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風立ちぬとタバコ

風立ちぬ、を昨日の夜観てきました。 ジブリ映画で一番好きとまではいかなそうですが、かなり好きな映画になりそうです。 (個人的ベストは「魔女の宅急便」、次が「ラピュタ」かな) 

創造者の苦悩とエゴイズム、それを取り巻く現実世界という描写がモームの「月と六ペンス」を読んでいるような印象を画面から受けました。ストリックランドが前面、外に出る溢れた燃えるような情熱だとしたら、堀越次郎は全く対比的な内に深く秘めた原罪とも言えるような情熱です。

リンク先を見る月と六ペンス (岩波文庫)
モーム 行方 昭夫
岩波書店
2010-07-15
by G-Tools


映画が始まったらすっかり没頭してしまっていて、「そういえばこの映画の主人公の声は、庵野秀明だったんだ」というのを映画も半分過ぎてやっと思い出しました。

さて、この「風立ちぬ」でのタバコの描写が賛否両論を招いているようなのですが、個人的には「これが非難の対象になってしまうのか・・・」と見終わって感じました。

私自身はタバコを吸いませんし、喫煙を推奨したいという気持ちはありません。

この映画の中で出てくるタバコは「美味しそう」というよりも後に訪れる「破滅」や「死」への暗喩であったり、主人公達の現状への苛立ちを描写したものだという印象が強く残りました。

軽井沢のホテルでドイツ人が「これがドイツから持ってきた最後のタバコになってしまった」と嘆きながら、主人公である堀越次郎から日本のタバコをもらって吸うシーンもありますが、このシーンも単に嗜好物が無くなってしまうという見方もできますが、物質が欠乏していく時代背景や、煙が燻っている、戦況がどんどんと悪化していく方向にあるという暗喩ととれます。

さらにネタバレになってしまうので、映画を観ていない人は読まないでいただきたいのですが、特に非難がされている堀越次郎が結核を患っている妻、菜穂子の隣で手を繋いでタバコを吸うシーンですが、それだけこの妻の病気が重く、余命わずかという描写なのだと思うのですよね。

入院して食事制限されていた患者が「もう好きなものを食べていいですよ」と言われて退院するお決まりのシーンと一緒です。

もう直らぬ病だということを二人とも知っているからこそ、あの場面で堀越次郎は妻の隣でタバコを吸った。

そして、タバコという害あるものを吸うという行為が、戦闘機という人を殺害する兵器を創るために己の仕事を捧げる堀越次郎の原罪の描写でもあり、その次郎の情熱を誰よりも理解し、残された時間を厳しい状況でも一緒に過ごしたかったという妻、菜穂子の強い愛情・覚悟のようなものを感じました。

その菜穂子の気持ちを理解したのだからこそ、タバコを吸わないことで菜穂子に気を使わせたくなかった次郎があの場面でタバコを吸ったのではないか。

なので時代背景以前に、この映画でのタバコは、「死への予兆」、「現状への苛立ち」、「燻る戦火」、「命を削っても創造を続けるためのもの」の暗喩であって、あれを観てタバコを吸いたいという気持ちになるものではないと思うんですよね。

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