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秋田書店にブラックジャックのメスを - ブラック企業とたたかう首都圏青年ユニオン山田真吾事務局長

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 「秋田書店」と言えば私自身『週刊少年チャンピオン』を愛読していた時期がありました。なかでも手塚治虫の『ブラック・ジャック』や『七色いんこ』は、毎週欠かさず読むだけでなくコミック全巻揃えてのヘビーローテーションな作品でした。

 『ブラック・ジャック』も『七色いんこ』も、ストレートな勧善懲悪ものではありませんでしたが、基本、弱い者に寄り添い、弱い者いじめをする大金持ちや権力者とは徹底してたたかうストーリーでした。

 そんな名作マンガを世に送り出してきた「秋田書店」が、じつは「逆ギレブラック企業のチャンピオン」であり、その病巣にブラック・ジャックのメスを入れる必要があることが判明しました。

 ブラック企業「秋田書店」の病巣にメスを入れる現代のブラック・ジャックは首都圏青年ユニオン です。今回の事件のあらましは、首都圏青年ユニオンのホームページに「秋田書店:景品水増し、不当解雇事件」としてアップ されていますので、ぜひお読みください。

 いま秋田書店のホームページには、ブラック・ジャックならぬ「ブラック社告」がアップ されていて、あきれ果てますが、一方で、「企業情報」のところには、「秋田書店は創立者故秋田貞夫が、戦後間もない世情騒然とした昭和23年に『日本の子どもたちに正義の精神と夢の世界を取り戻し、希望を与えよう』と出版を志して、月刊誌『冒険王』を創刊して以来、少年・少女漫画誌を中心に創立の志を忘れず、出版社の使命と責任を果たすべく、努力しております。」 などと今でも書かれています。それならば今回の「景品水増し、不当解雇事件」についても、「創立の志を忘れず」に一刻も早く「正義の精神と夢の世界を取り戻し、希望を与え」る出版社にあらためてもらいたいものです。

 それで、私、首都圏青年ユニオン事務局長の山田真吾さんにインタビューしたことがありますので、そのインタビューの一部を以下紹介させていただきます。(※このインタビューは、今年の2月13日に収録したものです。byノックオン。ツイッターアカウントはkokkoippan)

ブラック企業の濃度見極め働くほかない若者
――雇用劣化とたたかう首都圏青年ユニオン
首都圏青年ユニオン 山田真吾事務局長インタビュー

 ブラック企業が広がり、「違法の3点セット」などが横行する職場で苦しむ若者からの労働相談を受け、社会的な労働運動を進める首都圏青年ユニオン事務局長の山田真吾さんにお話をうかがいました。(※本文中のゴシック体は私の設問です)

 ――首都圏青年ユニオンに寄せられる労働相談にはどういった特徴があるのでしょうか。

 私たちに寄せられる労働相談はそもそも法律が守られていない、労働基準法がまったく守られていないものが大半です。

 今日も昼間に労働相談があったのは、女性の方で、ハローワークで仕事を紹介されて就職したけれど、パワーハラスメントの被害にあって、そのことを訴えたら、会社から「3月末で雇い止めだ。3月末までまだ間があるが、出社したくなかったら会社から休業補償はするから出勤しなくてもいい」と言われたというものでした。パワハラや暴力の被害にあう若者が多くなっていて、夜中の12時に来るメール相談などもよくあります。

「違法の3点セット」と乱暴な解雇

 首都圏青年ユニオンに寄せられる労働相談の特徴を「違法の3点セット」と言っています。「違法の3点セット」というのは、1つは残業代や深夜割り増しが払われていないこと、2つは社会保険や雇用保険に加入できるのに入れてもらえないこと、3つは有給休暇を使うことができないということです。この「違法の3点セット」に加えて、「もう明日から来なくていい」とか、「来月で雇い止めだ」などという乱暴な解雇や雇い止めの相談が増えているのが特徴です。

アルバイト1万人超の残業代未払いを是正

 ――それぞれの具体的な事例はどういったものがあるのでしょうか。

 残業代・深夜割り増し未払いでの大きな事件は、牛丼チェーンのすき家です。すき家のアルバイトは変形労働時間制というシステムが違法に運用されていて残業代がきちんと払われない中で働かされていました。シフトを入れてもそのシフトが大きく変更されたり、労働時間がそもそも1カ月固定的ではなくて、お店の売上が悪かったら途中で労働時間が変更されたりするなどで、残業代が未払いになっていたのです。首都圏青年ユニオンによる団体交渉などによって残業代の未払いを是正させ、変形労働時間制をすき家から撤廃させることができました。その結果、1万人以上のアルバイトの残業代を適法なものに変えさせることができたのです。

 残業代の未払いというのは本当に大きな問題だと思います。たとえば私が街を歩いている人の財布からお金を盗んだら、私はすぐに警察に捕まりますが、残業代の未払いは、労働者の財布から経営者がお金を盗むことと同じであるのに、職場の中ではそれが窃盗という認識がないまま恒常的に行われているわけです。市民社会ではあり得ないような違法な状態が、職場では常に横行しているのです。サービス残業ももちろん違法ですが、そもそも正当な対価を払わないということにものすごく憤りを感じますね。

社会保険・雇用保険に加入させない

 それから、社会保険は標準的な労働者の4分の3以上、雇用保険は週20時間以上働いていれば加入できることになっているのに、それをアルバイトだから入れないとか、パートだから入れないとか、働き方の名称で勝手に決めつけて社会保険・雇用保険に加入させないという事例が多くあります。

 いま寄せられている労働相談は、「社会保険に入れてください」と言ったら「その分、あなたの給料から保険料が天引きされるから、いまも低い給料なのに保険料を払うのがきつくないですか」「給料から保険料が天引きされるから、あなたは入らないほうが得なんじゃないですか」などと会社に言われたというものです。本当だったら社会保険に加入させなければいけないのを分かっているにもかかわらず、そういう言い方をしてくる会社が増えています。

 また、労働者が「社会保険と雇用保険に入れてください」と言うと、「いまはあなたの働き方を見極めているところだからまだ入れられません」とか、「正社員じゃないと入れない」などと会社に言われて、労働者の方も法律を知らないのでそれを信用してしまってそのまま働いているケースも多いのです。

 一方で、「社会保険も雇用保険も自分は健康だから病院に行かないし保険料を払うのはもったいない」とか、「年金なんてそもそも自分の世代でもらえるかどうかわからないから払うだけ無駄でしょ」という声もあるなど、社会保障の位置づけがきちんと広まっていない中で、若者が社会保険・雇用保険に入ることのメリットをなかなか感じられないという問題もあります。

「有給休暇を使いたい」と言ったら解雇

 有給休暇の未取得の問題については、そもそも有給休暇の使い方がわからないといった相談から、「学生アルバイトの私が有給休暇を使えるのでしょうか?」というものもありますし、「有給休暇を使いたい」と会社に言ったら、「そんなに休みたいなら会社を辞めろ」と言われて解雇されてしまったという相談なども多く寄せられています。

 会社が余裕のある人員配置をしないために、1人でも抜けたら職場が回らないような状態になっていて、有給休暇は労働者がからだを休めるためにある制度ですが、「有給休暇を使いたい」と言った途端に、「あの人は私たちが忙しいのに勝手に休む人間なんだ」という扱われ方を同僚からもされてしまうような状況も広がっています。

 「義務を果たしていないのに権利だけ主張するな」という言い方をする経営者もいて、有給休暇は義務を果たすとか何かをしなければ使えない制度ではまったくないにもかかわらず、有給休暇を使わせない事例が多くあります。休みたくても休めないというのは本当に深刻なもので、からだが悲鳴をあげているにもかかわらず、それを無視して働かせるということは、結果的にはからだを壊す、心を壊す、ひどくなると過労死・過労自死(自殺)というような状況になるわけです。労働力を再生産するために休暇を取ることが必要なのに、それをさせない会社が増えているのです。

 こうした「違法の3点セット」をすべて行っていない会社を探す方がむずかしいような状況が広がってきています。

すき家の団体交渉拒否問題

 ――先ほどすき家の残業代未払いを是正させた事例がありましたが、団体交渉拒否の問題についてもお聞かせください。

 すき家で変形労働時間制を適法にさせたことで会社は残業代を払いましたが、残業代は過去2年までさかのぼって請求することができるので、マスコミ報道を見た全国のすき家の労働者が首都圏青年ユニオンに加入して、すき家に対し団体交渉を申し入れました。そうすると、それまでは団体交渉を行ってきたすき家が掌を返して「首都圏青年ユニオンのような合同労組は労働組合ではない」「組合員の全員の名簿を出せ」「出席者を限定しろ」など理不尽なことを言って団体交渉を拒否してきたのです。

 この団体交渉拒否をめぐっては2つの闘いがありました。1つは、団体交渉拒否は労働組合法違反ですから、私たちは不当労働行為の救済申し立てを東京都の労働委員会に行いました。東京都の労働委員会では当然、すき家の団体交渉は違法だという扱いで命令が下ったわけです。中央労働委員会でもすき家は断罪されたのですが命令取り消し訴訟をすき家は東京地裁に起こします。しかし、東京地裁・東京高裁でもすき家の主張は認められず、私たちが完全勝利して、最高裁に移ったわけですが、昨年12月にすき家が上告を取り下げたという行政訴訟の団体交渉拒否事件が1つです。

 もう1つが、私たちの団体交渉を拒否していることで組合員の組織拡大ができない、組合員の要求が通らないということでユニオンからすき家に対して損害賠償請求の裁判を起こしていました。この件も団体交渉拒否の解決と同時に私たちが勝つことができました。

 現在は、すき家に対して団体交渉を申し入れていますが、すき家がのらりくらりとした対応をしていて、今の時点ではまだ団体交渉は開かれていませんが、これを機に全国のすき家のアルバイトの労働条件を改善しくていくことと同時に、すき家は一時期「すき家強盗」といわれるぐらい深夜帯の強盗が多かったので、こうした問題に対しても深夜帯に働く人たちの適正な人員配置をせよということを盛り込んで要求書をつくっています。

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