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学生による授業評価の点数はどこまで上がったか?(クリッカーの効果とブレインルール)

 4月19日のブログで学生による授業評価の点数はどこまで上げられるか?(クリッカーの効果)と題するブログを書き、6月5日に僕の授業のことが朝日新聞紙上に掲載されたことをご報告して、その後、前期の授業が終了して最終的にどうなったのかを、読者の皆さんにまだご報告していませんでしたね。

 そんなことで、論文数についての議論をしている真っ最中なのですが、ちょっとここで、一息ついて教育の話をはさむことにします。題して「学生による授業評価の点数はどこまで上がったか?(クリッカーの効果とブレインルール)」です。

 前回のブログでは、クリッカーを授業で使ってみて学生たちから良い感触が得られたことをご報告しましたね。下の写真のタイトルには「授業改善の秘密兵器」などと書きましたが、中教審の答申にも出てくる言葉ですし、すでに一般化しつつあります。

 けっこう多くの大学で使われているようですが、僕の場合は昨年の後期から試行的にやってみて、今年の前期の理学療法2年生に対する「救急医学概論」の講義から本格的に使い始めました。1学期間を通して使ってみて、やはり、これはたいへん優れたツールだということを改めて確信しました。

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 使い方としては、講義中に学生さんにある程度説明をしたら、説明した内容に関する問題(通常は選択肢から正解を選んでいただく問題)を出し、クリッカーで回答していただきます。そうすると、瞬時に正解率がグラフに表示され、教師が今説明をした内容を学生が理解できたかどうか、ほぼリアルタイムで把握することができます。

 このようなクリッカーを使って僕が最初に思い知らされたのは、僕が説明をしたことが、驚くほど学生に伝わっていない、ということでした。教員のみなさん、授業で説明をしたら学生に伝わっている、あるいは学生が覚えていると思っていたら、大間違いですぞ!!

 さて、1学期間を通して、最終的な学生による僕に対する授業評価の点数はどうだったのでしょうか?

 前回のブログでは2009年の学生による授業評価の総合評価の点数が自分のとっているアンケートでは4.05、大学の実施しているアンケートでは4.19とご報告しましたね。今回2013年の点数は、自分のとっているアンケートでは4.70、大学の実施しているアンケートでは4.91と大きく改善しました。2012年の授業では、大学で実施したアンケートで4.32だったので、2009年と比べて少ししか改善していなかったのですが、この1年間で0.59突然跳ね上がったことになります。やはり、これはクリッカーの効果によるところが大きいと思われ、4.91というのは、ほぼ限界の点数かなと思います。

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  救急医療に関連して心電図が出てくるのですが、今までは、それを授業で1回説明をして済ませていました。そして、それを定期試験で確認する。多くの先生方は、このような形の講義をしておられると思います。クリッカーを使ってみたら、当初僕のした心電図の説明を、ほとんどの学生が理解していないことがわかりました。これではいけないと思い、次の授業時間で、再度説明をしてクリッカーで確認しました。そして、最終的に心電図についてのクリッカーの問題を14回繰り返すことになり、この間手を変え品を変えて説明をしたところ、正解率はでこぼこしながら徐々に上がっていき、最終的にはほぼ全員が正解するまでに至りました。

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  最終的な定期試験の平均点は、昨年のクラスが74.3点であったのに対し、今年のクラスは86.3点となり、同様のレベルと思われる問題に対して、10点以上の成績の改善が見られました。

 学生による授業評価の点数と、学習成果が相関するかどうかについては、アメリカのデータでは、ゆるい相関があるとするデータがあるようなのですが、日本ではあまり調べられていません。この学生による授業評価の点数が学習成果とゆるく相関をするということが、大学において学生による授業評価を実施する、もっとも大きな根拠になっているのです。今回の僕の授業では、まだ1回きりなので断定はできませんが、学生による授業評価の点数が上がると学習成果も上がるということに整合性のあるデータが得られたということになります。

 さて、読者の皆さんの中には、ブレインルールというのをご存知の方も多いのではないかと思います。NHK出版からも本が出ており、下のサイトに紹介が載っています。

https://www.nhk-book.co.jp/books/brain/rule/12rule.html

 12のルールがありますが、その中から授業改善に役立ちそうな箇所を抜き出してみました。

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  「10分たつと聴き手の注意はどこかへいってしまう」と書かれていますね。そして、感情をかきたてるできごとをはさむと効果のあることが書かれています。つまり、講義をして10分話したら、教師は何かをしないといけない、ということですね。感情をかきたてるできごとをうまくはさむことができない人にとっては、クリッカーは強力なお助けマンになると思います。

 また、「記憶は数分以内に消えてしまう」と書かれていますね。ですから、教師がしゃべったことを学生が覚えていないのも、当然といえば当然ということですね。長期記憶のためには、覚えてなお繰り返す必要があり、「新しい情報を徐々に組み入れ、時間の間隔をあけて繰り返すといい。」と書かれています。今回の心電図の問題で、でこぼこしながら正解者数が徐々に上がっていったのは、全く同じ問題を繰り返すのではなく、手を変え品を変えて新たな情報を少しずつ加えながら繰り返し説明をしていったことの反映と思われます。

 僕が、他の大学や先生方がほとんど採用していない「眠たさ」を授業評価の項目にして授業改善を行ってきたことも、このブレインルールに照らしてみると、合理的なことであったと思われます。

 クリッカーなどのツールを最大限活用して、ブレインルールに則した生理学的にも理にかなった眠たくない繰り返し講義をすることが、学生による授業評価点数を上げると同時に学習効果を高める秘訣である、ということになりますね。

 もう一つ、学生による授業評価での自由記載もたいへん重要な情報を与えてくれます。今回の授業評価での自由記載のご紹介は次の機会にしたいと思います。

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