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非正規労働者も襲うブラック企業-サービス残業・全国配転・パワハラ増-企業の指揮命令権に制約を

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職場に団結体=労働組合をつくることが最も重要

 ――労働組合の規制力を考える場合に、ヨーロッパの産業別労働組合とは違う日本の企業別労働組合の問題をどう考えればいいのでしょうか。

 ◆JMIU(全日本金属情報機器労働組合)書記長・三木陵一さん 労働組合の規制力という言葉をどうとらえるかはなかなか難しいのですが、ヨーロッパの場合でもフランス型やドイツ型、北欧型と労働組合のあり方もいろいろと違うと思います。たとえば、賃金を企業横断的に形成していって、A社でもB社でもC社でもどの企業で働いていても基本的には同じ仕事をしていたら、同じ賃金を得られるという意味での規制力は、ヨーロッパでの産業別労働組合が果たしている役割は非常に大きいですね。

 ただ、ブラック企業の問題は、それぞれの具体的な職場での企業の指揮命令権、いわば経営側の横暴をどう規制していくのかということです。もちろん産業別労働組合の果たす役割や、あるいは地域ユニオンの果たす役割を、私は決して軽視はできませんが、やっぱり大事なのは職場に労働者の団結体である労働組合をきちんとつくっていくということが大事だと思うのですね。

 企業別労働組合に対する批判というのは、もちろん私たちも大いにやっているのですけれども、批判の仕方を間違えてしまうと、職場に団結体である労働組合をつくるという視点が弱くなってしまいかねません。この視点の弱さが今の労働組合運動の最大の弱点のひとつなので、強めていく必要があると思っています。

 たとえば、ブラック企業で働く労働者から労働相談がきたときに、労働組合としてどう対応したらいいのかといった場合、もちろんとても困難で、口で言うほどやさしくはないのですが、やっぱりそこに1人ではなくて、2人、3人と仲間を増やして職場に労働組合をつくることに労働組合はもっと執着して徹底して追求していくことが大事だと思います。

 そういう意味で言うと、「ブラック企業にどう対抗していくのか」という問いは、「ブラック企業にどう労働組合をつくっていくのか」と言い換えていいくらいだと思うのですね。とても困難だけれども、まともな労働組合を職場につくっていくことを避けては、ブラック企業はなくせないと思うのです。

 労組の規制がないからブラック企業に

 ――若者を使いつぶすようなブラック企業の指揮命令権に対して、個々の職場で労働組合をつくって規制していく必要があるということですね。

 ◆POSSE代表・今野晴貴さん そうですね。従来の労使関係も含めてのいわゆる日本型雇用が守られている日本型企業というのは、ブラック企業ではないわけですよ。そこをまずはっきりさせておく必要があります。先ほど私は、日本型雇用に続く構図がブラック企業につながっていくとは言いましたけれど、労働組合が規制できていればブラック企業ではありません。なぜなら、従来の日本型雇用の中からは、そういう批判はあまり出てきませんでしたし、確かに日本型雇用のもとで企業の指揮命令権は多少強かったけれども、それは労働者を使いつぶすものではなかったわけですし、それは労働組合が実践的に抑え込んでいたわけです。

 ブラック企業は、日本型雇用という同じ軸線上にあっても労働組合の規制がまったくないなかで、企業の指揮命令権を悪用して労働者を使いつぶすものです。このポイントを峻別しないで、日本型雇用が悪いとか、どの企業もブラックだとか言っていても意味がありません。

 三木さんが強調されたように、私も職場にまともな労働組合をつくらなければいけないという話にまったく同感です。

 要するにブラック企業というのは労使関係が不在になってしまっているのです。ですからブラック企業は日本型雇用ではないのです。でも、従来の日本型雇用をみんなが信用してしまっている面があって、ブラック企業でも正社員だとすると、それは日本型雇用だとみんな思い込んでいるので、親も教師も正社員で入りなさいと言ってしまう。でも若者が入ってみると正社員というのは名ばかりで、労使関係の不在のなか企業は若者を使いつぶすことをねらいにしている。ですから、ブラック企業の中に労使関係を打ち立てなければいけないことがいちばんの基本になると思います。それは職場レベルでもそうだし、できれば産業レベルとか、あるいはもっと言って、労働問題が社会問題になって、大きな社会運動として広がっていかなければならないと思います。

 今回こういう座談会を企画していただいたり、ネットで発信していただけるというのはまさにそういうものだと思います。

 そして、私たちは労働問題を課題とするNPOなので、ブラック企業をなくすために、労働組合との連携はもちろん、親や教師、あるいは弁護士などいろいろな社会的アクターからしても、このブラック企業の問題は何とかして変えていかないといけないんだと、どれだけ社会問題として打ち出せるかが勝負だと思います。こういう幅広い社会的な運動が力を持ってくるなかで、法律制定運動なども広がり、それも背景にして職場でも労働組合をつくっていけると思います。幅広い社会運動と、職場に労働組合を広げていくことを、どれだけ相乗的につくっていけるかが大切だと考えています。

――三木さんのお話にあった成果主義の問題については、どうでしょうか。

 ◆POSSE代表・今野晴貴さん ヨーロッパなどの場合は、ベースに職務給があってその上に成果給になっているのに、日本では、今ある種の究極の成果主義が取られてきていて、年功賃金のベースそのものが無くなってすべて成果主義賃金だとなると、とくにブラック企業のようなところになってくると、先ほど話したように、基本給すらよく分からない状態に労働者は置かれますし、滅茶苦茶な不利益変更も企業側がやりたい放題になってしまいます。

 最近の労働相談で増えているのが、自分が正規社員なのか非正規社員なのかもよく分からないというものです。これは極端な例のように思われるかもしれませんが、中堅や大手の企業で働く人から、そういう労働相談が増えているのです。それは賃金の基本がどこにあって、どう決まっていくのかも、あいまいにされている。先ほど紹介した「残業代込みの基本給」のような非常にあいまいなものになってきていて、そこに成果給と言ってもさらに企業側の恣意的で一方的なものになってしまいます。

 成果主義賃金の本質は団交権の否定

 ◆JMIU(全日本金属情報機器労働組合)書記長・三木陵一さん 「成果主義とは何か?」「成果主義の本質は?」という問いに対する私たちJMIUの答えは、「団体交渉権の否定」です。つまり、成果主義の本質は、労働組合機能の否定ということにあると考えています。

 団体交渉権を否定するということは、労使で協議をして決めるという労使対等決定原則を否定するものだということです。

 これはまさに、経営側が労働者を支配従属化に置こうとするものです。この攻撃は、「能力主義」とか、「職能給」とか、昔から手を変え品を変え出てきているわけですけど、今、労働組合の弱体化とあわせて一気に出てきているのが、成果主義という名の団体交渉権の否定、労働組合機能の否定ではないでしょうか。

 成果主義というのは、単に賃金の問題だけにとどまりません。最初に日本IBMのロックアウト型解雇のケースをお話ししましたように、低評価の人は退職に追い込まれるわけですから、成果主義はまさに雇用破壊のツールになっているわけです。

 成果主義が雇用破壊のツールとして使われる問題は、おそらく公務労働者にも広がってくるのではないでしょうか。実際に大阪市では橋下徹市長が成果主義による低評価で退職させると言っているわけですから、先ほどお話しした外資系企業に広がっているPIPのやり方をそのまま公務に持ち込もうとしていると言えるでしょう。

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