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雇用特区でブラック企業が生きていけないわけ

政府が解雇や労働時間管理を大幅に規制緩和する雇用特区の具体的な検討に入ったとのこと。設立5年以内とか外国人従業員比率とかよくわからない基準があるのが引っかかるが、とりあえず地域限定といえど労働市場の流動化に踏み切るのは良いことだ。政府の進めるデフレ脱却のためにも、労働市場流動化は避けては通れない道だからだ。

とはいえ、朝日新聞東京新聞のように
「そうそうたるブラック企業ばかりが集まるブラック特区になるのではないか」
と心配する人達も多いようなので、よくある誤解を解いておこう。

結論から言えば、特区にはむしろ優良企業の多くが集まり、逆に特区以外のブラックぶりが際立つというのが筆者の意見だ。

仮に「従業員を過労死寸前まで、それも手当無しでサービス残業させてやろう」
と考えている経営者がいたとする。彼は特区に新しく会社を作り、雇い入れた従業員に毎晩遅くまで働かそうとするだろうが、従業員のほとんどは一週間持たずに逃げ出すだろう。なぜなら、特区は流動性が高いから。

他社もいっぱい人を採っている中(しかも終身雇用じゃないから採用のハードルは低い)つらく安月給な職場で我慢するのはマゾだけだ。

「徹夜でもなんでもして朝までにこれだけやっとけよ!」
「……じゃ辞めます」
「えっ」

会社が本気で従業員を過労死寸前まで働かせたいのなら、相当高い年俸を用意しないといけない。逆に安月給にしたいなら、とっても楽ちんな作業か、実労働時間をうんと短くするしかない。これは別に珍しいことではない。
売り手と買い手の双方に選択肢のある普通の市場であれば、ごく当たり前の話である。

「言うこと聞かない奴はがんがんクビにして、絶対君主として君臨してやろう」
と考えているブラック経営者も、すぐに、クビにするのと同じくらいの割合で向こうから離職していくこと、なにより特区では“クビ”の価値が軽いので、それ自体に大した意味が無いという現実に気付くだろう。

「おいお前!クビにしてやるぞ!」
「ああ、そうですか。じゃあ規定通り半年分の基本給を退職金に上乗せして払ってね♪」
「えっ」

やがてブラック経営者たちは、特区ではブラックの成り立つ余地が極めて少ないという事実に気付くはずだ。ブラックとは、“正社員”という曖昧な身分制度に咲くあだ花であり、契約というガラス張りのようなカルチャーとはきわめて相性が悪いためだ。

かくして、ブラック企業は特区以外に帰っていくことだろう。そして
「せっかく正社員になったのに、今辞めたら元も子もないよ」とか
「若いころに一生懸命頑張れば、将来的にポストがもらえ、65歳まで職も保証されるかもよ」とか、
巧みに正社員制度に寄生しつつ、従来通りのブラックぶりを発揮するはずだ。

そしてなんとかユニオンとか共産党あたりと、終わりのないイタチごっこを続けていくに違いない。

そういう諸々の矛盾が明らかになるだけでも、雇用特区はやってみる価値が十分にある政策だというのが筆者の意見だ。


※もちろん、特区として流動性のメリットを享受するためには、それなりの規模で特区認定しないと意味がない。できるだけ制限を低くし、思い切った規模にするべきだろう。

※もちろん、タコ部屋に監禁したり社員を木刀で殴るような会社もあるかもしれない。でもそういうのはもはやブラック云々とは関係ない、普遍的な問題である。

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