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ソーシャルギフトからマーケティングサービスへとピボットした「Boomerang」

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当ブログでは、年間1000億ドル(約10兆円)規模を誇る、米国のギフトカード市場に果敢に進出を挑んでいる「Giftly」をご紹介した。

2012年8月に設立された「Boomerang」も、この巨大市場に目をつけたスタートアップの1つだ。ギフトカードを商品に、Facebookと連携させて「ソーシャルギフトサービス」を提供しようと考えたまではGiftlyと変わらない。

しかしわずか1年でBoomerangはGiftlyとも当初の計画とも違うサービスへと変貌を遂げた。以下では、その変貌の軌跡を見ていこう。

生みの親はソーシャルメディアを活用した旅行プランニングサービス

Zach Smith(以下スミス)氏はBoomerang設立の前にソーシャルメディアを活用した旅行プランニングサイト「Gtrot」を2009年から運営していた。

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ユーザーがGtrotのサイトにFacebookのアカウントでログインし、旅行先と出発の時期を指定して投稿すると、Gtrotはその旅行先にあるお勧めの観光スポットを表示し、そのユーザーとFacebookで交流のある人たちの中で過去にそれらのスポットを訪れたことのある人や現在その付近に住んでいる人は誰かを教える。

ユーザーの旅行プランが友人の間でシェアされて耳寄りな情報が寄せられ、ユニークで充実した旅行プランが出来上がるというのがGtrotの売りだった。

2012年にGtrotのユーザー数は1万5000人にまで達していたのだが、このサービスを収益につなげる目処がなかなかつかなかった。

突破口が見えたのは、サイトを訪れるユーザーの半数近くがシカゴの情報を求めていることに気づいたときだ。

Gtrotはシカゴで運営していたため、当然、スタッフはシカゴに詳しい。シカゴについて質問があれば、即座に回答する。そこから「シカゴの最新情報なら、Gtrot」という認識がユーザーの間に広まっていたのだ。また、訪問者はシカゴへの旅行者でなく、週末にどこで遊ぶかを決める目的のシカゴ在住者も多かった。

そこで、スミス氏らは年に数回あるかないかの観光旅行をテーマにするよりも、近場でどんな楽しい体験ができるかを紹介する「地域発見」サービスの方が収益につながると考え、方向を転換することに決めた

この転換により、提携を結んだレストランや娯楽施設の情報を発信して、ユーザーをそれらのビジネスに客として送り込むことで、コミッションを得るというビジネスモデルが誕生し、収益が上がるようになった。

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まもなくスミス氏は「ドリンク1杯無料」など、ささやかな特典をつけ、その特典をソーシャルメディアでユーザーがシェアできるようにすることで、紹介したレストランや施設を訪れるユーザーの数が激増することを発見する。

「ユーザーのこの習性と米国人が活発に利用しているギフトカードを組み合わせれば、もっと大きなビジネスになる」

この思いつきから事業内容を「地域発見サービス」から「ローカル企業のギフトカード販売業」へ再転換しようと計画

ベンチャーキャピタルのLightbankにこの新しい事業プランを売り込んで、100万ドル(約1億円)の投資を引き出すことに成功し、誕生したのがBoomerangなのである。

事前アンケートの結果から導き出した「必勝」の事業プラン

Boomerangの開設に先駆け、スミス氏らはギフトカード利用者を対象に何度もアンケート調査を実施した。

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(2012年8月、先進的なスタートアップを毎月紹介するTechnori Pitchで演壇に立つスミス氏)

A. 身近にある地元の店で販売されている商品
B. 全米で展開する有名チェーン店のギフトカード

の2つの選択肢を提示し、「このどちらを贈ることがより好ましいと思うか?」を問う質問では、約70%がAを選んだ。

Boomerangでは、このアンケート結果から、三段論法で次のような結論を導き出した。

大前提:1000億ドル(10兆円前後)の市場規模が示すように、ギフトカードは需要のある商品だ。

小前提:消費者は全米チェーンのギフトカードよりも、ローカル規模の店の商品を贈ることを好んでいる。

結論:よって、これまで存在していなかったローカル企業のギフトカードを簡単に贈れるようにしたオンラインプラットフォームを立ち上げれば成功確実である。

「ローカル企業にフォーカスしたソーシャルギフトサービス」の大誤算

そこでBoomerangはまず、地元シカゴで人気のあるレストラン、バー、その他の施設の経営者に、彼らのビジネスのデジタルギフトカードを作って、同サイトで販売するようアプローチをかけた。交渉に応じてパートナーとなってくれた相手の多くは客寄せのために、小額商品のギフトカードを無料でユーザーに提供することに同意してくれた。

Boomerangのロンチ時には、スカイダンビングクラブやフィットネスクラブ、ボーリング場など、バラエティに富む約40種のギフトカードがサイトに並んだ。

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Gtrotのときと同様、Boomerangでも、サービスを利用するユーザーはFacebookのアカウントでログインする。

ユーザーがログインすると、BoomerangはそのユーザーのFacebookから情報を読み取って、誕生日や結婚、卒業などイベントの近い友人が誰かを教え、その友人に贈るのにふさわしいギフトカードを選んで勧める。

たとえば、シカゴ在住で、食べるのが趣味のマイケル君の誕生日当日には、出前注文サイト「Seamless」、ドーナッツ店「Glazed & Infused」、レストラン「Slurping Turtle」という、いずれもシカゴで営業している企業の無料のギフトカードをマイケル君に送るように彼の友人に提案する。

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さらに、ブルースの生演奏を聴きながら、食事とお酒を楽しめるバーの有料ギフトカードをレコメンド。

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これなら巷にあふれているAmazonやStarbucksといったビッグネームのギフトカードを贈るよりも、ずっとパーソナルで、記憶に残るギフト体験になる。

ローカル企業は、ギフトカードという新しい収益の道が築かれて潤う。
Boomerangはギフトカードが売れるごとに、ローカル企業からコミッションを受け取ることで潤う。

「観客を喜ばせつつ、ローカル企業とともに成長していけるビジネスモデルを完成させた」とスミス氏は満足したが、その満足は長く続かなかった。

「僕たちは小額のギフトカードを無料で提供し、より高額のギフトカードを販売することで、収益をすぐに伸ばせると踏んでいた。ところがユーザーはほんの小額のギフトカードでも無料で提供すると大喜びしてくれたが、身銭を切ってギフトカードを購入することにはほとんど関心を示さなかった」とスミス氏は当時を振り返る。

また、全米で名前の通ったブランドやECサイトのギフトカードをラインナップに加えると、事前調査の結果からの予想とは裏腹に、ローカル企業のギフトカードとは比較にならない勢いで売れた。そこで当初のコンセプトとは逆に、ローカル規模の企業よりも、有名ブランドを提携相手として求めざるを得なくなった。

売上が伸びない中、Facebookが2012年秋、ソーシャルギフトサービスに参入してきた。ここに至って、同じ方法を続けていたのでは絶対に勝ち目はないとスミス氏は確信する。

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