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ふなっしーグランプリ!〜変容するゆるキャラへの認識(1)

船橋非公認キャラ・ふなっしーがグランプリに輝いた!

日本百貨店協会が開催する「ご当地キャラ総選挙」の結果が発表され、船橋市の非公認ゆるきゃら「ふなっしー」がグランプリに輝いた。二位は岡崎市の「オカザえもん」、そして三位が高松琴平鉄道の「ことちゃん」だった。

このランキングの特徴は、ベスト7の中に五つも「あまりかわいくない」というか「不気味」、まあ両方を掛け合わせれば「キモかわいい」キャラクターがリストアップされていることだ。ふなっしー、オカザえもん、ことちゃん、イーサキング、そしてメロン熊がそれだ。1位のふなっしーはどうみても素人が製作したようながさつな出来、オカザえもんは顔が岡崎の「岡」になっている(そして申し訳程度に胴体に「崎」がつけられている)「おやじ顔」、ことちゃんはほとんど表情がない、伊佐市の公認キャラ・イーサキングはただのキモいトランプのキング、夕張のメロン熊に至ってはメロンとリアル(グロ?)なクマのミスマッチでひたすら不気味だ。

しかしながら、これらが上位を占めたということは、いわゆる「かわいい」と表現されるようなキャラクター(かつての「ひこにゃん」や「ぐんまちゃん」のような)が後退しているということ。ということは、今回の結果は、ご当地キャラ=ゆるキャラも一つのターニングポイントを迎えたことを示していると見ていいだろう。そこで今回はゆるキャラの変遷についてメディア論的に考えてみたいと思う。

便宜上ゆるキャラを三つの時期に分けてみたい。第一期:みうらじゅんがゆるキャラを取り上げた時期、第二期:くまモンのブレイクまで、そして第三期:現在。

第一期:名前が一人歩きした時代(2005年~)

まず第一期。みうらじゅんは地方に出現し始めたご当地キャラクターを「ゆるキャラ」と命名する。これはキャラクターとしての文法的詰め、企画の詰めが甘く、いわばコンセプト的にスキだらけ。つまり「ゆるい」。そして、それがキャラクターに反映されていることを称して、こう名付けたのだった(ただし、みうらは、その緩さに新しい意味を見いだしていたのだけれど)。

この時期、ご当地キャラが一括りにして「ゆるキャラ」と認知されることで、それまでのご当地キャラがまとめられ、また、この「ゆるい」コンセプトに基づいたキャラクターが一般化し、後続が次々と出現することで、ゆるキャラは一般名詞にまで上り詰める。ご当地キャラ=ゆるキャラの図式が出来上がったのだ。

ただし、この時はまだ方法論が確立されていない。だから「ゆるキャラ」と称しながらもご当地キャラは、結構ゆるキャラではないものが出現した。プランナーたちが地域の要請に応じてパッケージ化された企画もの(規格もの)のキャラクターを考案し、それがゆるキャラと呼ばれていたりしたのだ。前述したひこにゃんなどは人気こそ博したが、明らかに既存のキャラクターの文法を踏襲した普通の「かわいい」キャラクターだった。

第二期:せんとくんとくまもんによる方法論の完成(2008年~)

2008年、ゆるキャラのスタイルに明確な方向性が打ち出されることになる事件が発生する。平成遷都1300年記念事業の公式マスコットキャラクターとして考案された「せんとくん」をめぐる一連の騒動がそれだ。鹿の角の生えた童子のキャラクターなのだが、一斉に「キモい」との批判を浴びる。ところが、このデザインは東京芸大教授の藪内佐斗司によるもの。つまりプロによるもので、ある意味、この「キモさ」は確信犯的なものでもあった。せんとくん事件は、これに対抗する「まんとくん」というベタにかわいい系のキャラを生むまでに至り、それが結果として1300年記念事業を盛り上げることへと繋がっていく。

このやり方、ある意味で「ゆるキャラ」の詰めの緩さをプロが拝借したものだった。ゆるキャラに共通する詰めの緩さは、われわれがキャラクターに対して抱いている文法=キャラについてのイメージをしばしば逸脱する。つまりプロの仕事ではないので、ディズニーのキャラクターのように徹底的に文法で塗り固めたキャラクター文法(たとえば、ミッキーマウスの顔は全て○で構成されている)に馴染んでいるわれわれからすれば、その逸脱部分(とりわけディテールの甘さ)に違和感を感じ、それが「ゆるい」ということになる。ただし一般のゆるキャラの場合は素人がやるから結果としてそうなってしまったのだが、せんとくんの場合はこの「ゆるさ」が、いわば意図的に織り込まれたものだった。そう、前述した「プロの仕事」。しかも「やり過ぎ」のレベルで。それゆえにこそ、多くの人々(とりわけ奈良県民)が違和感を覚え反発したのだった。だから、対抗として作られたまんとくんは対照的にまったく「ゆるくない」文法通りのきちっとしたデザインが施されていたのだ。ただし、当時はまだこの「違和感」についての社会的認知が今ひとつでもあった。だから、「やりすぎ」のせんとくんはキモイ、不気味と批判の的となったのだった。

ところが2010年、この戦略的なゆるさ=気持ち悪さ=不気味さを織り込み、なおかつかわいいキャラクターとしても受け入れられる、いいかえれば「せんとくんの逸脱した文法」と「まんとくんのベタな文法」を掛け合わせたキャラクターが登場し、大ブレークする。そう、それがくまモンだった。これについてはすでにブログで展開したので詳細はそちら(「くまモンはゆるキャラではない!」http://blogs.yahoo.co.jp/mediakatsuya/64091214.html)に譲るが、要約してしまえば、くまモンが提示したのは、ようするに「不気味でも大丈夫」という中庸なキャラクターデザインに他ならなかった。不気味さの中にそれ以前から一般のキャラクターの中に登場し認知されている不気味なキャラクター(ハンギョドン、たれぱんだ、リトルグリーンマンなどのキャラクター)の要素(いずれも眼の焦点が定まっていない)を混入させることで「不気味なのに違和感のない」デザインの設計に成功する。こういった「ゆるくないのにゆるい」といった手の込んだキャラクターは、もちろんみうらじゅんが指摘したような素人の手によるものではない。だから、くまモンはみうらが指摘していたような「素人がつくるがゆえに不安定で、それがゆるくなる」というのとはまったく違う「なーんちゃってゆるキャラ」、「安定した不安定なキャラ」「ゆるさがビルトインされたキャラ」なのだ。事実、くまモンは稀代のプロデューサー・小山薫堂が手がけたものだった。

そう、この時期、ゆるキャラは当初のみうらじゅんの指摘を離れ、「詰めの緩さ」をプロデュースするというかたちで規格化され、それが一般に安心して受け入れられる「違和感」として定着したのだった。

第三期:違和感の認知とナンデモアリ状況の出現(2012年~)

くまモンが開けてしまった「ゆるさ」についての許容、一般化は、ひるがえってわれわれのゆるさについてのシフトを広げさせることになる。それは「ゆるければ、もはやナンデモアリ」といった大雑把な認識の仕方だ。つまりプロの仕事であろうが素人の仕事であろうが、とにかくどこかに文法=規格の穴が開いていれば、それがかなりの違和感があろうが「ゆるキャラだから」ということで許容してしまうまなざしだ。そして「ゆるさ」という言葉は「個性」という含意が与えられ、事実上、ゆるいことは免罪されていく。ゆるきゃらの「ゆるさ」は「世界で一つだけの花」という認知を受けたのだ。

こうなると、とにかくゆるさが大幅に出ていればそれが個性になるので「ゆるくなるならどんな方法でもオッケー」という図式が出来上がる。それはこれまで禁じ手であるようなものでもよいということになった。それが結果として奇っ怪なキャラクターの跳梁跋扈ということになったのだ。たとえば、オカザえもんは「岡崎」という文字を無理矢理キャラにはめ込んだ結果、きたならしいおやじ顔になってしまった。メロン熊はきれいなものとキタナイものを合体させることで、より醜悪に、西国分寺のキャラクター「にしこくん」は鐙瓦を参考にしたらしいが、これには腕がない実に不安定なキャラ。ところが神宮球場の始球式をつとめた。腕がないので、なんとバッターとして登場したのだ(投げたのはスワローズのキャラクター・つば九郎だった)。そう、とにかくヘンなものが目白押しなのだ。

ふなっしーのグランプリは当然?

そして、そのヘンさ加減をぎっしり詰め込んだのがふなっしーだった。子供が裁縫で作ったような稚拙な作り。すぐに壊れる、破れるといったことが懸念されるほどだが、ところがどっこいキレのよい動きを見せる。つまり稚拙という違和感に、こわれそうなのによく動くという違和感が加わる。さらに、これにご当地キャラクターとしては原則、御法度であるトークまでやってしまう。いや、これだけにとどまらない。加えて「非公認」という、違和感に箔をつける勲章までがつけられ、まさにふなっしーは違和感のワンダーランド、異形というにふさわしい存在。本来なら遠ざけられて然るべき存在のはずだ。しかし、ゆるキャラを受け入れる視線はすっかり成熟した。だから、この「合わせ技一本」といったふなっしーが大ブレークしたというわけだ。と考えれば「ご当地キャラ総選挙」でふなっしーが圧勝したのは無理もないということになる(というか、当初からかなり予想されていたのだが)。 さて、ならば今後のゆるキャラはどのような動向を見せる事が考えられるだろうか。(続く)

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