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映画「風立ちぬ」とタバコ。ドラマ半沢直樹との共通点

期待はずれでした。映画館で見る必要ない。レンタルで十分。いやレンタルでわざわざ見る必要もないかも。「それでだから何?」という映画だった。今話題の宮崎駿監督の映画「風立ちぬ」見てきましたが。

・・・ここからネタバレ注意・・・

ただこの映画、思わぬ場外乱闘が起きている。それはタバコ。NPO法人「日本禁煙学会」が映画のタバコの描写について苦言を呈したという。喫煙シーンの描写が多いことに加えて、肺結核で伏している妻の手を握りながらの喫煙描写と、学生の“もらいタバコ”のシーンが、子供たちに悪影響を与えると文句を言っている。

私は大の嫌煙家でタバコはこの世からなくなった方がいいと思っているが、このバカげた「日本禁煙学会」のクレームニュースを見てアホかと思った。こういうバカがいるから、喫煙者からバカにされ、禁煙社会ができないのだ。これでは逆効果。表現の自由を規制する“ファシスト”かと思う。

これに対して「喫煙文化研究会」(代表すぎやまこういち)が反論の見解を出した。当時の喫煙率から考えれば、タバコのシーンがあっても何らおかしくはないし、表現の自由が認められているから、何らおかしくはないと。大の嫌煙家だが、この件については愛煙家団体の方が正しいと思う。嫌煙を気取ってみっともないマネしないでほしい。

ただ自民党の改憲案が通れば、表現の自由は国家の手のひらの上だから、「風立ちぬ」をタバコの観点から上映中止に追い込むことは可能になるだろう。

ただ確かにやたらタバコのシーンが多い。多すぎる。意味があるのかと思う。多分2/3ぐらいはいらない。映画にとって必要がない。全体的につまらない展開の中で、もっとおもしろくするために喫煙なんかじゃなく、描写すべきことがあるんじゃないか。

しかも映画が始まる前に、スタジオジブリの宣伝動画が出てくるのだが、そこでほんの数秒、宮崎駿監督が出てきて、そのわずか数秒のカットにもかかわらず、監督がタバコ吸ってる姿が出てくる。これを見て思うのは、ような今の時代感覚を捉えられない、昔の価値観に引きずられた、過去の表現者だということだ。

宣伝動画にタバコ吸っている自分の姿を写させて、かっこいいと思っているその前時代的な価値観でいるから、最近は駄作が多く、今回の映画もたいしたことがなかったんだろう。

ただこの映画で重要なのは、まさに禁煙学会が指摘した、肺結核で伏している妻の手を握りながらの喫煙描写シーンにあると思う。禁煙学会は「なぜこの場面でタバコが使われなくてはならなかったのでしょうか。他の方法でも十分表現できたはず」といっているが、とんでもない。

映画を見ればわかるが、この映画の主題は、今の世の中にはほとんどいなくなった、男性にとって都合のいい理想の女性像の回顧録なんだもん。

つまらなかった映画だけど、主人公の妻にはすっかり惚れちゃいます。「こんな女性がいたら最高!」「こんな女性を妻にしたい!」と男性目線で見ると思ってしまいます。すごいいです。この妻。ああ~、こんな女性がいたらな~。そういう男性の妄想、男性のエゴを描いた映画でしょ。だから年配の男性がこの映画を見たら溜飲を下げるに違いない。映画を見終えた後、隣に座っていた60歳代ぐらいの男性が、一緒に見に来ていた妻と思われる女性に「この映画いいね!」と言っていたが、この年代には受けるんじゃないかな。

男性にとって都合のいいかわいいヒロイン役はたまらないです。そこだけは眠らずに見れた。男性が家庭をかえりみず、仕事に没頭しても、なんらとがめることは一切しない。とがめるどころか、家に仕事を持ち帰って仕事をする夫に、仕事してる姿がかっこいいとか言わせちゃうわけです。こういうのって、男性にとって理想ですよね。

ましてや肺結核で療養が必要なのに、会いたくてしかたがなくて、わざわざ男性のところに押しかけてくれる女性なんて、それだけで男性にとっては胸キュンじゃないですか。病気を患って男性がセックスを遠慮しているのに、「きて」と誘いかけるシーンも男性にとってはたまらない。東京ラブストーリーの鈴木保奈美を思い出した。「セックスしよう!」とあの名シーンですな。あのシーンにどれだけの男性が萌えたことか。

だからこそ肺結核で妻が寝ているそばで、夫がタバコを吸うシーンには意味がある。夫のためなら自分の健康を害しても、どんなわがままもきいてくれる甲斐甲斐しい女性。男性の妄想の中にある理想の女性像が、この映画の主題なのだから、そこでタバコを吸わせることが重要だ。いい悪いの問題ではなく。

そういう意味では、今大人気のドラマ「半沢直樹」にも共通項がある。上戸彩演じる主人公の妻が、「こんな奥さんいるかよ?」と思うほど、男性にとって都合のいい妄想妻なのだ。

・・・ここから半沢直樹のネタバレ注意・・・

上司とケンカしてエリートコースから外れ、海外転勤させられちゃうかもしれない夫を、まったく非難することなく、受け入れる優しさ。本当は妻にはやりたい仕事があるのに、旦那さんが一番だからといって、自分のやりたいことをせずに、家庭を優先するけなげな妻。ご近所関係で苦労しているのに、苦労のそぶりを見せず、むしろ夫の仕事の役に立とうと気を使う姿。

挙句の果てに、短期間バイトをして、そのお金で夫に仕事に使うカバンを買ってあげるなんて、これはもう完全に男性目線の理想形妻、今やそんな女性どこにいるんじゃというぐらい妄想妻が描かれていて、これも半沢直樹が人気の秘訣の要因の一つなんじゃないかと思う。

まあ半沢直樹のおもしろさは、本筋にあるし、そんなにしょっちゅう上戸彩が出てくるわけではないけれど、映画「風立ちぬ」との共通項でいえば、「そんな妻はもはや今の世の中にはいないかもしれないけど、男性にとって妄想であり続ける理想形の妻」を見事に描いている点だろう。

その点だけが際立っていた映画「風立ちぬ」。だからあのタバコのシーンは、この映画の主題には欠かせない絶対必要な要素なんだろうけど、そんなところぐらいしか記憶に残らず、あとは何を言いたいんだかよくわからない映画は、映画館で見る必要まったくないです。

前時代的な価値観を懐かしむ、男性視点の仕事ロマン映画。年配世代の男性にはたまらない映画かもしれない。

喫煙シーンが問題という以前に、わざわざ見るまでもない映画です。

・ちなみに池田信夫氏の「タバコに甘い日本人」という記事は実におもしろい。
池田氏は原発なんて危険じゃねえという派なので、そこは原発反対の私とは真逆の意見だが、原発より前にタバコの危険に気づけっていうのはもっとも。
http://blogos.com/article/68202/

・タバコの煙は100ミリシーベルトの放射線と同じ危険
http://kasakoblog.exblog.jp/14673971/

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