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「静かにやろうや」ナチスの手口から学ぼうとしたこと~「法の番人」内閣法制局長官の首すげ替えと裏口からの解釈改憲

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◇麻生副総理、「ナチス発言」を謝罪せず◇

 「いつのときからか、騒ぎになった。騒がれたら、中国も騒がざるをえない。韓国も騒ぎますよ。だから、静かにやろうやと。憲法は、ワイマール憲法が変わって、ナチス憲法に変わっていったんですよ。誰も気づかないで変わった。あの手口、学んだらどうかね」――。

 これは、7月29日、ジャーナリストの櫻井よしこ氏が代表を務める、民間のシンクタンク・国家基本問題研究所が開催したシンポジウムの場で飛び出した、麻生太郎副総理の発言です。

 この講演には、当然、大手メディア各社から、麻生副総理の「番記者」が入っていたと思われます。しかし、当初、各紙の報じ方はバラバラでした。上記の「ナチス」発言について、記事のなかで触れたのは、読売新聞のみ。それも、見出しに「ナチス」の文字はなく、小さなベタ記事扱いでした。

※改憲「狂騒、狂乱の中で決めるな」…麻生副総理(読売新聞7月29日【URL】http://bit.ly/14rMJpH

 同じ講演を聞いていたはずの朝日新聞にいたっては、麻生副総理がナチスやワイマール憲法について語ったくだりにはまったく触れず、「改憲は単なる手段なのです。狂騒・狂乱の騒々しい中で決めてほしくない。落ち着いて、我々を取り巻く環境は何なのか、状況をよく見た世論の上に憲法改正は成し遂げるべきなんです」と述べた、と報じるにとどまりました。

※「護憲と叫べば平和が来るなんて大間違い」麻生副総理(朝日新聞7月29日【URL】http://bit.ly/16TmS5U

 日本のメディアが、麻生副総理の「ナチス発言」をめぐり、今になって大騒ぎをしているのは、海外からの反応が、彼らの予想を大きく超えるものだったためです。

 まず、韓国政府は、麻生副総理の講演が行われた翌日の30日、外務省のチョ・テヨン報道官が「改憲問題はさておき、ナチス政権が日本帝国主義の侵略を受けた周辺国や国民にとってどんな意味を持つかは明らかだ。日本の政治家は言動を慎まなければならない」と記者会見で発言し、麻生氏に厳重に抗議しました(サーチナ7月31日【URL】http://bit.ly/11tuQ5U)。

 中国外務省も31日、「日本の主要な指導者がナチスを見習い、憲法改正を押し進める必要があると公然と述べたことは、日本がどこに進むかに関してアジアの近隣や国際社会の懸念と警戒を起こさざるを得ない」と抗議声明を発表しました。

 しかし、安倍政権の主要閣僚による発言をめぐり、中国や韓国が抗議声明を出したことはこれまでしばしばありました。今回、メディアがこれほどまでに大騒ぎとなったのは、米国のユダヤ人ロビー団体「サイモン・ヴィーゼンタール・センター」が声明を発表したからです。

 「サイモン・ヴィーゼンタール・センター」は30日、副代表で宗教指導者エイブラハム・クーパー氏の署名で、「ナチス政権のどの『やり方』──民主主義をひそかに無能にするやり方──が学ぶ価値があるのか」と麻生副総理に説明を求める声明を発表しました(ウォール・ストリート・ジャーナル 7月31日【URL】http://bit.ly/18RhQMJ)。

※「サイモン・ヴィーゼンタル・センター」のホームページに掲載された声明文” Simon Wiesenthal Center to Japanese Vice Prime Minister: Which ‘Techniques’ of the Nazis Can We ‘Learn From’”?”(【URL】http://bit.ly/19azkUK

 上記の「サイモン・ヴィーゼンタル・センター」のホームページには次のように記載されています。

“What ‘techniques’ from the Nazis’ governance are worth learning—how to stealthily cripple democracy?” asked Rabbi Abraham Cooper, associate dean of the Simon Wiesenthal Center, a leading Human Rights NGO, adding, “Has Vice Prime Minister Aso forgotten that Nazi Germany’s ascendancy to power quickly brought the world to the abyss and engulfed humanity in the untold horrors of World War II?

訳:「ナチス統治の『手口』、すなわち、いかに秘密裏に民主主義を損なわせるかという点の、どこに学ぶべき価値があるのか」と、有数の人権NGOであるサイモン・ヴィーゼンタール・センターの副代表であるエイブラハム・クーパー師は問いかけた。「麻生副総理は、ナチスドイツが権力の座についたことが、間もなくして世界をどん底に陥れ、人類を第二次世界大戦の計り知れない恐怖に巻き込んだことを忘れたのか」とも加えた。

 さらに、エイブラハム・クーパー氏は、朝日新聞の電話取材に答え、「21世紀の民主主義にナチスの手口をもたらし、憧れを呼び起こそうというのはまったく理解できなかった。ナチスがいかに民主主義のプロセスを巧みに操ってきたかについても読み誤った」としたうえで、「謝罪が必要なのはユダヤ人に対してのみではない。日本人や、ナチズムの犠牲となった世界のすべての人々に対してだ」と語り、麻生副総理に対し、「世界のすべての人々」への謝罪を要求しました。

※ナチス発言「世界に謝罪を」米ユダヤ人人権団体副代表(朝日新聞8月1日【URL】http://bit.ly/16uDIbg

「サイモン・ヴィーゼンタール・センター」と聞けば、30代後半から40代以上の方の中には、ピンとくる方もいるのではないでしょうか。

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