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東京エレクトロンとアプライド・マテリアルズの合併は、喩えればロックフェラー帝国の出現に匹敵する

東京エレクトロン(8035)がアプライド・マテリアルズ(AMAT)と株式交換により合併します。

東京エレクトロン株主は、保有する株式1株につき、新会社の株式3.25を、アプライド・マテリアルズの株主は保有する株式1株につき、新会社の株式1を、それぞれ受け取ります。新会社はオランダ籍となり、東証、NYSEにデュアル・リスティング(=同時上場)されたグローバル企業となります。

この合併のニュースを好感し、アプライド・マテリアルズ株はプリマーケットで+8.5%ほど上昇(17.35ドル)しています。プリマーケットの株価は変わりやすいので、信頼することはできませんが、一応、プリマーケットの値段を信用して明日朝の東京エレクトロンの理論株価を合併条件から計算すると:

$17.37 × 3.25 =56.4525
56.4525 × 98.66(ドル/円) =5569.60



つまり5569.6円となります。昨日の東京エレクトロンの引値は4850円でした。つまり明日は+14.8%の株価上昇が期待できるわけです。

合併後の新会社は時価総額が300億ドルにも迫る、大企業になります。なお、売上ベース(AMATが72億ドル、東京エレクトロンが54億ドル)は兎も角、時価総額ベースでは「対等」というのは少し誇張のような気がします。

有り体に言えば、半導体製造装置業界ナンバーワンのアプライド・マテリアルズが、ナンバー・スリーの東京エレクトロンを呑み込むわけです。




ただ、両社が同じ数の役員を新会社に送り込むとしていることからも明らかなように、アプライドと東京エレクトロンの双方とも、単なるリップサービスではなく、本当に対等合併をしようという熱意は伝わってきます。新会社の会長には東哲郎氏が、CEOにはゲイリー・ディッカーソンが就任します。

なぜ対等合併という理解で良いのでしょうか?

まず両社の提供するツールは、オーバーラップが少ないという点が挙げられます。

一例として東京エレクトロンはプラズマエッチング装置Tactrasに代表されるダイレクトリック・エッチングに優れた製品を持つ一方、アプライド・マテリアルズはコンダクター・エッチング装置に優れた製品を持つ…という具合です。

次に、この合併のきっかけのひとつである市場の変化も、対等合併が正しいやり方だという議論の補強材料を提供していると思います。すなわち、コンピュータの在り方が近年、変化しており、それに合わせて半導体製造装置の世界も変わって行かなければいけないということです。

具体的には、スマホの普及で、消費電力が少なく、小さいフォーム・ファクタで、なおかついろいろなフィーチャー(機能)に対応できるチップが要求されています。

そのことは半導体製造装置への要求度も高くなる事を意味します。精密度が高く、デザインしやすく、歩留まりが高いツールが要求されるのです。

また加工工程では、工程上の待ち時間や、真空装置の中断など異物混入の原因になる段取り上のムダが徹底的に省かれる必要があります

これらの事が何を意味するかと言えば、これまで半導体製造装置メーカーが、自分の得意な、個々の局面でのツール(=それをポイント・ツールといいます)で勝負するのではなく、プロセス工程全部を、シームレスに提供できる総合力が重要になるのです

東京エレクトロンとアプライド・マテリアルズが合併してできる新会社は、石油産業に喩えれば、ロックフェラー帝国のスタンダード石油みたいな存在になると思います。つまり製造工程のかなりの部分が東京エレクトロンとアプライド・マテリアルズの連合におさえられてしまって、他社が入りこめなくなるわけです。

もちろん、オランダのASMLのような、優れたポイント・ツールを持っている今日は今後も生き残ります。でも中途半端な企業は、今後、どんどん淘汰されてしまうでしょう。その意味では、今日の合併発表を聞いて、暗い気持ちになっているライバル経営者も多い筈です。

この合併は、新会社にとって初年度からアクリーティブ、つまりEPSが増える要因となります。また向こう3年間で5億ドルのシナジーが発生します。(それは金額から考えて、一部、オーバーラップする部門で、首切りがあるということではないでしょうか?)

新会社は自社株の買い戻しを積極的に出来ますし、何よりもM&Aに際して新しい負債を背負い込むことが無いのは嬉しいです。

新会社のターゲット(2017年)は:

売上規模:182億ドル
営業利益:46億ドル
営業マージン:25%
EPS(新株):$2.40



というものです。

因みに現在の東京エレクトロンは:

売上高:54億ドル
グロス利益:17億ドル
グロス・マージン:31.1%
営業費用:17億ドル
営業費用比率:31.5%
営業利益:0
営業マージン:-0.5%
純利益:0



です。

一方アプライド・マテリアルズは:

売上高;72億ドル
グロス利益:30億ドル
グロス・マージン:41.3%
営業費用: 21億ドル
営業費用比率:29.8%
営業利益:8億ドル
営業マージン:11.5%
純利益:6億ドル



です。つまり東京エレクトロンはアプライド・マテリアルズに比べると営業費用比率が高く、ムダが多いわけです。

(文責:広瀬隆雄、Editor in Chief、Market Hack

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