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柏市の事例報告および地域協働・地域ブランディングの可能性について

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被災地の復興が思うように進展しないなか、どうすれば、3年目を「復興元年」にできるのか。2013年3月31日に開かれた、復興アリーナ(WEBRONZA×SYNODOS)主催シンポジウム「『安全・安心』を超える〈価値〉とはなにか――危機を転機に変えるために――」本記事は本シンポジウムから、筑波大学大学院人文社会系准教授であり、柏市で展開された「安全・安心の柏産柏消」円卓会議に携わってきた五十嵐泰正氏による基調講演「柏市の事例報告および地域協働・地域ブランディングの可能性について」をお送りする。必ずしも従被災地散見とは同じ状況と言えないが、ホットスポットとして話題となり苦しんできた柏市が、震災以降どのような取り組みを行ってきたのか。そこからわれわれはなにを学ぶことができるのか。分断を超えた真の復興を目指す、その道筋を探るために。(構成/小嶋直人)

地域の問題にどのように向き合っていくべきか

本日は、わたしが行ってきた柏市――放射能のホットスポットとして大きく話題になった街です――での取り組みと、その経験が福島に示唆できることを中心にお話したいと思います。

わたしの専門は社会学です。放射能や農業、リスクコミュニケーションの専門家ではありませんから、専門的なお話はできません。しかし町づくり活動の延長線として柏市のホットスポット問題に取り組んできたという実践的な立場から、地域の問題にどのように向き合っていくべきか、そしてなにができて、なにができなかったのかをお伝えできれば幸いです。

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食品における相互不信と社会的合意形成

最初に基本的なことを確認しますと、低線量被ばくの影響については、標準的には「線形モデル」が採用されており、どこからが明確に危険になるのかという閾(しきい)をはっきりとはいえません。

ということは、いったいどこに基準値を設定すべきか、という問題が生じることになります。そしてどのように数値を設定しても、一定程度の放射線を防護することによるメリットとデメリットがある。そのなかで、メリットとデメリットを比較し、合理的に社会的な合意形成をしていかなくてはいけない。その上で、個人がその社会的に合意された基準値をどのように考え、どのように行動するかは、基本的に自由でないといけないでしょう。

さて、本日のテーマである食品については、基準値や測定メソッドの設定如何によって、防護のメリットを受ける消費者と、防護することによってコストがかかったり作付け中止を余儀なくされたりする生産者の利害が対立してしまう構造にある。そういう難しい状況でいかに合意形成をしていくかが重要になります。

柏市にも、ホットスポットで農業生産を続けていこうとする生産者を非難する消費者や、生産者に対して同情している人でも、「農家は補償があればいいんじゃないの」と安易に言ってくる人もいました。しかし簡単に補償と言っても、柏市では少量多品種の生産を、農協を通さず直売している農家が多く、補償を得るために、一種目ずつコストをかけて書類を作成しなくてはならず、決して容易であるとはいえません。

一方で、震災直後の時期から展開されていた「食べて応援」キャンペーンは、非科学的で押しつけがましいものと受け止められ、かえってリスク管理を余分にやっておけば問題ないという発想から生まれてくる「風評被害」を生み出す一因になっていました。当時、生産者と消費者の不信感は非常に強く、この壁を乗り越えるためには「安全」を確認するだけでは事足りない状況にありました。

そこでわたしたちは、柏市の生産者、消費者、飲食業者、流通業者の四者が集まり話し合いをする円卓会議をはじめました。先ほどお話したように、基準値や測定メソッドをどのように設定してもメリットとデメリットがあり、簡単に決められるものではありません。そのなかで違う立場の人間が集まり、なんとか折り合いを付けようと、能動的にこの問題に立ち向かっていこうと考えたわけです。

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