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【もんじゅ君のズバリ聞きますだよ! 第5回】前編:飯田哲也さん、福島の汚染水漏れ、どうすれば解決できますか?

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福島第一原発事故にショックを受けて、2011年5月、突如ツイッター上に現れたもんじゅ君。福井の高速増殖炉もんじゅの「非公式」ゆるキャラながら、フォロワー数は10万人超、エネルギー問題を解説する著書も3冊あるなど、幅広い支持を得ている「炉」のキャラクターです。

このもんじゅ君が、各界の著名人に東日本大震災以降の活動やエネルギー問題についての考えをたずねるシリーズインタビュー。

第5回のゲストは、環境学者の飯田哲也さん。震災以降、孫正義さんの「自然エネルギー財団」設立の中心を担ったり、大阪市の特別顧問を務めるなどしてきた飯田さんに、福島第一原発の現状と必要な打ち手についてインタビュー。かつて原子力ムラのエンジニアであった飯田さんがいかにして環境問題にとりくむようになったのか、そして自治体や国の審議会議員を務めながら全国をまわり、みえてきた「地方の可能性」とはなにか、を語りつくしました。

ゲスト: 飯田哲也(環境学者・環境エネルギー政策研究所所長)
インタビュー・構成: もんじゅ君(高速増殖炉)

安倍さんの「完全にブロックされている」はホントですか?

もんじゅ:飯田さん、こんにちは。きょうはまず、最近のエネルギーに関する話題についてお伺いしたいと思っています。
 最近、福島第一の汚染水漏れ問題がようやくクローズアップされるようになりました。オリンピック招致では、IOC(国際オリンピック委員会)総会でのプレゼンテーションで安倍首相がしきりに「状況はコントロールされている」「汚染水は福島第一原発の港湾内に完全にブロックされている」とアピールしていたわけですが……。

飯田:あれはもう、まったくのデタラメですよ。東京電力の汚染水対策って、「泥縄式にもぐら叩きをやっている」状態なんです。放射能汚染も港湾内にブロックどころか、太平洋に拡散していることはあきらかです。

もんじゅ:では、どういう対処法や見通しがあるんでしょうか?

飯田:これには工学的な対処法の話、それから対応にあたっての組織体制の話、そのふたつがありますよね。
 いますぐできる工学的な対処法はというと、残念ながら、これまでとおなじようなバンドエイド的な応急処置しかないかもしれません。でも、もっとしっかり全体像を調査することと、何年かかるかわからなくても、最終的な封じ込めへの道のりを描いてことにあたるのが大事だと思います。

汚染水はまわりだけじゃなく、「底」をブロックするのが大事

もんじゅ:どんどん山側から地下水が入ってきていますよね。そうすると、汚染水が増えるのももちろん困りますけど、建屋全体が浮いちゃうんじゃないかなって心配になります。

飯田:とりあえず緊急対応的に四方に壁をつくるのはいいと思います。ただ、それがいま経産省が主張している「凍土壁」がいいのか、アメリカでやったような「アパタイト」(燐灰石)でせきとめるのか、どっちがいいのかもうすこし検討したほうがいいでしょうね。

もんじゅ:いまの政府案である「凍土壁」は、地面に冷水パイプを通して、土のなかの水分を凍らせて壁のようにしてしまおう、というアイディアですね。うまくいっても実装できるのは来年9月ということですが。

飯田:あの「凍土壁」案は世界に前例がないですし、膨大な電気を消費するんですよ。それがはたしてよいのかどうか。
 いずれにせよ、四方をかためるのにくわえて必要なのは、「底」をつくることです。鉄筋コンクリートで底もつくって、原子炉建屋をすぽっと「箱」に入れたようなかたちにして地下水を完全に遮断しなくちゃいけない。その封じ込めが第一のゴールですね。

もんじゅ:まわりだけじゃなくて、下もだいじってことですね。

汚染水をためたタンクが高線量なので、作業員の被曝も多い

飯田:地下水の流入をふせぐことができたとしても、そのうえでなお残る第二の問題として、すでにある膨大な汚染水があります。いまのところどんどんタンクに貯めていますが、あれはバカタンクでしかない。地震が起きたら中身がどさーっと流れ出る可能性があります。

もんじゅ:ものすごい海洋汚染が起きてしまいますね。

飯田:もちろん、いまもタンクそのものから放射線が出ているので、近くにいる作業員もそうとう被曝をしています。だから、あれをなんとかしなくてはいけない。
 京都大学の小出裕章教授(原子力工学者)は「タンカーに入れて、処理できるところにはやく持っていったほうがいい」とおっしゃっていました。そういう方法も含めて、40万立方メートルという膨大な汚染水をはやく処理しなくてはいけない。
 原子炉の周囲はもちろん、底にも壁をつくること、汚染水をどこかへ持っていって処理すること、そのふたつが当座の課題です。

東電は私企業。だからどうしても事故処理をケチってしまう

もんじゅ:汚染水問題ばかりクローズアップされていますが、それ以外には?

飯田:最終的な課題としては、メルトダウン、あるいはメルトスルーしている燃料を、いまの水冷式から空冷式にきりかえる(*水に漬けた状態ではなく、乾いた状態で温度を低くコントロールすること)とともに、完全な封じ込めをしなくちゃいけない。その3つをやろうとすると、いまの東京電力ではムリなんです。
 東電は事実上の「ゾンビ企業」(実態として倒産している企業体)で、あれが上場企業でいることじたいがおかしいわけです。

もんじゅ:国からお金を輸血されてなんとか生きている、という感じですよね。

飯田:東電はいま、国民の電気料金と国からの税金(交付国債)を、(1)電力供給、(2)福島のあとしまつ、(3)事故の損害賠償、その三つにわけて使っている状況です。しかも上場企業ですから、それで利益を出せといわれている。そうすると、どうしても事故処理と損害賠償をケチってしまうのはあたりまえです。だったら、すっぱり切るしかない。

 福島の事故は、菅政権のころからいまの安倍政権にかけて、どんどん状態が悪くなっていると思います。菅さんは非常事態宣言を出しました。いまもひきつづきそのはずではあるのですが、現政権には「非常事態だ」という感覚がないんじゃないでしょうか。

福島第一原発は、いまも国家的レベルの危機にある

飯田:福島の事故をなんとかするには、「日本は事実上、戦争をしているほどの非常事態なんだ」という意識を持つ必要がありますよ。縦割りの弊害などいろいろなものを超えて、事故収束に総力をあげなきゃいけないところを、「東京電力の責任でやってくださいね」という状況はよくないですよ。

もんじゅ:ある意味、国が東電に「自分でやれよ」と投げていた、ということですね。

飯田:東京電力はいま、実質的に国営・国有なので、国がちゃんと前面に出る必要があるんですが、そこがすごく逃げ腰です。

もんじゅ:汚染水の問題ではようやく国が「直接介入する」といいましたが、政府が一枚岩な感じはしませんね。経産省の対策案は出ましたが、「実現可能なのか?」と与党からの批判もあります。
 そもそも、政府の介入はいまのところ汚染水漏れにかぎってしか話に出ていません。もっと全体的に事故処理を国が主導したほうがいいんですね。

飯田:いまも国家的レベルの危機がつづいているんだ、と認識しなくちゃいけません。4号炉のプールもそうですし、3号炉も危ういんですよ。
 東電には当事者能力がすでにないのに、事故の処理を任せきりになっている。その「国全体の無責任構造」を解消しなくちゃいけない。そうじゃなきゃ、技術的にも予算的にも対応がますますひどくなっていくんじゃないかと思います。  そしてその結果として、福島の状況がもっとひどくなったり、起きてほしくはないですが「第二の福島」のようにほかでも事故が起きるということが、じゅうぶん考えられます。

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