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消費税増税タイミングは「今でしょ」の欺瞞

■「今でしょ」という流行語にあやかる消費税増税論者達

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 ついこの間までは、2013年度の流行語大賞は、自民党の「アベノミクス」か、東進ハイスクール/林  修氏の「今でしょ」でほぼ決まりかと思っていた。しかし今夏、思わぬダークホースが出現した。そのダークホースの名は皆さんもよく御存知の人気テレビドラマ『半沢直樹』の台詞にある「倍返しだ」という言葉であることは言うまでもない。

 「アベノミクス」は民主党時代の株価の「倍返し」を見事に演じたわけだが、逆に消費税の増税も「今でしょ」と言わんばかりの勢いで進められているかに見える。

 個人的には今年の流行語が「アベノミクス」でも「今でしょ」でも「倍返しだ」でも構わないのだが、この「今でしょ」という言葉にあやかってか否か、政界では大きな間違いが起ころうとしている。その間違いとは無論、消費税増税タイミングの問題である。

 現在、60人の有識者に消費税増税について意見を聞くという『集中点検会合』なるものが催されているが、現在までのところ、消費税の増税に「賛成」の立場をとっている人が大半を占めているらしい。その中には「条件付きの賛成」や「一時的な先送り」も含まれるのかもしれないが、今回のヒアリングには、消費税増税に「賛成する」「反対する」「先延ばしする」という選択肢は有っても、「減税する」という選択肢は無いらしい。

 「毎年1%ずつ消費税を上げていく」という意見はあっても、「毎年1%ずつ消費税を下げていき、最終的に2%にする」というような意見は聞こえてこない。

■“景況感の改善”無しの消費税増税論

 有識者だということで選ばれた人物が「消費税を上げるのは今でしょ」では、本当に真っ当な知識を有しているのかどうか疑わしい限りだが、消費税を上げるのは本当に今で正解なのだろうか?

 本来、増税というものは好況時に行うというのが経済運営の常識であり鉄則でもある。有識者の中には「アベノミクスで景気が良くなったので増税する」というような安直な考えを持っている人もいるのかもしれないが、現時点で景気が良くなった(と言うより元に戻った)業界は、円安によって恩恵を受けた輸出産業と一部の建設業者ぐらいのものであり、世間一般では全くと言っていいほど景気が良くなったというような実感は無く、実際に「景気が良くなった」というような話も聞こえてこない。

 代わりによく聞かれるのが、「未だ全く景気が良くならない」とか「アベノミクス効果など全く無いのではないか?」というような冷やかな台詞であり、現状では、実体経済の景気はほとんど変化していないとみるのが正しい判断だろうと思う。

 麻生副総理がインタビューで「増税する時期は整いつつある」などと自信満々に応えていたが、どうも違和感を拭えない。正直なところ、実際の現場を知らない人間の戯言にしか聞こえない。

 専門家の間でもアベノミクスの効果が出てくるのは、少なく見積もっても2年程度はかかると言われているので、未だ世間一般の人々には景況感の改善が感じられないのは仕方が無いことだとしても、現段階で直ぐさま増税するなどという判断は論理的にも常識的にも筋が通っておらず、とても正気の沙汰とは思えない。

 アベノミクスの目的は「景気を良くすること」であるはずだが、その結果も未だ出ていない段階で安易に増税しなければならない理由が全く理解できない。増税のタイミングは、世間一般の人々が“景況感の改善”を真に肌で感じられるようになってから考えることであって、今すぐに決める必然性がどこにあるのか?という疑いを禁じ得ない。

■「アベノミクス」と「増税」の連関ロジックとは?

 全く経済成長戦略の無かった民主党時代であれば、増税以外に手段が無いと考えるのはまだ理解できるとしても、曲がりなりにも『アベノミクス』という経済成長戦略を携えている自民党がなぜ、消費税の増税を急ぐ必要が有るのか不思議でならない。

 先程、「アベノミクスで景気が良くなったので増税する」と書いたが、消費税の増税は、アベノミクスが失敗した時にこそ行うのが筋である。

 アベノミクスが成功した場合は、自然と税収も増加するので、増税する必要性は薄くなるが、アベノミクスが失敗した場合は、おそらく税収も落ち込むことになるので、増税するしか手段がなくなる。

 アベノミクスが成功 → 税率据置き、または減税
 アベノミクスが失敗 → 増税

 これが本来の正しいロジックである。もしこれ以外に増税するタイミングが有るとすれば、アベノミクスが10年間行われた後、アベノミクス無しでも経済が独り歩きし、景気が非常に良くなっていた場合の話である。

 ところが、消費税増税論者というのは、端からアベノミクスの正否などは考えておらず、とにかく「財政再建のためには増税するしかない」という立脚点から自前の増税論理を展開しているように見える。

 中には「アベノミクス」と「増税」を同時に行うことによって相乗効果で景気が良くなっていくと考えている人もいるのだろうが、そんなどっち付かずの矛盾を抱えた政策であれば、成功する確率が低くなることはあっても高くなることはないと言える。

 「決断できる政治」「決断できない政治」と言われることがあるが、「決断できる政治」とは、どっち付かずの優柔不断な政治を意味しない。安倍総理が政治家として本気で景気を良くしたいという願いを抱いているのであれば、経済成長戦略に背水の陣で立ち向かうべきであり、自らの背後に60人の有識者を置くというようなリスクヘッジ政策に傾倒するべきではない。

 安倍総理は現在、「決断できる政治」と「決断できない政治」の間で揺れ動いているように見受けられるが、有識者達に責任を転嫁するような真似事は止めて、リーダーシップによって「決断できる政治」を行ってくれることを切に願う。

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