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リフレ政策が全然機能していない現実

 リフレ政策なんて言ったってどれだけの人が正確に理解できているか怪しいのですが‥それでも私は、皆様に質問してみたいのです。

 リフレ政策は機能しているのか、と。どう思いますか?

 まあ、私がそのようなことを言えば、とにかく日本は長い間デフレに苦しんできたのだから、デフレを脱却することが先決であり、だから強力なリフレ政策を採用する以外にないではないか、なんて反論も予想されます。

 では、リフレ政策は機能しているのでしょうか?

 いずれにしても、デフレからの脱却が先決だということで、安倍総理はアベノミクスを打ち出し、そして、それを実践するために黒田総裁率いる新体制の日銀が異次元の緩和策を採用したことは、多くの皆様がご存知のとおりです。

 では、異次元の緩和策は巧く行っているのか?

 確かに、アベノミクスや異次元緩和策によって円安がもたらされ、そして株価が上がったのはそのとおり。そして、一時心配されていた長期金利の上昇も、最近は落ち着いている、と。

 しかし、株価や為替に一服感が出ているでしょう?

 つまり、一頃の勢いが失われ、株価と為替は、新しい立ち位置を見つけ、すっかり落ち着いてしまっているのです。

 その一方で、賃金が少しずつでも上がり始めれば、景気がよくなり始めたという感覚が国民に広く浸透するのでしょうが‥現実はそれほど甘くない。

 もう一度お聞きします。リフレ政策は機能しているのか?

 リフレ政策が、どのようなメカニズムで実体経済の活性化に貢献するかは、論者によって意見が区々である気がするのですが‥クルーグマン教授のような筋金入りのリフレ派の考えは、それに賛同するかどうかは別として、論理は割と明快であるのです。

 つまり、何といっても、マネーの流通量を増大させることが必要である、と。そして、マネーの流通量を増大させることができれば、必ずインフレが起こり始める、と。そして、インフレが起こり始めると、実質金利が低下するので企業の投資活動が刺激されるであろう、と。同時に、インフレによってお金の価値が低下すると人々が予想するようになるので、お金の価値が落ちないうちにモノやサービスの購入を急ごうとするであろう、と。つまり、消費が活性化するであろう、と。

 如何でしょうか? 筋金入りのリフレ派が期待したようなことが今起きていると言えるのでしょうか?

 本日、7月の消費者物価指数が発表になりました。

 何と生鮮食品を除く総合指数が、前年同月比0.7%上昇したと報じられているのです。

 このニュースをみて、ようやく日本もデフレから脱却し始めた、とお感じになっている方がいるかもしれません。

 もし、それが本当であれば、少なくても物価が下がり続ける「デフレ」の状況から脱し始めたということで、リフレ派の目論見は半分成功したと言えるかもしれません。後は、インフレが起き始めたことによって様々なプラスの効果が表れるかどうかが問題である、と。

 では、仮にインフレが起き始めたということが事実であったとして、そのインフレは何を原因に起き始めているのでしょうか?

 日銀が大胆な金融政策を採用しているからでしょうか? つまり、日銀が大量に国債を市場から買い上げ、マネタリーベースを増大させていることが貢献しているのでしょうか?

 確かに、日銀当座預金残高は、計画通りに着実に増えています。今年の初めには44兆円ほどしかなかった日銀当座預金残高が、8月20日には83兆円ほどにまで増えているのです。

 岩田副総裁は、副総裁就任前に国会で次のようなことを言っていました。日銀当座預金残高を70兆円~80兆円に増やすことができれば、必ず2%のインフレ目標を達成することができる、と。もし、それが実現できなければ自分は辞めてもいい、と。

 まさに思惑どおりに日銀当座預金残高を増やすことができ‥だから、まだ2%の目標値には届かないものの、少しずつインフレが起き始めていると理解していいのでしょうか?

 答えは、ノー。

 というのも、世の中に出回るお金の量が増えたことが原因で物価が上がるというのであれば、大よそどんなものでも同じように価格が上がってしかるべきだと思われるのに、今回発表になった7月の物価統計によれば、前年同月と比べて0.7%消費者物価指数が上がった主な理由は、エネルギー価格の上昇があったからだと言うのです。

 では、エネルギー価格の上昇がなかったら、どうなのか?

 それを知るためには、コア・コア指数を見ればいいのです。つまり、食料やエネルギーを除いた物価指数を見ればいいのです。

 食料及びエネルギーを除く総合ベース、つまりコア・コア指数でみると、7月は、前年同月に比べて0.1%下落しているのだ、と。

 コア・コア指数でみると、まだデフレを脱却できていないのです。つまり、リフレ派の思惑どおりに事が運んでいる訳ではないのです。

 だから、日銀としては、生鮮食品を除いた総合指数で、前年同月比0.7%物価が上昇しているとしても、それに満足してはいけないのです。そうではなく、コア・コア指数でみても、物価が上がるように工夫する必要があるのです(リフレ派的な発想をすれば)。

 但し、そうは言っても、生鮮食品を除いた総合指数で、物価が0.7%上昇していることも事実。では、理由が何であれ物価が上がっているのだから、今後次第に実質金利が下がり始め、企業が設備投資に活発になると期待することができるのか? 或いは、貨幣価値の下落を嫌い消費者が商品の購入を急ぐようになるのか?

 岩田副総裁は、一昨日京都市で講演して、「今年の終わりごろから目に見えて良くなり、来年度にはもっとはっきり良くなる」なんて言っているのですが‥私は、その言葉を当てにすることはできません。

 だって、そもそもコア・コア指数でみたら、まだ物価が下がっている訳ですし、企業が設備投資を増やさないのにも別な理由があるからなのです。決して実質金利が高いから設備投資をしない訳ではないのです。

 それに、来年になって、景気がよくならなかったとしても、「消費税の増税をしたから」なんていう言い訳が既に準備されていることですし‥

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