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新聞とBLOGOS、Hufinton Post、アゴラの攻防〜新聞のサバイバルは可能か

5月、日本にハフィントンポスト(以下「ハフポスト」と略)が上陸したこともあり、BLOGOS、アゴラといった「ブログとりまとめサイト=インターネット新聞」が、徐々にだが注目されつつある。7月には新書『ハフィントンポストの衝撃』(牧野洋、アスキー新書)が出版され、アメリカでハフポストが既存の新聞メディアを凌駕しつつある様子が紹介されている。既存の紙媒体をベースとした新聞の電子化が進んでいるが、ハフポストはこれらとも一線を画し、報道メディアとしての新しい魅力を放っていると報じている。そして、その魅力こそが新聞というメディアを根底から変容させつつあるとしている。

では、インターネット新聞の出現で新聞はこれからどうなるのだろう?あるいはこれらとどう棲み分けたらいいのだろうか?

新聞の限界

すでに様々な分野で指摘されていることだが、新聞というマスメディアの先行きがあやしい。年々発行部数が低下しているのはご存知の通り。この理由は、これまたさんざん指摘されていることだが、メディアの多様化、とりわけインターネットの普及によるところが大きい。インターネットによる報道のメディア性は様々な面で新聞と重複し、そしてその多くがネット情報の方にアドバンテージがある。

例えば「速報性」。新聞は朝刊夕刊によって情報が発信されるわけでタイムラグがあるが、ネット情報は事件・出来事が発生すれば直後にその情報が流れる。Twitterなどではもはやリアルタイムといってもいい。

次に「網羅性」。新聞はあまたある社会の情報をチョイスし、満遍なく掲載するという体裁を採るが、ネットはバラバラ。ただし、ユーザーが情報をチョイスすれば新聞と同じになる。しかも新聞以上に情報を幅広く入手可能だ。たとえばGoogleやSkypeなどでマイページを作成すれば、自分のお気に入りの新聞、つまり自分が知りたいことの情報を網羅したコンテンツが出来上がり。しかも後はひたすらそこに情報がプッシュされてくるから楽ちんでもある。さらに、その気になれば新聞より深い情報にたどり着くこともできるわけで。

では「一覧性」についてはどうだろう?これもやはりネットの方に利点がある。ネットは情報検索が面倒くさければ、ポータルサイトに利用しているようなサイトを見ればよい。たとえば日本ならYahoo!Japanのホームページがこれに該当する。これをポータルにしておけば、さながらテレビのヘッドラインを見るのと同じことになる。いや、項目は刻々と変化するので、テレビよりもさらに社会の動きをチェックするのは容易だ(前述のマイページなら、さらに知りたいことの一覧性はこちらのニーズに見合ったものになる)。

結局、こうなると新聞の取り分はかなり少ないように思える。では、どこが取り分かと言えば、それは「読み物として面白さ」ということになるだろう。ネットやテレビの情報は、いわば「生もの」。とにかくその中身はともかく、新鮮なことが重要。これは一日二回発信の新聞では到底太刀打ちできない(最近は夕刊もどんどんなくなっている)。

一方、新聞の情報は、もはや「干物」の部類に属しつつある。つまり「生もの」とは逆。新鮮さはともかく、中身で勝負する点がポイントになる。だから、その筋のエキスパートや論説員に事件・出来事について事細かに解説させることになるのだけれど。だが、実は、これも結構苦しい立場にある。

一つは嗜好の多様化といった点がネックになることだ。つまり、今やわれわれの価値観や嗜好はバラバラ。ということは、これらのニーズ全てに対応しようとすれば、膨大な量のコンテンツが必要となる。だが新聞の紙面量には限りがあるゆえ、これに対応するというのは無茶な話だ。新聞はそれなりに対応しようとはしている。だが、そういった対応は、すればするほど自らを窮地に追い込んでいくことになる。

多様なニーズへの対応を限られた紙面内でまかなうということは、言い換えれば記事ひとつひとつが細切れになると言うことを意味する。しかし、これは食べ物がなくなったタコが自分の足を食べ始めるようなもの。つまり、紙面細分化によって新聞の魅力であるコンテンツの豊かさが損なわれていくのだ。新聞は「読み物」ではなく、単なる「情報」「データベース」に堕していくのである。だが、それは中身の薄い情報。だから、面白さ=話の深みはなくなり、人は新聞から離れていく。

ブログとりまとめサイトの出現

さらに、弱り目に祟り目のような状況で出現したのがブログとりまとめサイト=インターネット新聞だ。BLOGOSやハフポストは、登録されたブロガーから旬な情報をチョイスし、とりまとめてあたかも新聞のように情報を提示する。

それは、新聞よりも速報性が高いし、なおかつブロガーたちが自由に議論を展開している分、新聞よりも深い分析、興味を引くコンテンツの提供が可能になる。ハフポストの創設者、アリアナ・ハフィントンは、その編集方針としてストーリー性を重視しているというが、この方針こそ、かつての新聞が備えていたそれ。ということは「干物」としてのメディアの分野でも、こちらの側に持って行かれる可能性が高い。

新聞に残された道は

じゃあ、どうやったら新聞はこの先、生き残れるのか。それは、ネット、さらにブログとりまとめサイトと重複しない、あるいは重複してもアドバンテージのあるメディア性に特化するという点に求められるだろう。僕は可能性としては二点があると見ている。

一つは「コンテンツの幅」。これを縮めてしまうことだ。つまり、これまでの網羅性をやめる。そして、ある程度の分野にその方向性を限定し、その分、記事のボリュームを増やし、読み物としての深みを加えるスペースを割いていく。

もう一つは「コンテンツの質」。インターネット新聞=ブログとりまとめサイトはブロガーたちが自由にコンテンツを綴っているゆえ、その質については保証の限りではない(もちろん、サイト運営者が取捨選択しているが)。また、同じテーマに多くのブロガーが一気に記事を書いたりする(たとえば、近々ではオリンピック東京誘致決定がその典型だ)。

こういった点を整理して、それなりに「識者」と呼ばれる人間に分析させ、読み物としての面白さを前面に打ち出すという方法が考えられる。ちょっと汚いことをやって、インターネットサイト新聞で質が高いと思ったブロガーをハンティングしてしまうという手もありだろう。この二つ、言い換えれば編集権を大幅に高めていくということになる。

ただし、これは新聞がこれまで持っていた「マスメディア」というメディア性の最も重要な要素をバッサリと捨てることでもある。それは総合的な情報の提供という役割だ。つまり、生き残る方法としてはよりマーケットを縮小した専門性をウリに、高品質な情報を提供することに求められる。

そして、最後に言えることは、やはり紙媒体としての新聞の未来は暗いと言うことだ。つまり、こういった「生き残りのための方策」も、紙という物理的な移動手段を必要とするメディアを利用する限り存続は難しい。だから、結局は既存の新聞はインターネット上で展開するということになるのではなかろうか。

アメリカでは8月、Amazon.comのCEO、ジェフ・ベゾスがアメリカ第五位の新聞ワシントン・ポストを買収したが、このベゾスの目論見は、おそらくこういったブログとりまとめ的なインターネット新聞に対するカウンターを考えているのではと僕は見ている。

つまり、ベゾスはKindleを通じて新聞を販売、いや配信することで、既存の新聞のメディア乗り換えを狙っていると(もちろんワシントン・ポストがこれまで通りの編集方針を採用するというわけではなくなるだろう。つまり、僕が予想したようなやり方に編集方針をある程度はシフトするだろうけれど)。もしこれが功を奏するのであるのならば、新聞の未来は再び開けることになるし、ブログとりまとめサイトは新しい方向性の模索を強いられることになるだろう。

日本の場合、新聞販売店経由での配布という販売システムゆえ、アメリカの新聞のようにはドラスティックな変化はまだ起こってはいないが、こういったメディア性の根本的な変更を迫られる時期は、やはり早晩やってくるだろう。さて、そのとき日本の新聞は、はたしてどういう方向に舵を切るのだろうか。?

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