記事

10分でわかる小学校英語教科化議論!【第2回】課題山積みの中、小学校英語教科化が突然決定される可能性も!? ‐ 加藤由美子

前回は小学校英語教科化の前段階ともいえる、現在、既に実施中の外国語活動について、その基本的な概要と現状をお伝えしてきました。第2回は、教科化の前に立ちはだかるさまざまな問題や課題について解説していきます。「小学校での英語教育? やれば良いのでは?」と簡単に言う人もいますが、そのためには難しい問題がたくさんあるのです。

現状の外国語活動でも、慣れない英語指導で
先生たちの負担は絶大!

ベネッセ教育総合研究所(旧ベネッセ教育研究開発センター)が2010(平成22)年に行った「第2回小学校英語に関する基本調査(教員調査)」で、学級担任が特に課題と思っていること(図)の第1位に挙がったのが「教材の開発や準備のための時間」です。目の前の子どもたちが興味を持てるようにという思いから、小学校の先生にはご自身で教材を作るかたも多くいます。しかし、指導の経験も浅い英語の場合、準備の時間がほかの教科以上にかかってしまうのでしょう。


一方、第2位に挙がったのが「ALT(外国語指導助手)などの外部協力者との打ち合わせの時間」です。第3位で「指導する教員の英語力」が挙がっているように、先生自身の英語力の問題もあり、英語の指導には課題を感じている先生が多いのです。地方自治体によってはALTを採用したり、ボランティアに協力してもらったりと指導体制もさまざま。そんな中で、多忙な担任の先生は、ALTとまずは打ち合わせの時間がとれない。時間がとれても、英語しか話せないALTと英語があまり話せない担任の先生が授業の打ち合わせをうまくできないという事態が実際に起きています。

それでもがんばっている担任の先生はたくさんいらっしゃいますが、一方でALTに授業を完全にお任せにして、担任の先生は何もしないというケースも生まれています。教科になると決まった場合、誰が指導をするのかも併せて検討されることになりますが、担任の先生中心で行う場合には、この問題は継続して残るということになります。


【図 英語活動の課題】
画像を見る

※とくに課題だと思うものを3つまで回答
※15項目中回答が多かった上位3項目
※英語活動を「行っている」学校(n=2,315)のみ対象
出典:ベネッセ教育総合研究所「第2回小学校英語に関する基本調査(教員調査)」(2010年)



地域格差の問題も

外国語活動におけるALTに関してはほかに予算面の問題もあります。ALTを雇えるぐらい予算が潤沢にある地方自治体と、そうではない自治体。自治体の考え方によっては、予算はあっても回さないということもあります。教育の機会均等のために外国語活動を必修化して教材も共通にしたのに、結果的には地域格差が依然として残ってしまっているのです。教科となった場合には、ALTやボランティアを含めた指導体制の指針も出されるかもしれませんが、ALTなどの任用について地方自治体での自由裁量が継続して認められれば、この格差の問題も続くことになります。

教員の育成や教科書の作成など、コスト面は大きな課題

外国語活動の英語指導において、先生方は既にご苦労されていると述べましたが、英語が教科化となった場合も一番大きな課題と言えるのは教員の再研修の問題です。

今の小学校の担任の先生方の多くは、教員養成課程で英語を教科として教えるために必要な科目を履修されていません。ですから今の担任の先生が英語も教えるのであれば再研修は必須となります。
また大学の小学校教員養成課程にも英語を教科として教えるための必修科目を設置する必要も出てきます。仮に担任の先生が教えないとしても、小学校で英語を教えて良いと認められた人が教えなければなりませんから、いずれにせよ、資格の認定や育成のための時間とお金はかなりかかることになります。
さらに、教科化となれば教科書も作らなければいけません。教科として教えるからには、学習指導要領で目標を設定し、指導を行うために適切な教科書をゼロから作ることになります。小学校で教科書を作れば、中学校の教科書はどうするのか、読み書きはどのように取り扱うのかなど、作る前に決めなければならないことは山ほどあります。

つまりこのようなことが、今後教科化を取り巻く課題として議論されていきますが、担任の先生はもちろん、文部科学省・教育委員会、小学校教員養成を行う大学・学部への負担など、お金と時間が非常にかかることははっきりしています。

問題は多いけれど、早ければ3~4年後に実現の可能性も?

とはいえ、さまざまな課題を理由に導入をためらっていれば、いつまでたっても早期の英語教育、ひいてはグローバル社会で活躍できる人材育成は進まない! そのようなことを、5月に発表した提言で教育再生実行会議は強く訴えているのでしょう。では教科化はいつになるのでしょうか?

これから検討されるわけですから、今のところ教科化された場合の開始年度などの具体的なことは、公的機関からはまったく何も言及されていませんが、過去に学習指導要領が10年に一度のペースで改訂されてきたという経緯からすると、2018(平成30)年度頃に新しい学習指導要領の告示があり、2021(同33)年度頃に施行という流れが予測されます。ということは、次の学習指導要領改訂のタイミングで教科化が実現しなかった場合、その次は2030(平成42)年度頃とかなり先になってしまう可能性もあるのです。仮に2021(平成33)年度実施となった場合でも、その時の小学生が大人になって社会に出るのはその10年先。ですから政府とすれば2021(平成33)年度施行でも遅いと思っているのでしょう。

今回参議院選挙で自民党が大勝したことも絡み、さまざまな事情をはねのけて、たとえば3~4年後くらいに教科化が実現ということもないとも言えません。特に小学生以下のお子さんを持つ保護者のかたは、今後の教科化議論の動向に、ぜひ注意していただきたいところです。

次回は、小学校英語教科化が及ぼす入試への影響や、大学入試へのTOEFL等の導入検討など「英語教育改革と入試」をテーマに解説していきます。

あわせて読みたい

「英語教育」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    “愛国芸人”ほんこんが「デマツイート」で提訴される 原告代理人・米山隆一氏は怒り

    SmartFLASH

    07月26日 09:58

  2. 2

    中国、ロシア製ワクチンと立憲民主と共産党 まあ少し可哀想ではあるけど、ブレインが悪いのとセンスがないというだけ

    中村ゆきつぐ

    07月27日 08:26

  3. 3

    野球は7回、サッカーは60分に!若者のスポーツ観戦離れを「時短化」で食い止めろ

    土屋礼央

    07月27日 08:11

  4. 4

    60歳4人に1人が貯金ゼロ 原因は晩婚化による“支出三重苦”

    女性自身

    07月26日 13:23

  5. 5

    作曲家がLGBT差別の杉田水脈氏を肯定…開会式のドラクエ起用に疑問続出

    女性自身

    07月26日 12:26

  6. 6

    東京五輪「手のひら返し」が驚くほど早かった理由 - 新田日明 (スポーツライター)

    WEDGE Infinity

    07月26日 08:17

  7. 7

    配信が充実した東京オリンピック 無観客開催でも十分なお釣りが来る内容

    企業法務戦士(id:FJneo1994)

    07月26日 08:32

  8. 8

    ソフトバンクG株が連日の新安値、8カ月ぶりに7000円割れ

    ロイター

    07月27日 11:16

  9. 9

    酷暑下の札幌五輪マラソン 市民の冷ややかな声も少なくない

    NEWSポストセブン

    07月27日 09:36

  10. 10

    小山田圭吾の件について考える 作品と作者は別ものか

    紙屋高雪

    07月26日 09:10

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。