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オリンピック投資は中小企業を優先すべきと思う件

東京オリンピック2020が決まって、今さらながらに賛否両論が渦巻いているようであります。否定派の方々のポイントは、「今の日本は何をおいても被災地優先。オリンピック費用を被災地に回すべき」といったところでしょうか。

気持ちはよく分かります。ただ企業再生の場合も同じことなのですが、傷の修復と先々につながる新たな「投資」は別次元で考え並行してすすめることではじめて再生への道筋はつくりあげることができるのであり、再生に向けた「投資」という考え方にもご理解をいただきたいと思うところです。

問題は「投資」が有効な形で発展に寄与し、確実に再生につながるものになるか否かという点ではないかと思います。今回のオリンピックで申し上げるなら、被災地の復興とその土台となる日本経済の再生に向けて、新たな「投資」がどれだけ有効に機能するかということこそが、我々がもっとも注目すべき重要なポイントであると考えるのです。

再生の土台と申し上げましたが、被災地の復興が順調にすすめられるためには、何をおいても長く続いたデフレ不況からの脱却による日本経済の再生・活性化が不可欠であるところは異論のないところではないかと思います。私はその最大のポイントは、中小企業の活性化策に尽きるのではないかと考えています。

アベノミクスによる金融緩和策は確かに円安・株高を生み、一部の企業人には再生への手ごたえを感じさせる状況にあるようではありますが、それは円安・株高の恩恵を直接受けているごく一部の大企業に限られたものとの声が主流。日本経済の根底を支えている大半の中小企業においては、まだまだ再生の実感は乏しいと言うのが実態のようです。

中小企業を巡る経営環境を見渡せば、実は未解決の大きな問題が横たわっています。金融円滑化法の出口戦略と言われる事後処理の問題がそれです。中小企業や住宅ローンの金銭債務の支払いについて、返済困窮者が希望すれば一定期間猶予することを規定したこの法律は、リーマンショック後の景気停滞を受け2009年に時限立法として法制化され、その後東日本大震災の影響も加味し2回の期間が決定されましたが、今年3月の期限を持って終了となっています。

アベノミクス効果による景気回復と政府の成長戦略によって、中小企業における復調は確実であるとの見方に基づき決定されたと思しき3月での打ち切り措置ですが、実際には上記にも記したように未だ景気回復実感は中小企業レベルにまでは達しておらず、出口付近で行き場を見失いつつ滞留する企業が多いのが現実なのです。

このような事実関係を踏まえて考えるならば、先ず何よりオリンピックの「投資」は中小企業のトップライン向上に資するものを具体的に打ち出して欲しいと思うのです。長引く不況下で下請けのトップラインからいかに搾り取って自己のボトムラインを向上させるかに専心してきた大企業文化の下では、高度成長期のように大企業に仕事を出せば流れで川下の中小企業まで潤うという流れは期待できず、結局大企業だけが潤って終了ということにもなりかねないのです。

それでは日本経済の真の再生につながることなく、オリンピック「投資」を震災復興につなげるといった流れも期待できません。ではどうするのがいいのか。オリンピック関連の発注については、入札規模制限などで中小企業にできるものは中小企業に任せる、大企業はあくまでフォローに回らせる、大企業経由で下請け仕事を発注させる場合にも下請けへの発注最低価格を指示してそれ以下の金額で仕事を出すことを禁じ報告義務を課す等々、言ってみれば「小さな政府」の民間版のような考え方で中小企業のトップラインを押し上げる努力をして欲しいのです。

せっかくの「投資」もまた大企業だけが潤っておしまいでは結局、既得権者でオリンピックの恩恵を分け合って終わりになりかねないわけで、それでは「投資」が震災復興に寄与できるような有効な好循環スパイラルは実現できないと思うのです。震災復興を根底で支える真の景気回復は、中小企業の浮沈こそがそのカギを握っているということを十分に認識していただき、政府や東京都はこれから本格化していくオリンピック関連投資について、同じ額の「投資」でもいかにして中小企業のトップラインを最大化するような入札方式や発注方式にしていくか、その点に十分な配慮と知恵を絞って欲しいと思います。

オリンピックが東京で開催されることになって本当によかったと、被災地の方々を含めて多くの国民が生活の中で実感できる工夫をすること、それがオリンピック誘致を積極的にすすめて実現につなげた日本政府、東京都の最低限の務めであると思います。

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