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今こそ救急車で国家を救ってくれ

なんで、こんなにスピードが遅いのだ? 今から11年前の10月、山国の知事に就任した当初、遅々として進まぬ行政の仕事振りに、僕は疑問を抱きました。

それが翌年2月、「『脱ダム』宣言」を発するに至った理由です。洪水を防ぐ上で「真に必要な事業」と30年も前から“巧言”しながら、着工すらしていないダム計画が複数存在していました。

10億円を優に超える調査費が投じられる一方、1平米1万円で実施可能な河床整理と呼ばれる浚渫(しゅんせつ)も、破堤を防ぐ護岸補修も、何(いづ)れも手付かずの本末転倒振りでした。僅(わず)かな費用で可能な治水の実施ではなく、巨額の金額が動くダムという装置を望んでいたのです。

他方で、課長、部長の印鑑が押された書類に僕がサインするや、猛烈なスピードで歯車が回転し出す行政という組織の恐ろしさも痛感しました。自宅に戻るも今一つ腑に落ちず、もう一度考え直そうよ、と翌朝にガラス張り知事室で呟くと、政策秘書室長に諭されました。「知事、貴方は既に“決裁”したのです」と。

旧自治省から副知事を経て20年間に亘り権勢を振るった前任者に重用された、“上を向いて歩こう”が身上な筈の幹部職員が僕に対しては尽(ことごと)く面従腹背を決め込む中、腹心として僕を6年間、支えてくれたのが一回り年上の彼です。その彼は、指導者の判断は“重い”のだ、その孤独と向き合わねばならぬのだ、と僕に教えてくれました。

組織の体面を保つ為、ではありません。朝令暮改では組織が機能しなくなる、即ち、信が立たなくなる、と彼は教えてくれたのです。取り分け、予算措置を伴う判断に関しては、と。

翻って宰相NÖDÁは、財務大臣として自ら昨年12月に「決裁」した公務員宿舎建設事業を覆しました。君子豹変す。が、「中止」に非ず「凍結」。中途半端な問題先送りは「英断」という賞賛でなく、「優柔」というブーメラン化しています。

而(しか)も、埼玉県朝霞市に留まらず東京都でも千代田・中央・港3区の国家公務員宿舎は廃止・売却すると「決断」したものの、凍結中の杉並区方南町の宿舎は29億円を投じて建設着工を指示する“二枚舌”振りです。

「政権当初から乱暴なスピード違反は出来ない」と“安全運転”継続宣言を発した宰相。しかし真っ当な国民は、スピード違反? 今こそ救急車で国家を救ってくれ、と嘆息しているのではありますまいか。

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