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「自炊代行」裁判の判決文が公開されました

一昨日の「自炊代行」裁判の判決文がもう翌日には裁判所のサイトで公開(PDF)されてました。

今ちょっと時間がないので要点だけコメントします。

判決主文のポイントは、以下のとおりです。

  • 被告による(目録に挙げられた)書籍の複製行為の差止め
  • 被告による(7名の)各原告に対する損害賠償金10万円の支払い(被告は2社ですので7×10万円×2社で報道に出てきた140万円の損害賠償支払と一致します)(これは弁護士費用相当額の一部という名目です)

そもそも、本のコピーが増えるわけではないので複製による損害発生の立証は困難であり、それほど多額の損害賠償を請求できるわけではありません(元々の原告側の請求も各被告に対して21万円です)。原告側にとっては弁護士費用を加味するとマイナスになるかもしれませんが、「複製代行は著作権侵害にあたる」というという司法判断を得ることが目的だったのでまあこれでよいのでしょう。

前回書いたように30条をそのまま解釈すると「自炊代行」が著作権侵害なのは明らかなので、当然予測されたように、被告側は、物理的には業者がスキャンしていても利用者がスキャンしていると解釈すべきという、いわゆる「手足論」を主張しています。

たとえば、タブレットで字を大きくして読みたいが、スキャナを使えないおじいちゃんのために孫が「自炊」してあげるなどのパターンです。孫はおじいちゃんの「手足」として複製しているだけなので、複製の主体はおじいちゃんと解釈できるということです。(社長に代わって秘書がコピーしてあげるという例が使われることもありますが、この例は「会社業務での複製が個人的使用にあたるか」というまったく別の論点も関係してくるので例としてはあまりよろしくないと思います。)

この「手足論」については、裁判官は以下のような形で一蹴しています。

このような電子ファイル化における作業の具体的内容をみるならば,
抽象的には利用者が因果の流れを支配しているようにみえるとしても,
有形的再製の中核をなす電子ファイル化の作業は法人被告らの管理下に
あるとみられるのであって,複製における枢要な行為を法人被告らが行
っているとみるのが相当である。


その他、「コピーが増えていないので複製ではない」、「著作権の行使は権利濫用に当る」という主張も基本的に一蹴されています(これらの主張は元々無理筋で私が裁判官だとしても一蹴するでしょう)。

この判決を「ひどい」とか「現実に合わない」という批判の声が聞かれます。しかし、現在の著作権法と判例の蓄積を考えれば、このような判決になるのはしょうがないでしょう。「ひどい」とか「現実に合わない」のは判決ではなくて法律の方だと思います。「悪法も法」なので無視することはできません。改正の必要性はあると思うのですが、ダウンロード違法化・刑事罰化の時と違って、こういう方向の改正にインセンティブを持つ議員さんはあまりいないと思われるのが問題です。

どういう改正が考えられるかについては大昔にこのブログにちょっとだけ書いています(「複製代行サービスを合法化するために求められる法改正」)。


追加:匿名のツイッターユーザー「大眺ム」氏(プロフィール「大した事は言えない。ただぼんやりと感じたことを書いているだけ。平凡なおやじの日記みたいなものです。」)によるとこのブログ記事は「論外」であるそうです。判決文ひととおり読んだ上で時間の制限内でポイントをまとめたつもりなんですが、どうなんでしょうかね。 関連記事:

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