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司法改革の「本音」

 今回の司法改革をめぐっては、最高裁、法務省の「本音」というテーマが、しばしば弁護士のなかで話題になってきました。司法制度改革審議会最終意見書以来、「オールジャパン」などといわれた、法曹三者が足並みをそろえての「改革」推進姿勢はあくまで表の顔ではないか。つまりは、本当に額面通り、この「改革」の必要性を積極的に認めているのか、ということに対する、疑念がつきまとっている、ということです。

 事実、何度も書いているように、法科大学院を中核とする新法曹養成制度を最高裁が受け入れた大きな要因は、法曹人口激増という数の問題の規定方針化でした。少なくとも取材で受けた最高裁関係者の感触は、「やむなし」というものでしたし、必ず強調されたのは、「現在の司法修習制度が悪いわけではない」ということで、法科大学院制度に協力するとしながら、この流れが司法修習無用論に発展することこそが、彼らの恐れとなったようでした。

 裁判員制度にしても、最高裁はかつて「国民の司法参加」に対する明確な消極論・懸念論を展開しています( 「『国民の司法参加』の不都合な真実」)し、導入に際して、姿勢の転換があったことは、法曹界では常識のようにいわれています。そして、その理由についても、いわれているような「国民の司法参加」の意義を積極的に認める方向への発想転換があったわけでも、ましてや現行の職業裁判官による裁判への大きな反省があったわけでもなく、素人に評決権を与えても、司法判断への影響を最小にできる見込みと、国民参加によって判決批判をかわせる、といったヨミがあったという見方もなされています(高山俊吉弁護士「裁判員制度はいらない」)。

 法務省についても、当初、「国民の司法参加」に積極姿勢だったわけではなく、そもそも司法改革そのものも、どちらかといえば、自らの「改革」よりも、弁護士の改革という受けとめ方が強く、文科省の意向を背景とした新法曹養成制度にしても、当初、積極的な推進姿勢をとったという印象はありません。

 これらの姿勢転換のなかには、彼らのそれこそある「本音」が見え隠れしているようにとれます。あくまでこれも、「感触」という断り書きをつけますが、「改革」の流れ、あるいは規定方針化のなかで、これらに疑問や否定的な考え方を持ちながらも、あえてその足を引っ張るような立場にはならないという、政治的な選択があったのではないか、ということです。端的に言えば、失敗するのであれば、やってみて、しかも協力という姿勢を取ったうえで、「残念ながら」という立場の方が望ましく、自分たちの消極姿勢や反対によって、「改革」が失敗したとされない道を選んだ方が得策、という判断が働いたということです。

 こういう「本音」のとらえ方で、一番、不可解というべきなのが、給費制廃止ではないか、とも思います。最高裁が貸与制に反対しない背景に、「返還免除」による任官優遇があるといったこともいわれてきましたが、法科大学院強制化に加えた給費制廃止が、法曹養成に関連した、最高裁の「最大関心事」といわれてきた「若くて優秀な人材確保」に支障をきたす、少なくとも良い方に作用しないことは、火を見るより明らかだったように思うからです(Schulze BLOG「最高裁の本音はどこにある?」)。もはやこれまた前記「最大関心事」での、最高裁の最大のライバルとされる大手法律事務所に優秀な人材の目が向くことになっているという、案の定の結果にもなっています。ここには、大きな誤算があったということなのでしょうか。

 ちなみに日弁連・弁護士会の「本音」はどうか、といわれれば、一番、わけが分からないというべきかもしれません。これまで日弁連の「正義」の主張を本音で主張した人と建て前で主張した人、その結果についても、さまざまな思惑や期待を被せた人たちが、「市民のための改革」や「二割司法」というスローガンのもとにいたように思うからです。それを証明するように、一つの結果が出ている今も、「案の定」という人、誤算を認める人、本心から決着していないと思っている人、内心決着したかもしれないと思いつつ決着していないと言い張る人などがひしめいているようにみえるのが、現在の弁護士会です。

 こうした「本音」の詮索に何の意味があるのか、という意見もあるかもしれません。政治的な判断が働いたといっても、そうした判断に立つ選択そのものも彼らの「本音」である、といわれれば、それまでかもしれません。ただ、それでも私たちがここにこだわらなければいけないと思うのは、彼らの「本音」を伏せた「推進」姿勢が、社会に対して、「改革」の問題のある実相を伝えず、別のイメージを与えるものにならなかったのか、という疑問が残るからです。

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