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欧米の長期金利上昇の背景と日本の長期金利の異常さ

 9月5日の欧米市場では安全資産とされる米独英の国債が下落した。この結果、米国の10年債利回り、つまり米国の長期金利は6日の東京時間に3%台に乗せた。ドイツの長期金利も2%台に上昇し、一時2.05%と2012年3月以来の水準に上昇した。英国の長期金利も約2年ぶりの3%台となった。

 5日にはECB政策理事会が開催されたが、主要政策金利であるリファイナンス金利は0.5%に据え置き。下限金利の中銀預金金利も0.0%に、上限金利の限界貸出金利も1.0%にそれぞれ据え置かれた。またイングランド銀行のMPCにおいても、政策金利は過去最低水準の0.5%に据え置かれ、量的緩和の枠も3750億ポンドが維持された。

 ECB政策理事会後の記者会見でドラギ総裁は、利下げについては、いつもと同様に協議したと説明し、景気の回復については非常に慎重な見方を持っているとした。ただし、「低水準だが、経済が活力を徐々に取り戻してきた」とし、言葉を選びながら景気が最悪期を脱したと説明した(9月6日日経新聞朝刊)。

 欧州委員会が8月30日発表した8月のユーロ圏景況感指数は95.2と4か月連続で改善した。9月4日に発表されたユーロ圏PMI改定値は総合が51.5と2011年8月以来の高水準となった。ユーロ圏経済は4~6月期に7四半期ぶりにプラス成長を回復し、その後も勢いが増している。

 ユーロ圏の信用不安が徐々に後退し、その分景気回復の足取りがしっかりしつつある。なかなか雇用が回復せず、南欧の経済もまだ不安定であり、ECBも慎重な姿勢を維持せざるを得ない。しかし、ドイツや英国の長期金利の上昇は、欧州が有事から平時に戻りつつあることを示しているように思われる。

 世界的なリスク後退により、米国の長期金利も異常な低金利状態から修正され、まずは2011年7月あたりの水準まで戻ろうとしている。米国債が急落しているというよりも、これまでが異常な低金利であったことによる反動と見ておいた方が良いと思われる。

 米国でもここにきての経済指標は景気回復を示すものが出ており、4日に発表された地区連銀景況報告(ベージュブック)でも、米経済は「控えめないし緩やかなペース」で拡大したとしている。

 シリア情勢など不透明材料はあるものの、9月17日、18日のFOMCにおいて量的緩和が縮小されるとの見方は依然として強い。よほどの不測の事態でも起きない限りは、テーパリング(緩和縮小)が決定され、来年にかけて国債とMBSの買入額が徐々に減額されるという見方がコンセンサスになりつつある。これも見越しての米国の長期金利の上昇とも言える。

 安全資産として買われていた国債が、リスク後退により下落している。参考までにスイスの長期金利も今年6月末頃に1%台に上昇しており、こちらも2011年8月あたりの水準で推移している。しかし、日本国債については5月23日に1.0%にワンタッチしたものの、その後は低下し0.7%台での推移となっている。国内経済については欧米同様に回復基調になっており、9月5日に日銀は景気の現状判断を緩やかに回復しているとし、判断を上方修正している。回復との表現となったが、この表現はリーマン・ショック以降初めてである。

 日本の長期金利が低位で安定しているのは、日銀による大規模な買入があるためとされるし、需給面でみればその通りかもしれない。ある意味、日本のデフレは異次元緩和などで解消できるものではないとの冷めた見方も影響しているのではなかろうか。しかし、異次元緩和の効果はさておき、世界的なリスク回避と景気の回復が欧米の長期金利の上昇を促しているなかにあり、このような低水準にある日本の長期金利が異常に低く見えるのも確かである。

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