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堺市長選が行なわれていますが…大阪都構想について考える

東京では昨年末の衆院選と同時に都知事選、今年の夏の参院選前に都議選と大きな選挙が済んでしまったので、私達都民にはピンときませんが、大阪ではその結果いかんによって今後の国政にも大きな影響を及ぼすかもしれない堺市長選挙が行なわれています。

 今年5月の橋下徹共同代表の慰安婦発言以降、かつての勢いが止まり参院選でも議席数を伸ばすことが出来なかった維新の会が、「大阪都構想」実現のために、現職の竹山修身市長に対して対抗馬を立て、この両者の一騎打ちとなっています。竹山候補には国政での対立を超えて自民、民主が相乗り推薦。それに加えて、共産党も維新の会の候補を勝たせてはならないと独自候補擁立を断念し、事実上、竹山候補を支持するというように、国政の与野党が入り乱れた維新の会VSその他という選挙構図になっています。国政では自民党と連立を組む公明党は、大阪市、大阪府での維新の会との関係を考えてか、自主投票を決定。どちらとも対立をしないように気を使っているという状況です。

 橋下氏としては維新の会の牙城である地元・大阪での選挙を落とすことがあれば求心力が低下することは必至で、それ故になり振り構っていられないという心境なのでしょう。確かにこの選挙の結果如何によっては野党再編が急速に進みだす可能性があり、維新の会、橋下氏としては野党再編の主導権を握るためにもこの選挙は絶対に落とせないと考えているのでしょう。

 さて、選挙の結果も気になるところですが、私としては、「大阪都構想」なるものが実現に向けて動き出してしまうのか、それとも、食い止めることが出来るのかが今後の地方自治を考える上で非常に重要だと考えています。まさに橋下氏が羨んでいる東京都に住んでいる私達にも将来影響を及ぼすかもしれない「大阪都構想」について考えてみたいと思います。

 まず私は橋下氏が打ち出している大阪市と堺市というふたつの政令市を無くして、東京の23区と同じように20程度の特別区に分割するという「大阪都構想」については、全く行革に反し、地方分権を進める観点からも間違っていると考えています。

 なぜならば、東京の特別区というものは、本来ならば市町村が行なうべき事業が、都の事業となっていたり、固定資産税など基礎自治体の財源である税の徴収を都に奪われている等、基礎自治体として不完全なものであるからです。地方自治を進める立場からすると出来る限り住民に身近な基礎自治体で物事が決められるようにするべきであって、そういう側面から見ると、都道府県の事務の一部を委譲されている政令市の方が優れた制度であり、今の時代に沿うものであると考えているからです。

 もう覚えている方も少なくなってきていますが、1952年の地方自治法改正から1975年までは、東京の特別区は東京都の内部組織という位置付けで、区長を選挙で選ぶことが出来ませんでした。戦後の特別区の歴史は、区長公選制復活に始まり、東京都との間で自治権をいかに拡充していくかの争いを続けてきているのです。この流れからすると特別区を新たに作るというのはまさに逆行です。

 橋下氏がなぜ「大阪都構想」などということを言い出したかを推測すると、大阪府知事に就任した際に、大阪の中心である大阪市の圏域に関しては、他の地域では大阪府の事業であることが、大阪市が政令指定都市のため、市の事業となっており、大阪の中心である大阪市内において、大阪府知事としての権限を揮うことが出来なかったことにあるのでしょう。つまり、大阪府知事だと、一番人が多く、企業も集積し、注目されることの多い大阪市で何も出来ないことが不満だったのでしょう。だから、府知事が大阪の真ん中で権限を揮えるようにするために東京都と同じ制度にすべきだと考えたのだと思います。

だから、現行の制度だと大阪府内の周辺部でしか力を発揮できないので、府知事を辞めて市長選挙に出て、大阪市長になったということなのでしょう。(これはあくまでも私の推測で、本人に確認したことはありません。)

橋下市長は府と市の二重行政が無駄を生んでいると言ってきました。二重行政と指摘をしているものとして、例えば、市立大学と府立大学があるとか、府営住宅と市営住宅があるとか、体育館等のスポーツ施設などが市営と府営とあるなどを上げていますが、それは、府が設置する場所を大阪市内以外にすればいいだけの話で、これを二重行政で無駄を作っているとは言えないと思います。この辺りが解消されたからといって、大阪都構想は行革になるのだとの主張は大きな偽りがあると考えています。

なぜなら、特別区に分割するとなるとそれぞれに選挙で選ぶ区長が存在し、それぞれに区議会が設けられます。現在、大阪市と堺市で2人の市長と大阪市会86名と堺市議会52名の138名の議員数ですが、東京の23区では23人の区長と各区に平均39.6人合計911名もの区議会議員がいます。大阪都構想では議員は出来る限りボランティアに近いものとし、数も少なくするとしていますが、それにも限界があり、肥大化するのは間違いありません。これは議会だけではありません。特別区は基礎自治体でありますから、それぞれに選挙管理委員会、教育委員会、監査委員会なども設ける必要が出てきます。これだけを考えても行革に逆行するのは明らかだと思います。

また、政令市という大きな区域でひとつの自治体となっているため、企業が集積している地域から住宅密集地域までをカバーできていますが、23区を考えていただければ明かな通り、企業が集中し税収が多い自治体がある一方で、都営住宅が多く福祉予算がより多くかかる住宅地が大半の自治体が出来るというように税収の偏在や公的な支援の必要な住民の偏在が出来てしまうのは明らかです。

この偏在を是正するために東京の場合は、本来基礎自治体の財源である固定資産税や市町村民税法人分などを都が徴収し、東京都として行っている事業のための財源としてその内の45%を東京都が取り、残りの55%を23区の財政力に応じて分配しています。大阪都が出来た場合も同じようになり、基礎自治体である区と広域自治体の都との間で財源配分を巡って争いが起こることは確実で、江戸川区という特別区から選出された都議会議員を務めていた私の実感からすると、政令市という基礎自治体として独立できている制度をわざわざ複雑な制度にする必要性がどこにあるのか私には到底理解出来ません。

むしろ私は現在の23区を再編して5~6程度の政令市に再編することを検討した方が自然だと思います。区を合併して行く際に都心部と周辺部で分けてしまうと財源の偏在が著しくなってしまうので、ケーキを切るように分けなくてはならない難しさはあるものの、現在の中途半端な自治体である特別区をそのままにしておくのは地方分権に反するし、行革にも反すると考えるからです。

ところで、オリンピック招致が決まった「東京」とはどこを指しているのでしょうか?

オリンピックというものは、基礎自治体である「市(City)」で開催されるものです。北京もロンドンもリオデジャネイロもイスタンブールもマドリードもCityです。「東京都」は基礎自治体ではなく広域自治体ですからCityではなくprefectureのはずで、「東京City」は存在しておりません。だとすると、オリンピックを招致した「東京」って都市はどこを指しているのでしょうか?

恐らくほとんどの方々は無意識のうちに、東京都の中で武蔵野市や八王子市などの市町村の範囲を除いた23区の範囲がオリンピックを招致した「東京」だと考えているのではないでしょうか。でもそれって自治体でも何でもないんですが…このことを疑問に思う方がいないのが不思議でした。ちなみに1964年の東京オリンピックの時は区長は公選ではなく、特別区は東京都の内部組織であったと考えれば、23区の範囲が「東京City」だったのでしょう。

橋下氏の人気に押されて、彼が主張する大阪都というものが一体どういうものかがこれまで検証されてこなかったことは非常に不幸だと感じています。人気がある人の主張が全て正しいとは限りません。報道機関も橋下氏のパフォーマンスや問題発言ばかりを取り上げるのではなく、重要な政策や主張の是非についてもっと取り上げるべきだったのではないでしょうか。そして、有権者の方も選挙で政治家を選ぶ時にはその候補者の主張を出来る限り聞いて判断して欲しいと思うと共に、堺市長選挙の結果が、地方分権に逆行することがないような選挙結果になることを祈っています。

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