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米海兵隊と自衛隊はともに戦う〔1〕―ケイリブ・イームス(米海兵隊大尉)

◇「トモダチ作戦」にも参加した現役隊員への独占取材を敢行。オスプレイ配備、普天間基地移設問題などに揺れる海兵隊の実像に迫る。([取材・構成] タカ大丸(ポリグロット〔多言語話者〕)

私が操縦するオスプレイは、大きく揺れつつ名もなき沖縄中部の野球場に降り立った――。といっても、これはシミュレーターの話である。

7月下旬、私タカ大丸と担当編集者の野村高文氏は那覇空港に降り立った。私にとっては1月に某テレビ局の通訳として同行して以来2度目の沖縄で、目的地は渦中の普天間基地だ。「未亡人製造機」という悪評が付きまとう垂直離着陸輸送機オスプレイに、現場の隊員はどんな思いで乗っているのか? 普天間から辺野古の移転は日本と米軍の双方にどのようなメリットとデメリットをもたらすのか? そんな本音を現役海兵隊大尉に直撃する機会に恵まれた。

 まず通されたのは、基地内にあるオスプレイのシミュレーターである。現役軍人が訓練用に使うもので、沖縄の地形や建物の高さまで精巧に再現され、操縦に不具合が発生した時の揺れもじつに正確で、操縦席が激しく揺れる。不謹慎を承知でいうが、「究極の男の子のおもちゃ」である。実際にこの訓練では、「ヘリコプターとして離着陸し、飛行機として飛ぶ」オスプレイの特性を生かし、「いざというときに球場に着陸する」というシミュレーションや、住宅地にある普天間の性格上自由に行なえない「夜間飛行」の訓練も行なわれる。

その後、普天間のすぐ隣にあるキャンプ・フォスターの総司令部にあるオフィスに通され、イームス大尉のインタビューを開始した。

海兵隊は「ならず者集団」ではなく「カエル」

――最初に、あなた自身のことから伺いたいと思います。沖縄に配属される前は、どちらにいらっしゃったのですか?

イームス:私は海兵隊に加わって18年目ですが、その間に全世界のさまざまな基地を経験しました。以前はジョージア州の基地に所属していましたが、2010年に沖縄の第31海兵隊遠征部隊(MEU)への赴任命令を受け、現在に至ります。いまでは沖縄が大好きになりました。

――18年前に入隊を志したときには、陸海空軍、そして沿岸警備隊という選択肢もあったはずですが、なぜほかの4つではなく海兵隊を選んだのですか?

イームス:私が海兵隊を選んだのは、自分の可能性を限界まで突き詰めてみたかったからです。人生のなかで何か意義があることをやり遂げようと思い、職務に対してもっとも忠実で、軍のなかで一番のエリートとみなされる海兵隊をめざしたのです。

――そもそも、海兵隊と海軍を混同している日本人も多いと思いますが、両者の違いを教えていただけますか。

イームス:海軍の役割は軍艦で海兵隊員を運ぶこと、海兵隊はその艦船から出発して海岸線に上陸することを任務としています。ほとんどの場合、海軍は海上に残って海兵隊の沿岸上陸を支援しています。海軍にも一部、上陸に特化した特別な部隊がありますが、あくまで主役は海兵隊です。カエルのように水中からやってきて、陸に上がるのです。私たち海兵隊は、海軍が大好きですよ。われわれの足となり、乗り物を提供してくれますからね。(笑)

――ノルマンディー上陸作戦のようですね。

イームス:いい例ですね。海兵隊は国家の911番(警察に通報する110番のようなもの)であり、有事に際して迅速対応できるように構築されています。この「迅速対応」には、人道支援も含まれます。好例が東日本大震災後の「トモダチ作戦」です。ただし、私たちは長期作戦には向いていません。アフガニスタンではすでに10年以上も作戦に従事していますが、あくまでも例外です。海兵隊は長期間、砂漠地帯に駐屯するようにはできていないのです。

――まして、アフガニスタンは山岳地帯ですからね。

イームス:そのとおりです。山岳地帯での作戦も可能ですが、あくまで専門は沿岸上陸です。

――日本人のなかには海兵隊を「ならず者の集まり」と誤解している人もいると思います。たとえば映画『ジャーヘッド 』(2005年公開)では主人公が「オレには2つの道しか残されていなかった。刑務所か、海兵隊か」という場面があります。実際、海兵隊にはどのような人が入ってくるのでしょうか?

イームス:海兵隊にエントリーするには、まず高卒の資格と一定のGPA(平均評定値)が必要です。そのうえで入隊試験に合格するためには、肉体的・精神的な健康さも求められる。海兵隊の入隊基準は年々厳しくなっており、前科・犯罪歴がある場合はその時点で入隊不可です。また、入隊後の昇進にも学士号・修士号が関係してきます。海兵隊は皆さんが思っている以上に「学歴社会」なのです。私にいわせれば、『ジャーヘッド』の主人公はいわゆる「腐ったリンゴ」、出来の悪い海兵隊員ですよ。

――一方で、アメリカの人気作家が書いた『トム・クランシーの海兵隊(東洋書林) 』では、海兵隊は肯定的に描かれています。本書では、CNNが海兵隊にとって重要な情報源であるとされているのですが、実際のところはいかがですか?

イームス:そのとおりです。海兵隊はつねに最新のニュースを注視しており、世界の政治の動きなどに敏感に反応しています。だからこそ、私たちが求めるのはきちんと学業を修め、さらに成長し続けようとする人物なのです。

わが子をオスプレイに乗せたことも

――今年7月にはMV-22オスプレイが8機、普天間基地に追加配備されました。しかし現在も多くの日本人がオスプレイの安全性に懸念を抱いており、一部では「未亡人製造機」という不名誉なあだ名もあるほどです。これに対してはどうお考えですか?

イームス:まず、いまの問いのなかには正しくない部分があります。現にここ沖縄には、数百人の会員からなる「オスプレイファンクラブ」があり、フェイスブックにも数千人の支持者が集まっています。彼らは「災害時に迅速に動ける」「以前より多くの支援物資を運べ、長距離を飛行できる」といったオスプレイの利点を理解してくれていると思います。

1つの実例を挙げましょう。普天間基地では毎年6月、敷地内を一般公開するフェアを行なっており、今年は7万人の来場がありました。彼らが真っ先に見たがったものは何か? オスプレイです。ニュースで話題になっているものの実態はどうなのか、興味津々の様子でした。来場者に感想を聞いてみたところ、多くが「最新型のオスプレイは能力が高く、配備されてよかった」といっていました。「まだよくわからないので、いろいろ聞きたい」と、私や現役のパイロットに、安全性やその他の質問を熱心にしていた人もいました。

こうした声がすべての日本人を代表しているかどうかはわかりませんが、私が実際に見聞きした範囲では事実です。われわれもホームページやフェイスブック、ツイッターなどを活用して情報公開に努めており、地元メディアにも「正しい情報」を伝えることを期待しています。

――たとえば『琉球新報』や『沖縄タイムス』を「左翼的」と評する向きもあります。これらの地元メディアは信頼に足るものなのでしょうか?

イームス:正直にいって、彼らが本来伝えるべきことを伝えていない、と思うことはあります。それでも、私たちは可能なかぎり地元メディアと協調の姿勢を続け、オスプレイの安全性を訴えていきます。パイロットやクルーの大部分は妻子持ちで、私自身、何度もオスプレイに搭乗し、わが子を乗せたこともあります。本当にオスプレイが危険なら、妻はけっして私をオスプレイに乗せないでしょう。私としても、そう簡単に妻を未亡人にするわけにはいきませんよ。(笑)

オスプレイは全米のあらゆる場所を飛行し、ワシントンDCやニューヨークなど人口密集地域の上空も飛んでいますが、何の問題もありません。沖縄の皆さんにはいつでも実物をお見せしますので、ぜひご自身で安全かどうかを判断していただきたい。そのために必要な情報もすべて提供します。オスプレイ配備を懸念する声が強いのも、情報が伝わっていない側面があるからだと思いますので。

――もう1つ、米軍と沖縄の関係で避けて通れない話があります。ごく一部とはいえ、残念ながら海兵隊の「腐ったリンゴ」が沖縄の女性に暴行被害をもたらし、米軍への反感をもたらしているのも事実です。海兵隊はこの問題をどう考え、対処しているのでしょう?

イームス:私たちは、地元のコミュニティーに対して細心の注意を払っています。実際のところ、統計を見ると、海兵隊を含む駐留米軍の犯罪率は地元沖縄の住民の半分以下です。米軍に所属する男女の99.9%は素行に何の問題もなく、私と同じくバーベキューやコミュニティー活動といった普通の近所付き合いをしています。昼夜、街に出てもトラブルを起こしたりしません。

5万人の医師を集めれば、1人くらいはよからぬことをする輩もいるかもしれない。5万人の教師でも同じことがいえるでしょう。海兵隊もしかりです。ただし、私たちは法律を犯した疑いのある者を厳しく追及し、有罪判決が出た場合、軍規に従って処罰します。そして軍隊の刑罰は、日本のそれよりもはるかに重いものです。

那覇空港が津波で潰れても、高台の普天間は使える

――『正論』(2013年6月号ほか)では、一部の反米活動家がゲート前に居座り、米兵の車に怒鳴り散らしたり蹴りを入れる、道路に寝そべるなどの行動を取っていると報道されていますが、これは本当でしょうか?

イームス:私自身も目撃しています。女性兵士が顔に砂を投げつけられ、目に入って負傷したという事件もあります。ただし、そういう活動家はごく少数で、6人から10人程度のものです。どう考えても、彼らが沖縄の大多数を代表する存在とは思えません。私が知る沖縄の地元民は、穏やかで平和的な人たちばかりで、私自身も基地の外で暮らし、近所の人たちとお互いを夕食に招いて友好的な関係を築いています。ありがたいことに、活動家が散らかしたゴミを週末に片付けにきてくれるグループもあるぐらいです。

――それは、地元の人たちですか?

イームス:そう、善意の人たちが毎週末、掃除にきてくれるのです。私が「なぜこんなことをしてくれるのですか」と聞いたところ、「あの活動家連中が地元の代表と思ってほしくない。自分たちの住む土地は、清潔で平和な場所であってほしい」という。それを聞いて、思わず、涙が出そうになりました。私は沖縄の皆さんの良心を信じています。

――私自身は、オスプレイの安全性は心配していません。ただ、普天間飛行場そのものが住宅地に近く、その点では安全性には問題があると思っています。

イームス:普天間は安全な空港です。運用実績も十分にありますし、住宅地に囲まれている空港はほかにもあります。日本でも伊丹空港(大阪国際空港)や福岡空港は住宅地のなかにあり、米国でも、ロナルド・レーガン空港はワシントンDCのダウンタウン(繁華街)のそばにあります。もちろん、騒音などの問題があり「理想的な状況」とはいえないからこそ、米日両政府は普天間を辺野古に移転することで合意したのですが、かといって普天間が危険ということはありません。

もう1つ重要なのは、普天間飛行場は高台にあるということです。那覇空港は海抜0mの地点にあり、津波の際に仙台と同じく使用不能になる恐れがあります。そのとき普天間は理想的な発着位置にあるといえます。

――では、仮に辺野古に移転できたとしましょう。海上にヘリポートをつくることによって環境破壊につながることはありませんか? くしくもジャレド・ダイアモンドは『文明崩壊(草思社文庫)』 のなかで、環境破壊が文明崩壊の1つの要因だと指摘しています。

イームス:『文明崩壊』は私も大好きな本です。ただ、彼がいう環境破壊は主として50年以上前の乱開発が対象で、現代の空港建設、それも辺野古には当てはまらないと思います。

強調したいのは、辺野古のヘリポートは決して何もない場所につくるのではないということです。既存のキャンプ・シュワブを一部、海上に拡張するというかたちでつくられます。そのため、地元の皆さんは騒音や不安から解放され、私たちもより自由な運用ができるようになる。辺野古移転は双方にとってプラスになる案なのです。

――現時点で、日米同盟の「いまそこにある危機」は尖閣諸島です。現在、海兵隊は尖閣防衛のためにどのような訓練をしているのですか? 万が一、中国に占領された場合にはフォークランド紛争のような奪還のシナリオを用意しているのでしょうか。

イームス:それは政府レベルが決めることで、私の口から、具体的な地域の具体的な作戦をお話しすることはできません。ただ、これだけはいえます。Every Marine is ready(海兵隊員は皆、準備が整っている)。われわれは人道支援のみならず、あらゆる種類の紛争に対する準備も行なっています。これまで海兵隊は、上陸作戦で高い実績を挙げてきました。

 そこで大きな役割を果たすのがMV-22オスプレイで、老朽化したCH-46(タンデム・ローター式のヘリコプター)に比べ、速度は約2倍、積載量は約3倍、行動半径は約4倍となり、遠距離からの作戦遂行が可能になります。現在、あらゆる想定をもとに上陸作戦の訓練を重ねており、政府からの指令があれば、海兵隊はすぐに出動できます。普段から「準備万端」にしておくのがわれわれの任務なのです。

〔2〕につづく

プロフィール

■ケイリブ・イームス(Caleb D.Eames):米海兵隊大尉
1977年、米ニューヨーク州生まれ。95年、高校卒業後に海兵隊に入隊、キャンプ・ペルドルトン(カリフォルニア州)に配属される。その後、リベリア、コロンビア、ハワイ、イラクなど世界各地での勤務を経験。2010年4月より、在沖縄・第31海兵隊遠征部隊に配属。広報渉外担当官。妻と2人の息子がいる。

■タカ大丸(たか・だいまる)ポリグロット〔多言語話者〕
1979年、福岡県生まれ。ニューヨーク州立大学ポツダム校とテル・アヴィヴ大学で政治学を専攻。英語・スペイン語など数カ国語を駆使して国際的ビジネスを展開中。英語翻訳書に『アラジン・ファクター』(すばる舎)、スペイン語翻訳書に『モウリーニョのリーダー論』『モウリーニョ 成功の秘密』(ともに実業之日本社)がある。

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■Voice 2013年10月号
<総力特集>韓国を叱る
< 特集 >自衛隊の底力
◎読みどころ
韓国の暴走が止まりません。慰安婦像をソウルの日本大使館前に設置したり、なぜかアメリカでも反日活動を活発化させています。また、戦時徴用された韓国人らが、いまになって新日鐵住金を訴え、なぜか勝訴したりと、日本人は驚き呆れてしまいます。総力特集では「韓国を叱る」と題し、屋山太郎氏と室谷克実氏の対談をはじめ、黒田勝弘氏や三橋貴明氏など、韓国通の論客たちに昨今の隣国の動きを分析していただきました。 第二特集では、東日本大震災以後、特に国民の信頼度が上がった自衛隊の実力をさまざまな面から論じています。参議院議員の佐藤正久氏と元陸将の福山隆氏の対談や元航空幕僚長の田母神俊雄氏の論考、また現役米海兵隊大尉へのインタビューも読み応え十分です。

さらに、巻頭ではアベノミクスへのメッセージとして、作家の幸田真音氏が「高橋是清に学ぶ命懸けの出口戦略」を紹介し、日本経済の今後の課題を端的に示しています。
今月号より、直木賞候補でもある人気作家の伊東潤氏による歴史小説「武士の碑(いしぶみ)」がスタートしています。各界を代表する論客の力作を揃えましたので、ぜひご一読お願いいたします。

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