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スタグフレーションの危険が増している

 安倍総理も黒田日銀総裁も「異次元の金融緩和」と「大胆な財政出動」で弾みをつければ、デフレを克服できると言っています。果たしてそうでしょうか。

 いちばん進んでいるのは、金融緩和です。
 世の中に、どれだけお金が出回っているかを見るとき、ふたつの統計が大切です。
 ひとつは、日銀が金融機関に貨幣を供給する部分、これを「マネタリーベース」といいます。これは、日銀の金融緩和で増やすことができます。

 もうひとつは、金融機関が経済全体に貨幣を供給する部分で、これは「マネーストック」といいます。この部分は、経済が活性化しなければ増えることはありません。

 では、実態はどうでしょうか。
 日銀が発表した「マネタリーサーベイ」という統計表を見ると、日銀が金融機関に貨幣を供給する「マネタリーベース」では、昨年7月に比べて今年の7月は41.52%増えています。たいへんな増え方で、まさに「異次元」の金融緩和がおこなわれていると言えるでしょう。安倍内閣と日銀は、これをさらに増やそうとしています。

 ところが、経済全体への貨幣供給を示す「マネーストック」(M2)でみると、昨年7月に比べて今年の7月は、3.7%しか増えていません。

 このことは、いくら日銀が金融緩和をおこなっても、日銀と銀行の間にじゃぶじゃぶおカネがたまるだけで、銀行から先の経済活動におカネが流れなかったことを示しています。銀行からの貸し出しが低迷しているからです。

 いくら金融緩和しても、おカネが銀行から先に出ていかないのは、資金需要がないからです。その原因は、GDP(国内総生産)の6割を占める家計消費が伸びず、内需が低迷していることにあることは明らかです。

 では、財政出動はどうでしょうか。
 公共投資がGDPに占める比率は、わずか4%にすぎません。60%を占める家計を冷やしながら、いくら公共事業を増やしても景気対策として効果がありません。

 効果がなければ、政府はますます大規模な公共事業の拡大に走り、多額の国債を発行します。日銀は、膨れあがった国債を市中から大量に買い上げ、大量の通貨を供給します。これは、間接的な日銀引受けです。日銀は、財政規律を保つ「日銀券ルール」を停止しました。こうなると結局は財政規律を失い、過剰な通貨供給を招きます。

 このままでは、通貨価値の下落に伴うインフレーションを呼び込むことになるのではないでしょうか。これは、不況下での物価上昇、すなわちスタグフレーションへの道です。この道は絶対に歩んではなりません。

 デフレの要因は何でしょうか。国内総生産(GDP)の6割を占める家計消費が10年間で6兆円以上も落ち込んだからです。労働者の賃金が10年で22兆円も減少する一方、税・社会保障改悪による給付減や負担増で13兆円も国民の負担が増えました。

 いま、政府がなすべきは、家計を直接暖める政策への転換です。賃金を大幅に引き上げ、年金・医療・介護などの社会保障負担を大幅に軽減し、消費税増税を中止することです。

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