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100歳の介護録02

 私の兄弟も、折に触れ母の元を訪れて話しかけておりますし、一週間に一度は、母も実家に帰るようにしております。

また、私自身も、地元にいる時は、朝、公務に赴く前には必ず母に会い、色々話しかけるように心掛けております。

 しかし、自宅にて孫、曾孫に囲まれての生活を作ってあげられないことを、長男として本当に申し訳なく思っております。

 現在、日本の高齢者の方々に対する国の手当は、介護保険制度を整えて、介護老人保険施設あるいは特別養護老人ホームを造り、介護認定がされると、介護保険を利用して、それら施設に入所して頂くことがに重点が置かれているのが現状です。

 ですから、私を含め、肉親の介護を、施設への入所にて行われる方々が多いですし、それも増加傾向にあります。よって、施設への入所待ちの方も多く、施設の数も不足している状況にあります。

 はたして、この手法が、人々の老後の幸せにつながっているのだろうかというのを、私は今現在、我が事として考えております。

 私は、10数年前、介護保険制度を制定する前に、文字通り侃々諤々の議論を行ったことを思い返しております。

介護度の進んだ人を施設に預ける際、介護保険が適用されるのは良しとしても、自宅で肉親を介護した場合、保険の適用を認めるか否かの議論でした。

 一方の論者は「子供が親の面倒を見るのは当然である。

したがって、その行為にお金を支払うのは筋が通らない」という論調であり、この意見が優勢となりました。

 結論として、別の意見も取り入れる形で意見がまとまりました。

すなわち、介護士の資格を持った人であるなら、例え自宅で自分の肉親の介護を行ったとしても、介護保険が適用されるという現制度の結論に達したのです。

 しかし、考えてみてください。

殆どの方が介護士の資格を持っておられないのです。

ですから、施設に要介護の肉親を預ければ、一割の負担で済みますが、自宅で介護する場合、介護士の資格がない限り、全額自己負担で介護しなければならないのです。

 よって施設に預かってもらったほうが、介護保険の適用を受けられ、得であるとの考えとなり、ますます、施設の利用者が増える状況になっております。

 重複を恐れず申し上げますが、果たして、人生最後の時を迎える方々が、誰もが幸せな時間を過ごしているだろうか。改めて、この問題に対し、深い考察をしなければならい状況に至っているのではないでしょうか。

 私自身の経験から照らして、介護される人の幸福度を考えるならば、自宅にて子や孫に囲まれているほうが、安心感や充実感、言うならば「生きる感」は高いのではないかと思います。

 施設にて万全のケアを受けられていても、コミュニケーションに関して言えば、なかなか肉親と同じという訳には参りません。

日本人の一般的な感性からすれば、ケアを受ける側は、どうしても遠慮勝ちになってしまいます。

 こうした言わば、「主導的な会話や行動が制約される生活」となりますと、脳細胞の活動が低下してしまうのではないでしょうか? 

外からの刺激が減少すると、それが無くとも生活できるように、脳の活動がその生活に合わせてしまうのかもしれません。

それをただじっと待つしかない生活というのは、非常に辛いなものではないでしょうか。

 元々意識がしっかりされている方が、外からの刺激の少ない生活を強いられる、言わば「孤独の洞窟」にいれられ、寂寥感に耐え忍ばなければならないのでは、余りにも悲しい事ではないでしょうか。

 この問題を解決する一つの手段として、私が強く主張したいのは、自宅で肉親を介護した場合において、一定の制約を設けるにしても、介護保険の適用の余地を認めるよう、制度を改定すべきではないかということです。

 何度も申し上げてますように、人生の黄昏は、自宅で迎えるのが幸福であると思うのですが、核家族化が進んでいる昨今においては、現実問題として、それは極めて困難であることも事実です。

 ですから、訪問ヘルパー等のサービスを利用するのと同時に、出来れば、地域社会も協力するという体制が整えられればと思っております。

 具体的に申しますと、昼間は地域のグループで、ご年配の方々を預かって頂き、夕刻にはご自宅に帰っていただく。

そのために必要な作業については、ヘルパー等を介護保険にて利用できる。

こういった仕組みを設ける必要があるのではないでしょうか。

 昔からの自分の知人とコミュニケーションを取りながら、老いの人生を日一日と過ごしていく。これこそ、幸せな老後の生活ではないでしょうか。

 私事で恐縮ですが、私の母親は、現在103歳です。

日一日、時が過ぎるのをじっと待っている母の忍耐力は、たいしたものだと思いますが、心の輝き、充足感が薄れていく日々を過ごしていく事の辛さは、想像に余りあります。

 介護保険の趣旨は、ご年配の方々が、より充実した人生を過ごして頂き、なおかつ、その周囲の方々のご負担を極力軽減させることにあります。

 介護保険制度が設けられてから、十数年経過いたしました。各種施設を設ければそれで良しという風潮を改め、真に必要な手当ては何であるかを考えるべきです。

 この大きな問題にメスを入れるべく、国政へと強く訴えかけていくのは、母親の介護を実経験した私の使命であると決意を新たにしております。

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