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終戦記念日と美人と作られた常識(再掲)

月15日になると必ず放送される、皇居前広場で敗戦を嘆く人びとの映像がある。

その中に、子どものころから不思議だった場面がある。

下のYouTubeでは4分03秒から出てくる、妙齢の女性が泣くシーンだ。

顔を隠しているとはいえ、美人であることは明らか。いかなる状況でも、美人を撮るのが、カメラマンの本能だ。だが、不思議なのはこの点ではない。

この女性は、パーマをかけている。

日本史では、戦時中の昭和18年末に電髪(パーマのこと)禁止令が出された、と教わった。また、東京一帯は空襲で焼け野原になった、と教えられた。だがこの女性は、パーマをかけている。ということは、このとき、(おそらく)東京都内で美容室が営業され、パーマが行われていたことを示している。しかも、禁止されたパーマをかけて東京都内を歩く女性を「非国民」と指弾する者も、いなかったことになる。

もちろん、この映像に疑問を差し挟む余地は多い。「玉音放送」の音声がかぶせられることの多いこの映像だが、昭和20年8月15日当時、玉音放送が降伏の表明であることを事前に知る者はごく少数だったから、この女性が玉音放送前に皇居に駆けつけ、放送を聞きながら泣いた可能性は低い。降伏を知ってから皇居前に出かけたのだろう。だが、それならこの女性は、この時たまたまパーマをかけていたか、あるいは、終戦を知り、皇居前に出かける際、身だしなみとしてパーマをかけたかのいずれか、ということになる。いずれにしても、授業で習った戦時・戦後下の風景とはずいぶん違う。

不思議と言えば、同じく8月15日に撮影されたという、この写真も不思議だ。

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寄り添って泣く3人の女学生だが、手前の女学生は、半袖の白い薄手のブラウスを着ており、華奢な背中に下着の肩紐が透けて見えている。中学生男子のリビドーを、いたく刺激する格好だ。また、よく見ると、柄物のスカートを穿いている。やはりカメラマンの本能として、その場にいた最も「絵になる」被写体を撮ったと思われるが、それにしても、「国民服にモンペを強制されていた」という教科書的常識とは、ずいぶん違う。また、教科書的常識に照らせば「ど派手」な格好なのに、「はしたない!」と叱る大人がいなかったと見える。

戦時中の日本は軍部独裁の暗い時代だった、という「常識」は、おそらく間違いである。より正確にいうなら、「作られた常識」だ。たとえば、「鬼畜米英」「撃ちして止まむ」などの悲壮な標語は、その多くが昭和18年以降に生まれている。つまり、本当に暗かったのは、負けが決まった後、つまり終戦前の2年ほどに過ぎない。また、軍部が独裁色を露わにしたのは、戦局が不利になり責任論が浮上した後のことだ。しかも一般国民は、政府がヒステリックに叫ぶ「電髪禁止令」や「国民服にモンペ」を適当に受け流し、それなりにおしゃれや贅沢を楽しんでいたし、それを非国民と指弾する声も小さかった。そのあらわれが、婦人のパーマであり、女学生のブラウスと下着の肩紐ではないか。

もちろん、たったこれだけの資料から、何かを断言することはできない。だが少なくとも、教科書的「常識」を疑う必要を、これらの写真から読み取るべきだと思う。

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