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赤字の続く貿易収支は円高修正の進む為替で改善するのか?

本日、財務省から8月の貿易統計が発表されました。統計のヘッドラインとなる輸出額は前年同月比+14.7%増の5兆7837億円、輸入額は+16.0%増の6兆7440億円、差引き貿易収支は▲9603億円と、季節調整していない原系列の統計で見て、14か月連続、かつ、8月としては過去最大の赤字でした。まず、やや長くなりますが、統計のヘッドラインを報じる記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

貿易赤字9603億円、8月として最大 14カ月連続赤字
財務省が19日発表した8月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は9603億円の赤字だった。8月としては2011年(7775億円の赤字)を上回り、比較できる1979年以降で最大。赤字は14カ月連続で、これまで最長だった第2次オイルショック後の79年7月から80年8月にかけての14カ月に並んだ。前年同月と比べ円安が進み、原粗油などの燃料や半導体等電子部品の輸入額を押し上げた。

輸入額は前年同月比16.0%増の6兆7440億円で、10カ月連続で増えた。中東やロシアからの原粗油のほか、中国から衣料や太陽光パネルに使われる光電池など半導体等電子部品の輸入が増えた。

特に中国からの輸入額は1兆4231億円と8月として過去最大。これに伴いアジアからの輸入額も2兆9198億円と8月では最大だった。

輸出額は14.7%増の5兆7837億円。米国やアラブ首長国連邦(UAE)向け自動車や、中国向けにペットボトルなどの原料となる有機化合物などが伸びた。輸出数量指数は1.9%増で、2カ月連続で増えた。
為替レート(税関長公示レートの平均値)は1ドル=98円44銭で、前年同月比25.4%の円安だった。

貿易収支を地域別にみると、中国とは3041億円の貿易赤字だった。8月としては最大で、18カ月連続の赤字だった。米国との貿易黒字は4953億円で、前年同月比29.3%増。自動車など輸出額が20.6%伸び、8カ月連続の黒字だった。

財務省は貿易収支の今後の見通しについて、原子力発電所の稼働が止まった影響で原粗油など鉱物性燃料が輸入全体の3割以上を占めている点を挙げ「輸入全体に大きな影響を与える流れはしばらく続く気がするので、注視していきたい」(関税局)と説明した。

いつもながら、とてもよく取りまとめられた記事です。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフでプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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貿易収支の赤字は、引用した記事では季節調整していない原系列の統計で見て「14か月連続」とのことでしたが、季節調整してトレンドを見ると、実は、2011年3月の震災以降29か月連続で赤字を記録しています。震災直後のサプライ・チェーン毀損による輸出不振から始まって、現時点まで原発稼働率低下と世界的なエネルギー価格上昇に起因する輸入額の増加まで、ほぼ2年半に渡って貿易赤字が継続し、定着した可能性も考慮すべきです。

ただし、日経QUICKによる市場の事前コンセンサスでは貿易収支は▲1兆604億円との予想でしたので、これは下回っています。また、引用した記事にもある通り、円高修正がかなり進んでおり、4-6四半期くらい続くいわゆるJカーブ効果を経て、いくぶんなりとも為替の動きが輸出の増加と輸入の抑制に効くのであれば、我が国の貿易収支は黒字に戻らないまでも、赤字幅を縮小する可能性もあります。

しかしながら、1985年のプラザ合意以降の円高局面で、私なんぞはイヤというほど弾力性ペシミズムの実例、すなわち、いくら円高が進んでも貿易収支や経常収支の黒字が減少しない、というのを見て来ましたので、為替がどこまで対外収支に影響を及ぼすかは疑問が残らないでもありません。加えて、我が国では急速な高齢化が進行しており、家計の貯蓄率が低下して、貯蓄投資バランス的にも貿易収支や経常収支の黒字の維持が難しくなっているのも事実です。

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ですから、私が従来から主張しているように、同仕様もなく必要な輸入を含めた収支のレベルでなく、海外需要を取り込むとすれば輸出を眼目にすべきであり、目を輸出に転じると、上のグラフの通りです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同月比を価格と数量で寄与度分解しており、下のパネルは輸出数量指数とOECD先行指標の前年同月比を重ねてプロットしています。ただし、OECD先行指標には1か月だけリードを取っています。現時点では、上のグラフのように前年同月比で見る限り、為替に基づく価格効果から輸出額が増加している段階であり、輸出数量が伸びているわけではありません。

しかし、そろそろ欧州をはじめとする先進国の景気回復に伴った世界的な需要拡大により、数量面からも我が国の輸出が増加する局面が始まりそうな予感もあります。なお、下のパネルの2本の折れ線グラフの乖離は、部分的に景気低迷の続く中国に起因するものと受け止めています。

原発を停止して火力発電の比重を高めるためには石油や天然ガスなどのエネルギーをせっせと輸入せねばなりません。逆から見て、エネルギー輸入の増加をサステイナブルにするためにはせっせと輸出せねばなりません。新興国経済がやや停滞しているだけに、欧米への輸出ももう一度見直す必要があります。

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