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- 2013年09月03日 00:06
消費税引上げ その時政府は何をすべきか
先週8月29日木曜日に総理官邸で「今後の経済財政動向等についての集中点検会合」が開かれた。
要するに、消費税を引き上げることについて様々な人から意見を聞きたいということだ。
6日間にわたって60人から意見を聞くということで、僕もそのメンバーの一人に選ばれた。地方自治体からはほかに横浜市長と被災地代表として福島県相馬市の市長さんが出ておられたが、知事としては僕一人。どういう立場でものを言えばいいのか迷ったが、今回の消費税及び地方消費税の引き上げについては、日本の将来のためにどうしても必要と考えているので、そのことを申し上げることにした。
このコラムを読んでおられる方を含めて、税金が上がることについて積極的に喜ぶ人はいない。
しかしながら、今の日本の財政状況を考えれば、これから増えていく社会保障関係経費を賄っていくのにどうしても消費税に頼らざるを得ないということは否定できない、と思う。
会社に対する課税や高所得者に対する課税を強化するということも一つのアイデアではあるが、我が国だけがそういう課税を強化すれば会社や高所得者は海外に逃避してしまう。既に僕の友人たちも会社の拠点をシンガポールに移し始めたりしている。
日本は他の主要国に比べて法人に対する税率や高所得者に対する税率が高い。一方で、消費税率は他の国に比べて低いのだから。
ただ、そんなシンプルなことであれば、わざわざ大勢の人の意見を聞く必要は無い。
なぜ意見を聞くことにしているのかというと、平成9年以来となる消費税率の改定によって、せっかく回復しつつある景気がまた腰折れ状態になってしまうのではないか、ということを政府も恐れているからだ。「税率を上げたものの税収が下がった」では何の意味もないことになる。
税率を上げるとどうしてもある程度景気に悪い影響が出てくることは否めないだろうが、それがどれくらいになるのか、また景気対策として何かを行う必要があるのか、行うとすればどういう対策が求められるのか、そのようなことについて政府としては意見を聞きたいということではないかと思って、そこに力点を置いて申し上げることにした。
まず、佐賀県が8月に実施した企業訪問調査の結果を申し上げた。
そこでは、約6割の企業が「消費増税は経営に悪影響がある」という見解を示している。
一方で、7割以上が「賛成」又は「消費増税はやむを得ない」と述べているのだ。
もちろん県民から寄せられる声は「いまだに景気が厳しく、経営も家計も消費税率がアップすると大変だ」という声の方が多い。そのことも発言したうえで、こうした企業の意見をお伝えした。良い悪いは別にして、企業は覚悟と準備ができつつある、ということだと思う。
では、消費税率改定後の景気対策として、どんなことが必要だろうか。
食料品などの生活必需品については、改定前に多少の買いだめはあるにせよ、いつまでも買わないわけにはいかない。
やはり、影響が大きいのは、必ずしもやらなくてもいいこと、買わなくてもいいものだろう。
その典型的な例が旅行だ。先日、テレビの情報番組でも「消費税率がアップすれば一般的な家庭では10万円から15万円くらい影響が出てくる。その時いちばん節約されるのは家族旅行だ」という話をされていた。
そこで、観光振興策を提案した。
国内版としては、かつて民主党政権の時に行われた高速道路無料化の拡大バージョンだ。
あの時は、高速道路のうち一部の区間だけ無料化が行われた。一定の効果はあったものの、効果を感じることができなかった地域も多く、また鉄道や航空事業者から見れば高速道路だけの優遇策ということにかなりの抵抗もあった。
だから、今回は、高速道路の無料化だけでなく、鉄道や航空事業者が家族旅行などを促進するような商品を投入することへの支援も含めた旅行の促進策を講じたらいいのではないか、ということだ。
さらに、海外版として、二つ申し上げた。
中国からの観光客については、今なお厳しい状況にあるが、現在被災地(東北3県)と沖縄だけに限られているマルチビザを日本全国に広げることを検討しても良いのではないか。また、インドネシアについてはノービザ化を実行しても良いのではないか。
こうすることによって景気の下支えになる可能性が十分にある、と主張した。
当日提出した資料については、既に内閣府HPの今後の経済財政動向等についての集中点検会合にアップしてあるので、参考までにご覧いただければ。
社会保障関係経費は、今回の消費税引上げだけでは賄えないし、今後も増えていく。また、地方の実情に応じて、障碍福祉や少子化対策等についても、充実させていく必要がある。
「ツケの先送りの政治に終止符を打つ」
今回の消費税率の改定は予定通り実施する。
そして、思わぬ景気の減速傾向が見られたら、必要な経済対策をタイムリーに実行して行く。
改めてこのことを強く求めていきたい。
ふるかわ拝
要するに、消費税を引き上げることについて様々な人から意見を聞きたいということだ。
6日間にわたって60人から意見を聞くということで、僕もそのメンバーの一人に選ばれた。地方自治体からはほかに横浜市長と被災地代表として福島県相馬市の市長さんが出ておられたが、知事としては僕一人。どういう立場でものを言えばいいのか迷ったが、今回の消費税及び地方消費税の引き上げについては、日本の将来のためにどうしても必要と考えているので、そのことを申し上げることにした。
このコラムを読んでおられる方を含めて、税金が上がることについて積極的に喜ぶ人はいない。
しかしながら、今の日本の財政状況を考えれば、これから増えていく社会保障関係経費を賄っていくのにどうしても消費税に頼らざるを得ないということは否定できない、と思う。
会社に対する課税や高所得者に対する課税を強化するということも一つのアイデアではあるが、我が国だけがそういう課税を強化すれば会社や高所得者は海外に逃避してしまう。既に僕の友人たちも会社の拠点をシンガポールに移し始めたりしている。
日本は他の主要国に比べて法人に対する税率や高所得者に対する税率が高い。一方で、消費税率は他の国に比べて低いのだから。
ただ、そんなシンプルなことであれば、わざわざ大勢の人の意見を聞く必要は無い。
なぜ意見を聞くことにしているのかというと、平成9年以来となる消費税率の改定によって、せっかく回復しつつある景気がまた腰折れ状態になってしまうのではないか、ということを政府も恐れているからだ。「税率を上げたものの税収が下がった」では何の意味もないことになる。
税率を上げるとどうしてもある程度景気に悪い影響が出てくることは否めないだろうが、それがどれくらいになるのか、また景気対策として何かを行う必要があるのか、行うとすればどういう対策が求められるのか、そのようなことについて政府としては意見を聞きたいということではないかと思って、そこに力点を置いて申し上げることにした。
まず、佐賀県が8月に実施した企業訪問調査の結果を申し上げた。
そこでは、約6割の企業が「消費増税は経営に悪影響がある」という見解を示している。
一方で、7割以上が「賛成」又は「消費増税はやむを得ない」と述べているのだ。
もちろん県民から寄せられる声は「いまだに景気が厳しく、経営も家計も消費税率がアップすると大変だ」という声の方が多い。そのことも発言したうえで、こうした企業の意見をお伝えした。良い悪いは別にして、企業は覚悟と準備ができつつある、ということだと思う。
では、消費税率改定後の景気対策として、どんなことが必要だろうか。
食料品などの生活必需品については、改定前に多少の買いだめはあるにせよ、いつまでも買わないわけにはいかない。
やはり、影響が大きいのは、必ずしもやらなくてもいいこと、買わなくてもいいものだろう。
その典型的な例が旅行だ。先日、テレビの情報番組でも「消費税率がアップすれば一般的な家庭では10万円から15万円くらい影響が出てくる。その時いちばん節約されるのは家族旅行だ」という話をされていた。
そこで、観光振興策を提案した。
国内版としては、かつて民主党政権の時に行われた高速道路無料化の拡大バージョンだ。
あの時は、高速道路のうち一部の区間だけ無料化が行われた。一定の効果はあったものの、効果を感じることができなかった地域も多く、また鉄道や航空事業者から見れば高速道路だけの優遇策ということにかなりの抵抗もあった。
だから、今回は、高速道路の無料化だけでなく、鉄道や航空事業者が家族旅行などを促進するような商品を投入することへの支援も含めた旅行の促進策を講じたらいいのではないか、ということだ。
さらに、海外版として、二つ申し上げた。
中国からの観光客については、今なお厳しい状況にあるが、現在被災地(東北3県)と沖縄だけに限られているマルチビザを日本全国に広げることを検討しても良いのではないか。また、インドネシアについてはノービザ化を実行しても良いのではないか。
こうすることによって景気の下支えになる可能性が十分にある、と主張した。
当日提出した資料については、既に内閣府HPの今後の経済財政動向等についての集中点検会合にアップしてあるので、参考までにご覧いただければ。
社会保障関係経費は、今回の消費税引上げだけでは賄えないし、今後も増えていく。また、地方の実情に応じて、障碍福祉や少子化対策等についても、充実させていく必要がある。
「ツケの先送りの政治に終止符を打つ」
今回の消費税率の改定は予定通り実施する。
そして、思わぬ景気の減速傾向が見られたら、必要な経済対策をタイムリーに実行して行く。
改めてこのことを強く求めていきたい。
ふるかわ拝