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ドラマ『半沢直樹』、原作とのちがい

回を追うごとにものすごい視聴率を叩き出しているこのドラマだが。原作小説『オレたちバブル入行組』をその大筋ではなぞっているものの、やはりところどころ改良が加えられている。

原作を読んでから視てみると、なるほどたしかに、このドラマがウケているのもよくわかるブラッシュアップがなされている。今日はドラマ第5話までのちがいをいくつか抜き出してみる。

タイトルがちがう

まずタイトルがちがうが、ここにはシリーズに統一感を持たせるという意味以上に、原作にあった世代論的な部分を脱臭する狙いがあったんじゃないかと思う。

原作シリーズではバブル世代や団塊世代、さらに就職氷河期を経験するロスジェネ世代も後に登場するが、ドラマはそういった世代論は意図的に避けている。ここには、バブルへの実感が乏しい若い世代への訴求を狙いがあったんじゃないだろうか。また原作そのままの年代では堺雅人が演じるにはムリがあると思ったのか、彼が旧産業中央銀行の面接を受けたとされる年数は91年になっている。

あと、この記事にあるように主人公のフルネームがタイトルになるドラマというのは、よく考えたら異様だ。

姓名が題名はヒット:半沢直樹,古畑任三郎,それに…… [ドラマ] All About

原作を読んでいないかぎり、半沢直樹なんていう名前を視聴者は知らないわけである。タイトルをフルネームにした背景には、そんな人たちが「TBSの新ドラマ『半沢直樹』!!!」と聞いた時に感じるだれだよ!? という違和感、異物感を抱かせる狙いがあったかもしれない。主人公の設定でいうと、剣道をやっているというのはドラマオリジナルで、これは東田とのアクションシーンでちゃんと活きてくる。

通常の業務も行っている

また、ドラマの1話の冒頭では普通に融資を手がけている半沢の姿が描かれる。これも完全にドラマオリジナルで原作にはないが、この改良もわかる気がする。

というのも、原作の半沢は5億円の回収という銀行員としてイレギュラーな状況がずっと続いていくのだ。さながらそれは刑事か探偵である。普通の銀行の融資係として、融資を手がけている光景をはさむことで、より世界観に厚みがましたように思う。

またここで、技術的には優れ成長しそうな企業なのに手元に資金がないので困っているという企業を助ける半沢の姿を描き、彼の手腕と、またこのあとで彼をダマす東田の悪徳っぷりが際立つ。また、前途有望な者への有効な融資という点では、第1部終盤での「美樹」とのやりとりもそれに通じるものがある。

嫁が優しい

ドラマでは上戸彩演じる半沢の妻・花が一部で不評を買っているとの噂も聞くが、権謀術策うずまくドス黒い男たちの銀行パートだけだと視ている側も胸焼けを起こすだろう。上戸によるやや調子はずれにハツラツとしていて、ちょっと若い肝っ玉母ちゃんのような花にあの半沢もタジタジ……的な箸休めの場面があるからこそ、ドラマ全体としてバランスがとれているのではないか。

原作にも花が登場するが、ドラマ版とはまるでキャラが違う。とにかくいつもキレているのである。半沢が支店長らにはめられた!責任を一人でとらされるかもしれない! というときに、花は夫を慰めるでもなく、そうした不条理がまかり通る銀行への怒りをぶちまけるのだが、その怒りは半沢本人まで及ぶのである。

こういう女性がいそうというリアリティはさることながら、これをこのままドラマ化したら、半沢がかわいそすぎる。

黒崎、美樹ら脇役キャラの膨らませ方

片岡愛之助が演じる国税局査察部の統括官・黒崎が、オネェ言葉で半沢を食うほどの人気ぶりだ。しかしこのキャラクターは原作1作目には出てこない。国税の査察部そのものは出てくるが、キャラがたった黒崎という存在は2作目からの登場なのだ。

でもこれはドラマ制作者はよくわかっている。ドラマ化には、1クールを通じて半沢の宿敵然としたキャラクターが必要で、それはおそらくこのシリーズを通じて黒崎をおいて他にいないだろう。玉を掴むのはやりすぎのような気がしないでもないが、片岡というキャスティングも抜群だ。

また、東田の女である美樹は壇蜜が演じていて、様になっているようで実はダイコンという珍妙な演技を繰り広げている。東田のひた隠しする重要な通帳を持ち出すという重大な役回りを演じた美樹だが、原作では大したキャラではない。

まだまだあるが、細かいところまであげていくと切りがないのでこれぐらいにしておこう。

これらの改変はおおむね改善といっていいほど、よく練られていると感じた。

ドラマ監督へのインタビューによると、彼らは視聴率を期待してなかったという。視聴率度外視で、いいものを作ろうと思ったのだ。

監督も想定外!「半沢直樹」メガヒットの裏側 なぜ、銀行ドラマが視聴率30%を叩き出せたのか?(東洋経済オンライン) - エンタメ - livedoor ニュース

剛なんとかさんを主演にして、今時の、流行りそうなギミックを付け足してスポンサーの顔色をうかがい、反面原作ファンをガン無視したドラマ化は数多あるが、中には優れた作り手たちによる、よく練られたドラマ化もあるのだと思い知らされた。

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