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「原発ゼロ」へ 小泉元首相の問いかけ

 大飯原発が運転を停止して、1年2カ月ぶりに「原発ゼロ」となった日本列島を、台風18号がすさまじい勢いで縦断していきました。

「一生に一度程度、経験する気象災害」を念頭につくられたばかりの「特別警報」が京都府・滋賀県・福井県に出されました。しかし、大型の台風の襲来とセットになってしまうようでは、「一生に一度」が怪しくなります。

 台風18号は原子力施設にも影響を与えました。汚染水の問題が深刻化している福島第1原発では豪雨で構内に溜まった水を外に放出しています。また、休止中の高速増殖炉「もんじゅ」は、台風による土砂崩れによって回線が破断したと見られる事故で、原発の状態を把握する国の「緊急時対策支援システム(ERSS)」へのデータ送信が16日未明に停止しました。

 さて、先週まで3週にわたってレポートを書いたデンマークでは、風力発電や地域熱供給等のエネルギー改革に取り組み、2020年までに電力消費量の半分を風力でまかなうとしています。明確なビジョンを打ち立て、エネルギー分野で新しい産業が生まれたことにより、投資も呼び込んでいます。チェルノブイリ原発事故の直前に「脱原発」を決めた後、1度も逆戻りすることはなかったといいます。

 ひるがえって、福島第1原発事故を経験した日本では、民主党政権がなんとかこぎつけた「将来の原発ゼロ」をあっという間に白紙に戻し、「原発を基幹電源とする」エネルギー戦略に回帰しようとしています。

 ところが、「原発再稼働」と「原発輸出」が車の両輪のように動き出そうとする寸前のところで、「汚染水問題」が浮上してきました。そもそも事故は収束しておらず、汚染水も「コントロールされている」という状況とはとても言えません。

 とはいえ、2020年の東京オリンピック招致が決定したいま、日本政府がどれだけすみやかに対策に取り組むのかを世界中が注視しています。同時に、原発事故によって避難を余儀なくされている16万人ともいわれる人々に誠意ある生活改善策を示すことも求められています。

 振り返ると、東日本大震災は「一生に一度程度、経験するかどうか」以上の激甚災害でした。しかし、あれから日本列島は地震活動の活発期に入ったと言われています。たとえ原発が停止してしていても、「使用済み核燃料プール」に残されたたくさんの燃料棒など、絶対の制御が必要です。原発が稼働していなくても、私たちは常に、取り返しのつかないリスクを抱えているのです。

 この夏、脱原発のドイツと原発推進のフィンランドを視察した小泉純一郎・元首相はこのように語っています。

「いま、オレが現役に戻って、態度未定の国会議員を説得するとしてね、『原発は必要』という線でまとめる自信はない。今回いろいろ見て、『原発ゼロ』という方向なら説得できると思ったな。ますますその自信が深まったよ」

 小泉元首相自身、原発推進政策を進め、東日本大震災と原発事故が起きる前は「脱原発」を真剣に検討したことはなかったと思います。ただし、足元の事故と世界の動向を見すえたうえで、発想を転換するのは今しかないと考えるに至ったのだとすれば、評価できる発言だと思います。毎日新聞のコラムでは、こんなやりとりも紹介されています。

――今すぐゼロは暴論という声が優勢ですが。
「逆だよ、逆。今ゼロという方針を打ち出さないと将来ゼロにするのは難しいんだよ。野党はみんな原発ゼロに賛成だ。総理が決断すりゃできる。あとは知恵者が知恵を出す」

 知恵者は財界の主流や原子力ムラにはいないが、在野にはいるのです。

 国がエネルギー戦略を転換する「原発ゼロ」方針をはっきりと示すことで、原子力産業に替わるエネルギー転換や熱利用の発展・成長の機会も出てくるでしょう。

 自然エネルギーへの転換は経済を縮小させる、と決めつけるのは乱暴です。時代にかなった活用の方法を生みだすことで、あらたな成長への起爆剤となりうるのです。この秋、安倍内閣の根本匠復興大臣、甘利明経済再生大臣、新藤義孝総務大臣も相次いで視察に訪れたデンマーク。その自然エネルギー改革が証明しています。

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