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質の良いものを少しだけ。ファストファッションに警鐘を鳴らすECサイト「Cuyana」

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いつも洋服の買い物をするとき、あなたは「質より量」派だろうか? それとも、「量より質」派だろうか? 近年では、ユニクロやH&Mといった「ファストファッション」の地位が昔に比べて上がっているという事実もある。きっとあなたも、これらのブランドの製品を購入したことがあるに違いない。

しかし今回ご紹介する「Cuyana」は、高品質でサステイナブルな素材からつくった洋服やアクセサリーを、オンラインのみで販売するファッションECサイトだ。「Fewer, better things」というキャッチコピーのもと、「安いものをたくさん買うよりも、質の良いものを少しだけ買うべきである」というコンセプトを発信している。

それはなぜか? いわゆる「ファストファッション」は、その安さの代償として、商品の生産地である発展途上国に劣悪な労働環境をもたらし、環境に悪影響を与えるためだ。これまでにベンチャーキャピタルなどから170万ドル(約1億7000万円)の資金提供を受けており、今後の成長が期待されているファッションブランド兼ECサイトである。

ファストファッションへの警鐘

Cuyanaを立ち上げたのは、Karla Gallardo(以下ガヤルド)氏とShilpa Shah(以下シャー)氏の2人。ガヤルド氏は、ゴールドマンサックス社で投資銀行員として働いたのち、アップル社でオンラインストラテジーに携わった。シャー氏は、ウォルト・ディズニー社でインタラクションデザイナーとしての経験を積んでいた。

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南米エクアドルで生まれ育ったというガヤルド氏は、幼い頃から貧富の差を目の当たりにしてきた。そういった自身の経験から、いつか発展途上国や地球全体に対して社会的貢献ができる会社を立ち上げたいと願い続けてきたいう。

そんな彼女が「Fewer, better things」というコンセプトに行き着いたきっかけは、あるとき、米国のショッピング事情にふと疑問を覚えたことだった。

「今の米国では、消費主義(大量の財・サービスの購入を奨励するような社会的・経済的要求)がとても高まっているわ」

「消費者は常に消費を促されていて、『買うつもりじゃなかったのに、なんとなく買ってしまった』ということもしょっちゅう。そのせいで、クレジットカードの請求書はとんでもない額になり、家には特に意味もないようなものがどんどん溜まっていってしまうのよ」

「だから、私たちはその100%反対の方向へ行きたいと思ったの。シンプルで高品質で手頃な価格の美しい製品をつくることができれば、消費者に『なんとなく』じゃなくて『意志を持って』買うという習慣を取り戻してあげることができるはずだわ」(ガヤルド氏)

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また、Cuyanaは「ファストファッション」に対しても警鐘を鳴らしている。

2013年4月、バングラデシュで縫製工場の入ったビルが崩壊したことを覚えているだろうか。死者1000人以上を出した大きな事故だった。

バングラデシュは世界の衣料品生産の中心地であり、H&M、ナイキ、GAPなどの大手ブランドもバングラデシュで生産を行っている。もちろん、労働力が非常に安いためだ。しかし、生産コストが削減できる代わりに、工場員の劣悪な労働環境を生んでいるのが実情である。

この事故も、世界中の消費者が「早くて安い」ファッションを求めたことによってもたらされた悲劇のうちの1つなのだ。Cuyanaは、消費者が「ファストファッション」の悪循環から抜け出し、このような悲劇を生むことのない製品を購入するようになることを願っている。

すべて質の良いものであれば、洋服の数が少なくても充分に生活できるはずよ。私たちは、消費者がワードローブの質を高め、ショッピングについての考え方を変えるための手助けをしたいの」(ガヤルド氏)

高品質の製品を手の届く価格で

Cuyanaは、高品質の原材料を求めて世界中を探し回り、それを使って、ブラウス、ワンピース、帽子、バッグ、財布、アクセサリーなどを製造している。デザインも自社で行っており、生産サイクルは約4カ月。業界標準と比べて3倍早い。

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ファッションブランドには、ある国で原材料を調達し、それを中国やバングラデシュなどの別の国へ運び、そこで製造を行っているものが多い。しかしCuyanaの製造プロセスは、すべて原材料を調達した国で行われることになっている。

つまり、エクアドルで調達した原材料を使う製品はエクアドルで、ペルーで調達した原材料を使う製品はペルーで、インドで調達した原材料を使う製品はインドで製造を行っているということだ。環境にやさしいうえ、現地に職を生み出している。

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できあがった製品はオンラインでのみ、消費者に直接販売する。そのため、同等の品質の原材料を使う高級ブランドと比べて、間に中間業者がいない分、製品を安く提供することが可能となっているのだ。たとえば、高級ブランドで900ドル(約9万円)するバッグと同じ品質のバッグを、Cuyanaでは160ドル(約1万6000円)で提供できるとのこと。

「私たちは、世界中でプレミアム品質の製品をつくっているの。しかも、長いこと使い続けることができて、毎日でも着ることができるようなシンプルなデザインのね。そういう製品を揃えれば、クローゼットの中身はぐっと減って、二度と不用品に悩まされることもなくなるはずよ」(ガヤルド氏)

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Cuyanaには、「Lean Closet(クローゼットの中身を減らそう)」というシステムがある。Cuyanaで買い物をすると、購入した製品といっしょに袋が届くので、その袋に自分のクローゼットの中にある不要な洋服を詰めて、Cuyanaに送り返す。すると、将来の買い物に利用できるストアクレジットがもらえるのだ。Cuyanaは、届いた洋服を慈善団体に寄付している。

ガヤルド氏によれば、Cuyanaのコンセプト「Fewer, better things」を実現するために行っていることは、以下の2つだという。上記の「Lean Closet」も、2に当てはまるだろう。

  1. 中間業者をカットすることで高品質の製品を手の届く価格で顧客に提供すること
  2. 顧客が自分自身を誇りに思えるようなショッピング習慣を育てること

今のところ、この戦略はうまくいっているようだ。2013年6月時点で、Cuyanaの顧客リピート率は30%を超え、返品率は1%に留まっているという。

ビジョンをとことん追求すること

消費者の行動や習慣を根本から変えようとすることは、決して簡単なことではない。消費者に「Fewer, better things」を受け入れてもらうためには、その背景にあるストーリーやそれが社会にもたらす好影響などについて、彼らにきちんと伝えていかなければならないのだ。

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「巷には30ドルで買えるスカーフがあるのに、どうしてCuyanaのペルー産のスカーフは65ドルもするのかということを顧客はすぐには理解できないわ。実際にお金を払う価値があるのだということを説明してあげなければいけないのよ」(ガヤルド氏)

Cuyanaは、顧客にストーリーを伝えるためのツールとして「動画」を利用している。Cuyanaのウェブサイトには、Cuyanaというブランドはどのようにして誕生したのか、Cuyanaの製品はどのようにつくられているのかなどを伝えるための動画が組み込まれているのだ。ただ文章で説明するよりも、顧客のエンゲージメントが高いという。

また、購入促進のためのマーケティングツールとしてはPinterestが効果的に機能しているとのこと。「美しい洋服の写真を見つけてクリックしてみても、結局手の届かない高級ブランドのものでがっかりした」という経験を持つPinterestユーザーに「クリックしてみたら、自分でも手の届く値段だった」という喜びを与えているそうだ。

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Cuyanaの創業者たちは、ビジネス成功のカギは、自分が最初に掲げたビジョンをとことん追及することだと語っている。

「Cuyanaを立ち上げるってなったとき、『サブスクリプションモデルにしたら?』ってアドバイスを数え切れないぐらい受けたわ。でも、それは私たちがターゲットにする顧客に対してベストなやり方ではないということはわかっていた。だから私たちは『いいえ、それは何だか違う気がするの』『いいえ、そうするつもりはないわ』って、議論にすら持ち込ませなかったわ」(シャー氏)

「私たちが資金集めをしていたときにも、サブスクリプションモデルを勧めてきた投資家がたくさんいたわね。世の中には雑音、つまり耳を傾けるべきでない意見もたくさんあるわ。失敗するための1番簡単な方法は、自分自身のビジョンを追及することをやめてしまうことよ」(ガヤルド氏)

流行していて成功例も多かったサブスクリプションモデルをどれだけ勧められても、「安いものをたくさん買うよりも、質のよいものを少しだけ買うべきである」というビジョンに反するため断固として取り入れなかった。この確固たる姿勢が、すべての起業家が見習うべきものであることは間違いないだろう。

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