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行楽目線>住民目線

先週はテレビのニュースで、頻繁にリニアモーターカーの話が取り上げられていました。たまたま見たタイミングが重なっただけなのかも知れませんが、あれこれと期待する住民の声が挙って伝えられていたものです。どうなんでしょうね、高速で走行するリニアモーターカーには当然ながら騒音の問題がつきまといます。ゆえに路線の大半は防音壁で覆われているのですが、これを惜しむ声が続々と放送されていました。

 リニアを見たい、という需要も相応にあるのでしょうけれど、ではリニアが見える=防音壁の隙間の近辺の居住者にとって、それは好ましいことなのかと考えると、色々と首を傾げたくもなるわけです。リニアという観光資源を活かして地域振興云々という思惑もあるようです。しかし、そんなものがいったいどれだけ続くのか、せいぜい一過性のブームに終わるだろうとしか思えないところもあります。そして客商売の人にはまだしも、普通の住民にとってはどうなんだろうと。

 一時、京葉線沿線にある会社に勤めていたことがあります。ディズニーランドの最寄り駅である舞浜駅のある京葉線ですね。夏休みや春休みのシーズンが特に顕著でしたが、普通の平日でもディズニーランド行きの行楽客は、開園時間に合わせて通勤ラッシュの時間に大挙してくるわけです。一般の通勤客にとっては苦痛でしかない時間帯ですが、行楽客の多くは大興奮だったのを良く覚えています。ディズニーランドのアトラクションは、満員電車に体をねじ込むところから始まっているのでしょう。行楽客にとっては非日常である通勤ラッシュに興奮を抑えられず、人目も憚らずに歓声を上げ続ける人も少なくありませんでした。

 まぁ、他の路線でも修学旅行に出かける子供などは似たようなものなのか、満員電車の圧迫に大興奮している団体さんには時々、遭遇します。なんと言いますか、「行楽(観光)目線」と「生活目線」ってのがあると思うのです。つまり前者の行楽目線では、普通なら不快であって当然の通勤ラッシュも非日常的なファンタジー溢れる体験であり、これ自体が娯楽としての意味を持っている、逆に生活目線では何のおもしろいこともない、と。あるいは外国人観光客の安宿体験と、販路上生活者の安宿体験の場合などどうでしょう。観光客にとっては異国の地でカプセルホテルやネットカフェ、個室ビデオ店に寝泊まりしてみるのも楽しみの一つとなりえます。しかし、ネットカフェ難民などと呼ばれる人々にとっては全く逆ですよね。

 リニア(と騒音)もまた、同じようなものなのだと思います。行楽目線からすると、リニアがどんなに轟音を立てようとも、それは興奮を駆り立てるものでしかない、むしろうるさければうるさいほど盛り上がるくらいではないでしょうか。ところが生活者目線からすれば話は全く異なる、住居の近くをリニアが通る、防音壁の隙間――敢えて作られるとは思いませんが――にでもなっているとあらば、それこそ米軍基地が近所に引っ越してきたようなもの、たまったものではないはずです。今の時点ではリニアが「見えない」ことを惜しむ人の声ばかりが目立って伝えられていますけれど、どうなのでしょうか。住民もまた、「実際に来るまでは」生活者目線を忘れ、行楽者目線で物事を考えてしまうところもあるのではないかという気がします。リニアに限らずオリンピックなんかでも似たようなところはあるように思いますが、どうなることやら。

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