言論にも、人海戦術で徹底的な管理が行われている。先日、ノーベル平和賞を受賞した劉暁波氏を始め、政府に不都合な言論を行った人々を監視・軟禁・国外追放・逮捕・投獄するのは日常茶飯事である。

中国政府が主張するところによれば、彼らが統制する対象の言論は、ごく狭い範囲の政治的な言論にすぎないという。だが、その「範囲」がどこに及ぶのかは、理解しにくい。そのため、威嚇効果は抜群であり、政治・経済・思想・社会等の広い範囲の事柄で、人々は公に自分の信条を吐露することを避けるようになる。つまり、広範囲の自主規制が行われるのである。

よくよく考えてみなければならないのは、中国の言論統制の影響を受けているのは中国に住む中国人だけではないということだ。現在、きわめて多数の日本企業が中国に進出している。こうした日本企業で働く日本人たちは、中国のさまざまな現実を見聞して知っている。しかし、彼らもまた、円滑な中国ビジネスを継続するため、中国政府が好まないような事柄について公に口にすることを慎まなければならない。さまざまな嫌がらせを受ける可能性があるからだ。こうした「日本企業」には日本のマスコミも含まれる。

中国においては、中国政府の公式発表は「絶対的真実」である。それに対して、科学的な批評を加えることは許されない。こんな国で、いったい何を信じたらよいのだろうか。当然、何も信じることはできないのだ。

中国政府には、美点を誇張し欠陥を隠蔽する十分な動機がある。そこに健全な懐疑主義がないのなら、私たちが知っている中国に関する情報は、よい部分が何倍にもひきのばされ、わるい部分が適当に省かれていると考えてまちがいないのではないか。数字は適当だが、現在、知られている中国に関する情報について、いいことは5分の1、 わるいことは5倍くらいにして考える程度でちょうどよいのではないか。言論統制のある国は、実際より良く見えるというバイアスが常にかかるのだ。

中国政府は、いやそんなことはない、われわれは真実を述べているだけだ、と主張するだろう。ならば国民の言論を自由にすることに何の不都合もなかろう。インターネット時代には、重要な事柄に対しては全角度からの検証があっという間に行われる。中国政府が真実を述べているのか嘘をついているのかは、時を置かず明らかになるだろう。

言論の自由のない国(中国・ベトナム・シンガポール等)については、そこに大量の情報が流れていたとしても、私たちは極めて歪んだ姿しか理解できないと覚悟する必要がある。重要なのは情報の量ではなく質だ。つまり、それが政治的な介入を受けることなく、理性的・科学的に検証できるかどうかなのだ。

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