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誰が「日米同盟」を漂流させているのか

 「双方とも政府は公式には否定するが、日米同盟はいま再び漂流状態にある。安倍、オバマ両首脳同士に心の交流はない。支える事務方同士の意思疎通も以前とは違う。」

 「秋風に漂流する日米同盟」という注目すべき表題の下に、伊奈久喜特別編集委員は『日経新聞』9月29日付で、こう書いています。「1993年、米国で経済優先主義のクリントン政権ができた当時の日米関係をジャーナリストの船橋洋一氏は『同盟票流』と表現した。2013年秋の状況も当時と似ている」とも……。

 この伊奈さんのこの論評を読んで、ようやく本当のことが語られ始めたと思いました。オバマ米大統領は安倍首相を快く思っていず、2人は話が合わないということは、昼食を挟んでわずか1時間半で終わった2月の日米首脳会談を始め、サミットでの立ち話、モスクワG20での会談の経過と内容、国連総会に出席しても日米首脳会談が設定されなかった今回の訪米など、一連の経過と両首脳の関係を見ていればすぐに分かったはずなのですが、大手のマスメディアではなかなかそのような論評には出会わなかったらからです。

 しかし、この伊奈さんの論評でも、「安倍政権が目指す集団的自衛権をめぐる解釈変更にも、米国の立場は微妙だ」とし、「ケネディ新大使は公聴会で『議論を見守る』と判断を避けた」が「東京の秋を感じれば、大統領を説得して漂流を止めるのが使命と気づくはずである」と書いており、問題はアメリカの方にあるかのような印象を受けます。「漂流を止める」ためには、「大統領を説得」する以上に、安倍首相の方を諫めなければならないと、なぜ書かないのでしょうか。

 伊奈さんも「中国、韓国の経済成長によって東アジアの権力構造は変わった。オバマ政権に映る日本は日本人が自覚していない、相対化された日本である」と指摘しているように、日本をめぐる国際環境は大きく変化しています、同時に、「日米同盟」のあり方や、そこで日本が果たすべき役割も変わっているのです。

 しかし、安倍首相はそのことを全く認識していません。岸首相以来の日米同盟の「双務化」を理想とし、「日本がアメリカを助けるようにしたい、それも軍事的に」という妄想に囚われて東アジアにおける混乱要因を生み出すことで、かえってオバマ米大統領を困惑させるという状況に陥っています。

 「東アジアの権力構造は変わった」のに、そのことを「日本人が自覚していない」という伊奈さんの指摘は重要です。そのような自覚が最も欠けているのは安倍首相であり、それをきちんと自覚させ、「集団的自衛権の解釈変更」が無用であるばかりでなく不適切であることを説得するのが、伊奈さんはじめマスメディアに関わっている人々の役割なのではないでしょうか。

 もはや、安倍首相の妄想と暴走によって民主党政権時代以上に日米関係が悪化し「漂流」し始めていることは、政府に近い『日経新聞』の特別編集委員でさえ指摘せざるを得ない明白な事実となってきています。その打開をアメリカのケネディ新大使に期待するのではなく、自らの論評と報道を通じて実行するのが日本のマスコミ人としての役割であり矜持というものではないでしょうか。

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