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元新聞記者の矜持

 10月1日とも言われる消費税率引き上げの判断をめぐり、世間の関心が高まっています。メディアでもいろんな報道が増えてきました。元新聞記者として新聞の軽減税率について思うところがありペンを取りました。

 まず消費増税に関して私の立場を明らかにしたいと思います。私は参院選前から一貫して主張していますが、2014年4月に8%への増税をすべきだと考えています。自分の財布からお金を吸い取られる増税を望む人はいないでしょう。誰もが増税は嫌だと思います。しかし、現在の日本は収入に見合わない支出を続けています。借金という形で子や孫の世代に負担をつけ回して毎年、毎年凌いでいます。まだ生まれてもいない世代や投票権もない若い世代にこれ以上、借金を負わせてはならないと考えます。そのためには、社会保障を含む歳出を相当削減するか(政治改革という程度ではなく大幅に)、増税で全国民に割り勘代を払ってもらうか、ハイパーインフレを起こして借金の価値を目減りさせるしかありません。(劇的な経済成長による増収で収支を均衡させるという「青い鳥」を追い求めるのは、結局、赤字財政の継続に他なりません)

 万人に私の考えを支持してもらえるとは思っていませんが、私は苦しくとも増税で将来世代への負担を減らす第一歩を踏み出さなければならないと信じています。増税項目としては薄く広く全国民に負担してもらう消費税が最も妥当だと考えています。もちろん、大恐慌の時に増税して日本の経済を崩壊させてはなりません。ただ、現下の経済状況を考えれば、このタイミングで政治・政府は何とか増税をお願いしなければならないと信じています。

 多くの新聞メディアも消費増税を主張しています。加えて、ほとんどの新聞が訴えているのが新聞への軽減税率の適用です。「欧州では食品や新聞の税率をゼロや数%に抑えている国が大半だ」「新聞はコメなどの食料品と同じような必需品」などとして、新聞購読料の負担軽減が必要だと書いています。消費税の逆進性を考えれば、低所得者への対策は考えなければなりません。「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するためにどう対処するか、軽減税率を導入するとすればどの分野を対象にするかは大きな課題です。新聞への対応を頭ごなしに否定するつもりはありませんが、新聞業界に長らく身を置いた者として、紙面で自身の業界の話を声高に主張する姿勢には眉をひそめざるを得ません。

 政策にはいろんな見方があり、賛否は常にあります。時にメディアは業界団体の主張を「利益誘導」と批判します。公共事業でも、診療報酬でも、農業の補助金でも。どういった政策でも社会的な効用はありますが、度が過ぎれば我田引水との指摘を受けます。軽減税率をどの分野に適応するかは意見の分かれるテーマで、ともすればそこに利権が生まれかねません。そうした極めてナイーブな問題に関して、「自分の業界を配慮しろ」と紙面上で訴えるのは新聞報道自体の信頼性に疑義をもたらす結果になりはしないでしょうか。各紙の論調が「新聞も所詮、自分の利益になる主張しかしないんだな」という印象を読者に与えていることにマスコミ幹部は気づいていますか。もし、自分の業界の「正当な」主張をするのであれば、社説や記事ではなく広告で行うべきだと考えます。

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