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特集:景気の再点検と設備投資の行方

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 残暑お見舞い申し上げます。 短 い 夏休 み を い た だ き ま し た が 、 2013 年夏の暑さはたぶん 記録に残る の で は な い か と 思 い ま す 。とりあえず筆者は 扇子が手離せなくなりました 。

 さて、休み明けの本誌では、足元の景気の 点検から始めたいと思います。 4 - 6 月期 G D P を 見 た 感 じ で は 、 家計部門 が 良 く て 企業部門 が 今一 つ 。 今後の 鍵を握るのは 民間 設備投資 と い う こ と に な り ま す が 、 投資減税 が 検討 さ れ て い る 一方 、 輸出の動向も気になる と こ ろ 。 さらには 消費税問題 も 視野 に入れ なければなりません。

 こ の 秋に向けての 日本経済を展望して みたいと思います。

● 家計「よくできました」、企業「 がんばりましょう」

 8 月 12 日、内閣府が 4 - 6 月期 GDP 速報値を発 表し た。結果は前期比年率+ 2.6 %(前期 比+ 0.6 %)と 3 四半期連続のプラス成長 だ った が、市場コンセンサス(前期比年率+ 3.6 %、 前期比+ 0.9 %)をやや下回 った 。 「思ったほど良くなかった」けれども、「中身はそれほ ど悪くない」 と い った と こ ろ だ ろ う か ( 次頁 の 表参照 ) 。

 個人消費と公共投資は予想以上に強く、輸出も健闘している。しかし設備投資は前期比 微減で、住宅投資もマイナス、在庫品増加 も足を引っ張 った 。 特に 在庫品増加 が曲者で あ る。 四半期ごとのデコボコみたいなもの であるから 、この分 のマイナスを 「なかったこと」 にすると 、それだけで 年率 1 % 分 くらい 上昇する 。すなわち、事前の市場コンセンサスに 近い数字とな る。「 中身はそれほど 悪くない」と 言われる ゆ え ん である 。

 総じて いえば、 家計部門 と 政府部門は頑張ったけれども、企業部門がいま一歩だった 、 という 評価 になる だろう 。

○ 四半期 GDP の推移



 ここ数年、日本企業は設備投資を絞り込んできた。リーマンショックと震災というダブ ルパンチを受け、しかも六重苦(円高、法人税、 FTA 交渉の遅れ、環境規制、労働規制、 電力料金)の問題 もあり、設備の増強や更新をためらう傾向が強かった。

 それがここへ来てアベノミクス効果 が到来した 。円安と株高のお蔭で、企業の財務体質 は 期せずして 改善し ている 。 そこで 「さあ、設備投資 だ 」と動き出すかといえば、そこは そう簡単ではない。日本企業(特に大企業)は、 5 月の決算発表から 6 月の株主総会まで の時期は積極的に動かない。むしろ社内のコンセンサス作り の時期である 。 設備投資が動 き出すとしたら、夏以降( 7 - 9 月期) ということになるだろう。 実際に 8 月 13 日発表の 4 - 6 月期機械受注統計を見ると、民間設備投資の先行指標となる 「船舶・電力を除く民需」の 受注額が前期比 6.8 %増となっており、今後が期待できそう な感じ である。

 日本経済の景気回復パターンは、これまで ほとんどが 「輸出主導型」 であ った。輸出の 増加によって製造業が潤い、まずは企業部門が 潤う 。ところが企業の稼ぎは主に配当や対 外投資 、 内部留保 の積み増し に回り、雇用増や賃上げにはなかなか回らない。だから家計 部門にお金が回らず 、 個人消費が本格化しない、と言われることが多かった。

 それが今回はめずらしいことに、 先に 家計部門に火が点いた。 アベノミクスによる資産 効果 による消費拡大や、 消 費税増税を意識した住宅投資が先行した。 逆に企業部門の本格 稼働が待たれている。 2013 年上半期( 月)の日本経済は、年率換算で 3.2 %成長 を達成 していることになるが、その原動力は個人消費に負うところが大であった。

 ただし 7 - 9 月期から、設備投資が本格的に動き出してくれるのであれば、「二段目のロ ケットに火が点く」ことになる。一段目のロケットである個人消費は、家計部門の所得環 境が大きく改善していないことを考えると、持続性には やや 不安が残る。ゆえに 2013 年 下半期は、二段目のロケットである企業部門に期待すべき であろう。

●「設備投資のために減税」論の危うさ

 となれば、 「 秋の臨時国会 で 成長戦略 の 加速 を」「 投資減税によって、企業の設備投資 を後押し しよう」 という 話に なる。これ ら は常識的な議論であるし、 いかにも日経新聞あ たりが書 きそうな ことだし、 安倍政権は実際にその通りに動くであろう。 これに対し、週刊エコノミスト 8 月 27 日号 誌上で 、小幡績 ・慶応大学准教授 が興味深 い異議申し立てを行っている。題して 「日本は設備投資では成長できない」 。そんな馬鹿 な、と 思 って読んでみると 、 意外に反論が難しい。端的に言うと、 「政府が無理に 生み出 す需要は質が悪い」 。以下のような指摘は、なるほど思い当るところがある。

* 減税措置の中でも、設備投資減税は圧倒的に額が大きい。 既に過大なインセンティブ が伝統的に 与えられ ている。

* 日本企業の設備投資は国際比較でみても過大。 ROA が低いのも設備投資過剰で資産が 大き過ぎるから。 過剰債務と過剰雇用はリストラしたが、過剰設備は懲りていない。

* 高度成長が終わった今は、設備投資はもはや望ましい需要ではなくなっている。 投資 は投資を呼ばないし、消費拡大も起きない。

* 企業が投資をしないのは、需要がないからであってカネがな いからではない。そこで 減税をしても、実質補助金にしかならない。

 確かに企業の立場 としても 、 政府に背中を押してもらわないと決断できないような投資 は、 良質な 案件 とは言い難い 。 R&D の世界も同様 で 、企業は 必要性が高く、 自信のあるプ ロジェクトは自前 の資金 でやるけれども、 そうで ないものに補助金を申請する傾向がある と聞く 。だとしたら、 政府が R&D への 補助金を増やし たところで、企業による新製品や 新発見が増える効果は限定的、ということにな ってしまう 。

 言われてみれば、 政府が 投資減税 を検討し始めた タイミングは 確かに 遅か った。 6 月 5 日に安倍首相が 「成長戦略スピーチ第 3 弾」を発表したところ、 市場 の 失望感から日経平 均が 500 円も下げ た 。その直後から、「税制改正を前倒しして競争力強化を」と いう声が 上がっている1。すなわち投資減税は、市場に催促されて出した対策の逐次投入、ということである。だったらなぜ、成長戦略を議論する過程で出てこなかったのか。

 成長戦略や投資減税に大きな期待がかけられ てい る 現状 は、それ自体が一種の矛盾とい えよう。経済 活動 の主役は あくまで 民間企業 であって 、政府にできることは さほど大きく ない 。 にもかかわらず 、企業 経営者が「成長戦略の策定を政府にお願い」していたりする。 そ の 辺 に いかがわしさを感じる点では、筆者も 小幡氏 に同感である 。

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