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MIT・石井裕教授が語る【後編】グローバル時代に求められるポイント

前回、居心地の良い日本から飛び出して、若いうちから海外で「他流試合」を行うことが大事と語ってくださった石井裕教授に、グローバル時代に求められるポイントを伺いました。

1+1=2を疑う「視座」を持とう!

僕はよく、日本の現状を葛飾北斎の浮世絵『富獄三十六景』のひとつ「神奈川沖浪裏」にたとえます。この絵には、奥に微動だしない富士山が置かれ、手前に大波と、それにのまれている舟が描かれています。

短期的成果しか考えられない企業や人は、次々にやってくる波にもてあそばれている舟と、舟にへばりついている船乗りのようなものです。変化の時代を乗り越えるためには、富士山のようにしっかりとした「視座」を持つべきなのに、です。

視座を持つには、「why(なぜ、どうして)?」という本質的な問いかけができなければなりません。これをどんどん突き詰めていくと、「自分は何のために存在しているのか?」という、哲学的な思考に到達するわけですが、日本でこのような問いかけをするチャンスは、あまりないと言ってよいでしょう。むしろ、独創性はスポイルされ、「1+1=2」と答えられればじゅうぶんです。どうして「1+1=100」にすることを考えないのでしょう。

──「1+1=2」を疑い、100にするために自分は何をすべきか──
本質的な問いかけとはこういうことから始まります。しかし日本にいると、組織優先・責任回避・前例踏襲などといった、「日本の常識」から逃れられません。これらが「世界の非常識」であることは、皆さんもご存じの通りです。僕が唱える「視座」を持つためには、やはり世界に飛び出し「他流試合」にチャレンジすることが効果的です。

良い「師」と出会い、超えて行こう!

「他流試合」に臨むなら、何かしらの目標を設定したいものです。僕は、良い「師」を探し、出会うことが大切だと考えます。この先生のもとで勉強したい、この経営者のもとで働いてみたい……。そう思える「師」を探しましょう。

そして、超え甲斐のある「師」を見つけてください。日本の常識では、師を超えるというのは非常識ですが、外国ではそんなことはありません。僕も、映画『マイノリティ・レポート』の科学アドバイザーを務めたジョン・アンダーコフラー博士に代表されるように、既に何人もの教え子に超えられています。そして、それは僕の誇りです。

徹底議論と建設的批判は当たり前!

たとえばメディアラボでは、議論が日常茶飯事です。議論は必ずしも肯定的なことばかりではなく、徹底的に批判されることもあります。批判されると、得てして日本人は自分の人格が全否定されたと捉えがちですが、それはやめてください。健全な議論や批判ができなくなります。

グローバル社会における議論や批判は、考えやアイデアの評価・改良の場です。一方で、意見や批判を求められた際に《That’s interesting, thank you.(興味深いですね、ありがとうございます)》と適当にやり過ごすことも許されないことを覚えておきましょう。

若者たちに望むこと

未来を担う若者たちには、世界をたくさん知り、グローバルな人間に育ってほしいと願っています。

そのためには、自分を知り、相手を知り、その多様性に感謝し、相手を尊敬する心を培ってもらいたいです。そして、その国の価値観や文化、ことばを一生懸命学び、さまざまな違いを理解したうえで、自分の思いや考えをその国の価値観に沿ったアイデアで「翻訳できる力」を育んでほしいですね。

画像を見る 石井裕教授 プロフィール
1956(昭和31)年生まれ。北海道大学大学院情報工学専攻修士課程修了後、電電公社(現NTT)に入社。NTTヒューマンインターフェース研究所での研究が注目され、MITの教授に就任。2008(平成20)年、MITメディアラボの副所長に就任。
(撮影:Junichi Otsuki)

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